緊急事態宣言なんて関係ない!「出社おじさん」が引き起こす「出社ハラスメント」が心配だ
■「出社おじさん」が全国に急増?
「緊急事態宣言が出てる? それがどうした? みんなオフィスに出ているのに、君だけ在宅で仕事をする気か?」
「そもそも在宅で仕事なんかできるわけないだろ」
このように、全国にいる「出社おじさん」が色めき立つことだろう。そんなニュースが飛び込んできた。
政府は16日、コロナ感染拡大の影響を受け、茨城、栃木、群馬、静岡、京都、兵庫、福岡の7府県に対して緊急事態宣言を発令する方針を固めた。また、東京、神奈川、千葉、埼玉、大阪、沖縄に発令中の宣言も、期限を9月半ばまで延長する方向で調整に入った。
「出社おじさん」は、
【出社=仕事】
だと思い込む前時代的思考のおじさんだ。緊急事態宣言が出ていようが
「そんなこと関係がない。在宅で仕事なんかできるか」
と言い張る。
やり方を工夫することによって在宅勤務でも仕事ができる。慣れてしまえば在宅のほうが生産性が高いという検証結果があろうとも「出社おじさん」は受け付けない。
当然、会議はオンラインではなくリアル。お客様との接触も、足を使っての訪問でなければ意味がない。そう考えている。
「緊急事態宣言が出ているし、家族が心配している」と伝えても、どこ吹く風だ。冒頭に書いたとおり、
「みんなオフィスに出ているのに、君だけ家で仕事をするのか?」
と圧力をかけてくる。「出社おじさん」の存在は強力だ。職場にひとりいるだけで、在宅勤務の比率は限りなくゼロに近くなる。
■許されない「出社ハラスメント」
先日も、ある社長から相談があった。その会社は、昨年1回目の宣言が発令した時期から、CSR(企業の社会的責任)の観点からも不要不急の出社は禁じるようにと全社に通達している。
そしてこれを機会に働き方改革を推進しようと、本社を中心にオフィスワーカーの在宅勤務率を50%以上にすると宣言。昨年から創意工夫を重ねてきた。にもかかわらず全国に8つある営業所のうち、ある営業所だけが今もなお全員が出社しているという。その他の7営業所の在宅勤務率が40~60%だというのにである。
社長の話だと、
「営業所長が言うことを聞かんのですよ。あれじゃあ出社ハラスメントです」
この営業所で働いている限り在宅勤務できるような雰囲気ではないと言う。同調圧力も働き、「出社おじさん」である営業所長には、誰も何も言えない状態だとのこと。
「非常に優秀な男ですが、しかたがありません」
社長は言い、その営業所長は本社へ配置転換となった。事実上の降格である。全国ナンバーワンの実績を残した営業所であり、この営業所長の功績は誰もが認めるところだった。しかし社長は組織の「心理的安全性」のほうを重視した。
この営業所に配属された優秀な若者が、毎年のように離職しているという事実も社長の背中を押した。
■私たち一人一人ができること
6都府県で延長され、新たに7府県で追加される緊急事態宣言。飲食店やデパート業界などの苦境はさらに続いていくだろう。
しかしこのように限られた業種、業界の犠牲のもとで、私たちの生活が成り立つのは不公正だ。
私たち一人一人ができること。それは相変わらず不要不急の外出を控えることだ。交通混雑緩和に努め、新型ウィルス感染拡大を防ぐ。
自分さえよければいい。自分の会社だけがよければいい。そんな考えは捨てるべきだ。在宅勤務ができるオフィスワーカーは、多少生産性が落ちたとしても出社は控えるべき。それが社会から求められ、私たちにできる最低限のことだ。
私も50歳を過ぎた。私の同世代が「出社おじさん」にならないことを、心から願っている。