ベトナム経済はいまどうなっているのか? 〜Vietnam HRM News〜
ベトナム人事・人材開発事情を知る際に、ベトナム経済の最近の動向を知っておくことも有効です。
例えば、人を雇うときにもこれからの賃金は上昇傾向なのか、ベトナム人の所得水準はこれからどうなっていくのかなどを予測する力は重要です。また、従業員たちと会話をする際も、ベトナムの経済事情やなぜそれが起こっているのかをしっかりと把握した上での発言ができれば、人材マネジメント上も説得力が増します。しっかりと勉強しておきましょう。
まずベトナム経済を知る際に、ベトナムではどのような統計データが存在するのかを知っておくことが重要です。
経済分析に主に用いる統計データは以下のようなデータです。
<国内>
・ベトナム統計総局(General Statistic Office of Vietnam)
・ベトナム国家銀行(The state bank of Vietnam)
<海外>
・世界銀行
・国際通貨基金(IMF)
・アジア開発銀行
このような機関の統計調査を用いることが多いです。
しかし、この統計をみる際に注意したいのは、「全てのベトナム人のデータを捕捉できていない」ということです。
特に都市部においては、小規模企業や個人事業の多くの活動は統計値にあらわれていません。
そのため、1人当たりGDPは、1,901ドルで135位(日本は38,491ドルで24位)と、アフリカ諸国やラオス(145位)に近い順位でありながら、実質の生活水準はそれよりも高くみえるという現象が起きています。
ベトナム経済の現在の発展の原動力は、都市部の民間企業と、1990年代半ばから受入れてきた外国企業です。
第1次投資ブーム : 1995年ASEAN加盟〜アメリカ国交正常化の頃
第2次投資ブーム : 2007年WTO加盟前後の頃
第3次投資ブーム : 2010年前後の円高と尖閣問題台頭によるチャイナリスク増加の頃
海外からの直接投資とODA中長期借入などで国際収支は資本収支でプラスで推移している。
又、越僑とよばれる海外に亡命したベトナム人とその子孫たちからの郷里送金も大きな資金源になっていると言われています。
一方で通貨の動向を知っていますでしょうか?
ベトナムドンは対米ドルの為替レートが、リーマンショック後に毎年10%ずつのドン安がつづいており、ベトナム当局を悩ませていると言われています。2000年初頭には、1円=約130ドン程度だったのが、現在では1円=約200ドンほどになっています。つまり、ベトナムドンの通貨価値はかなりの下落をしているのです。この理由の1つは、ベトナム経済が長年にわたり貿易赤字&経常赤字が続いている為です。急激な経済成長で内需は高まっているにも関わらず、国内の生産能力は慢性的に不足しています。また天然資源にも恵まれておらず、輸入超過の状態は当面続くと予測されています。その為、ベトナムでは近年、10%を超える高インフレが続いていました。景気は底をうったとはいわれていますが、こういった構造的な部分を解消しないと、ベトナム経済の発展は厳しいので、対策が望まれます。
逆に言えば、税収をしっかりと確保できる体制をつくり、対外生産能力を高めたり、ベトナム発の世界企業がでてくればこの傾向は、大きく変わっていくことも予想できるため、大きな内需をもとに海外にでていくベトナム企業をつくることを、私たち日本人は応援できるのではないかと思っています。戦後日本の急成長と今からのベトナムの急成長を同じように考えることは現実的ではないかもしれませんが、そのような話に興味を持っているベトナム人も多く周囲にはいるように思います。
ここまでをまとめると、強い内需が見込まれるものの、自国の力で海外にでていく力が高まるかどうかは未知数であり、ベトナム経済が成長するかどうかは、世界に飛び出す企業が生まれてくるかどうかという点にあるように、私は思っています。しかし、社会主義の中で自国経済を優先する動きからは、そのようなところまでを目指すという気概のある経営者がでてきにくい雰囲気もあり、どうやってこの国を発展させていったらいいのか、もっと議論が必要だと思っています。
私としては、多くのベトナム人の方々にマネジメント教育やリーダーシップ開発の講義、及び日本を含む海外への留学などを支援する事業をやっていくことを通じて、これらの課題に貢献できたらいいなと思っています。
これからのベトナム経済を見守りつつ、人材の育成、人材マネジメントの高度化を、この国で少しだけでもお役に立てればと思います。
次回からは、人事・人材開発について、より詳しく話をしていきたいと思っています。また、会社設立も経験しましたので、経験から学んだ
、ベトナムでの起業の最近のノウハウについても、レポートしていければと思います。
(つづく)