まさかの波乱! 大阪桐蔭 姿消す!
大阪桐蔭がまさかの3回戦敗退で姿を消した。9回2死無走者からの逆転サヨナラ負けだ。その瞬間、史上初の2度目の春夏連覇は夢と消えた。今大会は苦手の左投手との対戦が続き、看板の打線が低調だったこともあるが、遊ゴロで誰もが試合終了と思った瞬間、落とし穴が待っていた。
投手戦も桐蔭先制
試合は仙台育英(宮城)の左腕長谷川拓帆(3年)と大阪桐蔭の右腕柿木蓮(2年)の投手戦となった。7回で育英3安打、桐蔭4安打と互角。先攻の桐蔭が8回に1死2塁から3番中川卓也(2年)の左前にしぶとく落とす適時打で先制すると、すかさず育英も反撃する。2死1、2塁から2番鈴木佳祐(2年)が左前へ。猛チャージの山本ダンテ武蔵(3年)が好返球で長谷川を本塁憤死させ、最大のピンチを逃れたかに見えた。
完封目前から逆転許す
9回も2者を簡単に打ち取った柿木の完封は確実かに見えたが、さすがは仙台育英。
2死から5番杉山拓海(3年)が出塁するとすかさず2盗。ここで柿木は渡部夏史(3年)を歩かせ、逆転の走者を出してしまう。ただ、次打者は途中出場の若山壮樹(3年)だったため、この選択は不思議ではない。柿木は若山を遊ゴロにしとめ、試合終了かと誰もが思った。ところが一塁手の中川が、キャンバスを踏み損ね(失策)、満塁となってしまった。桐蔭の選手たちは勝利を確信して整列に向かう者もいたが、球場全体がざわめいた。動揺した柿木は、これまた途中出場の馬目郁也(3年)に前進守備の左中間を割られ、まさかの逆転サヨナラとなった。
エース登板させず敗れる
試合後、桐蔭の西谷浩一監督(47)は、「誰も責められない。夏の日本一だけを目指してやってきた。導けなかったのは監督の責任」と振り返ったが、泣き崩れる選手たちを慰めるのが精一杯で、球場を後にする際はタオルで何度も涙をぬぐっていた。西谷監督に悔いが残ったとすれば、エースの徳山壮磨(3年)をマウンドに送らず終戦を迎えたことだろう。それだけ、このチームは徳山の存在が大きかったからだ。昨秋は、下級生中心のチーム構成から不安定な試合運びも目立ち、センバツでは優勝候補の一番手には上がってこなかった。それがひと冬越して、徳山が磐石のエースに成長。センバツでは後輩投手が打たれた試合をカバーして優勝に大貢献した。大阪予選でも、大事な試合は徳山に任せ、有望な2年生投手との使い分けを徹底していたが、本番の甲子園でもそれを踏襲した形だ。
苦手の左腕との連戦で打線沈黙
2回戦の智弁和歌山は春の近畿大会で破っていた相手だったが、左腕投手を打てず、2-1の辛勝。猛暑の中、徳山を完投させたこともあり、3回戦での温存はある程度予想された。準々決勝との連戦になることを考えても、下級生の先発は妥当と言える。柿木は十分、期待に応えた。問題は援護できなかった打線にある。初戦の米子松蔭(鳥取)とはチーム力にやや差があったが、智弁和歌山と仙台育英は水準以上のチーム力と経験のある監督が率い、楽勝はありえない状況で、予想以上に投手に負担をかけてしまった。すべての主戦投手が左腕で、伝統的に大阪桐蔭は緩急を使える左腕を苦手にしている。智弁戦は、左腕黒原拓未(3年)から6安打1得点。代わった右腕の暴投で決勝点を奪った。打順を組み替えた3回戦でも長谷川の内角を強気で攻める揺さぶりに対応できず、連打は得点した8回の一度きり。1番藤原恭大(2年)が3試合で2安打に終ったのを筆頭に、センバツや大阪予選で活躍した山田健太(2年)、根尾昂(2年)らの打棒がまったく振るわなかった。これだけ本塁打が飛び交う今大会で、本塁打は初戦の福井章吾(3年=主将)の1本だけと、考えられないほど低調で、この打撃不振が最大の敗因だ。
2年生泣き崩れ
2年生チームの弱さも最後に出た。一塁キャンバスを踏み損ねた中川は2年生。7回の守備で打者走者に足を踏まれ負傷していたことが伏線にあったことも考えられる。大事にいこうとしたか、キャンバスから離れて捕球してしまった。投手の柿木も2年生。完封目前での暗転だったことから、当初は呆然としていたが、現実を受け入れた途端泣き崩れ、球場を去るときも西谷監督に支えられていた。2年生の力でセンバツと予選を勝ったチームにしてはあまりに皮肉な幕切れ。しかも、頼みの徳山を出さずじまいだったことは痛恨だ。追われる立場の辛さを実感したのではないだろうか。
新チームはセンバツ連覇へ
次の目標はセンバツの連覇だ。
とはいえ、春の甲子園への道のりは平坦ではない。大阪のライバル履正社はすでに新チームが始動している。近畿大会で対戦が予想される他府県勢も、桐蔭と同じように下級生が軸だった智弁和歌山や龍谷大平安(京都)、明石商(兵庫)などの評判が高い。近畿で4強に残らないとセンバツへの道は開けない。受けて立つ桐蔭も、藤原や山田、中川ら打線の軸は残る。投手も柿木と根尾がエース争いをするに違いない。この日の苦い敗戦は、必ず新チームに生かされるはずだ。