【オートバイのあれこれ】「シンプル」を極めた2スト・スプリンター!
全国1,000万人のバイクファンへ送るこのコーナー。
今回は「“シンプル”を極めた2スト・スプリンター!」をテーマにお話ししようと思います。
1987年(昭和62年)、レプリカブームが最高潮だった頃に、ヤマハは(当時としては)やや変わり種の2ストロードスポーツをリリースしました。
その名も『SDR』(SDR200)。
『TZR250』や『FZR400』等、本気のレプリカモデルで’80年代のブームを盛り上げていたヤマハでしたが、他方では、“公道での面白さ”を追求したスポーツモデルも熱心に作っていたのです。
その代表的存在の一つが、このSDRでした。
SDR最大の特徴は、とにかくシンプル&ベーシックということ。
まるで、極限まで減量し贅肉を削ぎ落としたプロボクサーのような、ボディに一切のムダが無い作りとなっていました。
また、車体を構成する各部のパーツも、ベーシックなグレードのものがほとんど。
これはコストカットといった目的ではなく、レプリカブームのなかで過熱の一途をたどる市販車のハイスペック化・ハイグレード化に対するアンチテーゼとしての設計でした。
ヤマハは、
「行き過ぎたパフォーマンスはやがてライダーをおいてけぼりにする。高機能なパーツも、結局は性能を持て余すことが大半。余計に着飾るのではなく、もっとライダーを中心に据えたバイクを作りたい」
と考えたのです。
シンプルかつベーシックであることを貫徹し生み出されたSDRは、結果的に乾燥重量105kgというオフロードバイク並に軽い車体を獲得することとなりました。
搭載された195ccの2スト単気筒エンジンは34psで、当然TZRやFZRほどのパワフルさは無かったものの、それでもそれらレプリカ勢より20kg以上軽いボディはSDRの大きなアドバンテージとなり、タイトな峠道/ワインディングロードでは抜群の敏捷性を発揮。
ライダーが車体を振り回し、“操る楽しみ”を敷居の高くないところで存分に堪能できるバイクとなっていたのでした。
「ハイスペックであることだけが、スポーツバイクの価値ではない」
ということを身をもって教えてくれるのが、このSDRだったと言えるでしょう。
二輪車ならではの優れた機動力を研ぎ澄まし、オートバイ・ライディングの根源的な面白さを味わわせてくれるSDRは貴重な存在だったと言えますが、やはり当時のスペック至上主義には到底太刀打ちできず、SDRはわずか2年ほどで生産終了となってしまいました。
画像引用元:ヤマハ発動機