セルフプロデュースのガールズユニットkolmeの新たな音楽への試み
セルフプロデュースで音楽制作に取り組み、“楽曲派”と呼ばれるガールズユニットのトップランカーとなっているkolme(コールミー)。各種配信サイトの人気プレイリストに入り、今年1月発売の3rdアルバム『Hello kolme』ではその独自の楽曲クオリティの極みを体現した。そして、4月からは配信シングルを毎月リリース中。日本語と英語の融和、ディープハウスを取り入れたメロディなど、さらに新たな地平を開拓している。3人に世界進出を含めた展望を聞いた。
配信は挑戦の場、日本語と英語を同じ響きに
――5月のワンマンを終えた後、現在は“制作期間”に入っているそうですね。
MIMORI ライブやリハーサルがないので、夜遅くまで起きていても大丈夫だから、最近は朝6時までずっと曲を作ってます。
KOUMI 深夜に(共同生活をしている)MIMORIの部屋からキーボードをカチャカチャする音が聞こえてきて、「やってるな」と思いながら、私は眠りにつきます(笑)。
RUUNA インプットがないと新しいものが出にくいので、3人それぞれ自由に時間を使って、やりたかったことをやっています。私はラグビーを観に行ったし、家の2駅前で降りて歩いて帰るだけでも、いつもと違う景色が見られるじゃないですか。
――そうしたことが有形無形に曲作りに反映されていくんでしょうね。4月からは3ヵ月連続で新曲を配信リリースしてます。
MIMORI 毎月納品に追われて、思った以上に大変でした。
KOUMI 泣いてました(笑)。
RUUNA 今回は3曲ともKOUMIちゃんの作詞なので。
KOUMI 4月に配信した「Brand new days」の詞の締切が2月の終わりで、ちょうどフランスでライブ(『Japan Expo Sud』出演)があったんです。せっかくの海外は心おきなく楽しみたくて、「ここでは書かない」と決めてました。
MIMORI 日本のスタッフさんから「KOUMIを見張って」というLINEが来ましたけど(笑)。
RUUNA 私たちも締切は知っていたから、KOUMIちゃんは陰で書いていると思ってました。
MIMORI ちょうどホテルの部屋が、こうみん(KOUMI)と私たち2人で分かれていたので。
RUNNA そしたら全然書いてなくて、「何やってるの!?」という(笑)。
KOUMI でも、4月配信で“新生活”がテーマになっていたんですけど、私自身は進学も昔の話だし就職もしてないし、どう書くか悩んでいたんです。それがフランスに行って「海外で住み始めることになったら……」と想像したのが生きて、日本に帰ってから書けました。
MIMORI 結果オーライです。
KOUMI 制作スタッフとは張り詰めた空気になりましたけど(笑)。
――アルバム『Hello kolme』後の新曲で、今後の方針について話し合ったりもしたんですか?
RUUNA ガッツリ話したわけではないですけど、4年前にkolmeを始めたときにやりたかった音楽が、アルバムで1回完結した感覚があったんですね。それで「配信リリースはチャレンジの場に」という想いは全員にありました。CDだと今の自分たちを詰め込む形になりますけど、真っ白な状態に戻って、作りながら吸収している感じ。想像しなかった新しいkolmeが出てきてます。
――“日本語も英語も同じ言語に感じられる響き”もテーマに?
RUUNA そうです。それで今回は3曲とも、(英語詞担当の)KOUMIちゃんに書いてもらいました。
KOUMI スタッフさんにポロッと「LOVE PSYCHEDELICOさんっていいね」と言われたんですね。私たちも名前は知ってましたけど、楽曲を初めてちゃんと聴いてみて、「こういう日本語と英語の混じり方は素敵だな」と思いました。作詞の参考にさせてもらってます。
MIMORI 聴いたときに一番気持ち良くなる響きを追求してます。メロ出しもアルバムまでは、ピアノを弾きながら「ラララ~」でやっていたんですけど、今は「I can~」とか適当な英語に変えてみました。響きを気にして英語にすると、また新しい感じのメロになります。
エレクトロなメロディでダンスを“サビ”に
――4月の「Brand new days」、5月の「Deep breath」と穏やかな曲調が続きました。
RUUNA 今回の配信は季節感もテーマにしてます。「Brand new days」が新生活のキラキラした気持ち、「Deep breath」は野原か公園で日なたぼっこをしている雰囲気で、ゆったりした曲になりました。
MIMORI 今まではダンスミュージックとしてトラックメインでしたけど、この2曲はメロディを重視しました。ジャンルはトロピカルハウス寄りのディープハウスで、浮遊感があって酔いしれる感じ。そういうものを組み入れたので、穏やかさが出たと思います。
――無理にフックを作らずに?
MIMORI 「Brand new days」に関しては、最初のラップとベースの部分がフックになってますけど、流れるように聴けるのが今の時代に合っているかなと思ってます。
――6月の「Up all night」はアッパーな曲になりました。これも季節感を意識したんですか?
RUUNA 夏前に出す曲らしくしたいと思いました。フェスでやったら楽しそうな、ダンスが想像できる感じで、前の2曲がまったりしていた分、ガンガン系にしようと。
MIMORI 最近のkolmeはジャジーな曲が多かったんですけど、これは本当にアッパーソング。「ここからアガっていくぞ!」という。
――単純なAメロ、Bメロ、サビでなくて、曲の構造が複雑ですね。
MIMORI メロディの部分もトラックで聴かせる部分もあって。コーラスはこうみんが歌いやすいキーにして、ハモったときに層がきれいになることを意識しました。
――サビのリピートの間に入る、英語詞のたたみ込むコーラスが、サビ以上に耳を引きます。
RUUNA ダンスがサビ、という感じですね。
MIMORI 一番見てもらいたいし、聴いてもらいたいのはここです。
RUUNA 久しぶりに聴いた瞬間、「これは踊るな」と思ったトラックでした。やっぱりkolmeは歌もダンスもどっちも見せたいので。
MIMORI 振りはまだ付けていませんけど、ダンスミュージックの括りの中でも、今までやったことのない私たちの踊り方、音の取り方をしていきたいと思ってます。
――この英語コーラスを歌っているのは?
RUUNA KOUMIちゃんです。
KOUMI コーラスを積みました。
MIMORI だいたい三つくらい重ねて積みます。こうみん1人で入れる場合もあれば、2人のどちらかがプラスするときもありますけど、こうみんが2層でハモっていたら、私はそのオクターブ下でハモったりして、うっすらしか流してないんです。でも、それが厚みになって、ちょっと変わった声に聞こえるときもあります。
――「Up all night」は、ジャンルでいうと何になるんですかね?
MIMORI いろいろ織り交ぜているんですよ。メロディラインはエレクトロポップに寄って、サビにはEDM要素も入ってます。あと、私がR&Bが好きなので、アレンジャーさんにお願いして、コード進行的にはそういう感じになってます。
海外で「やってきたことは間違ってない」と
――詞に関しては、事前にテーマを話し合ったんですか?
RUUNA 曲はMIMORIがデモを三つ送ってきた中で「6月はこれ」と決めたので、詞も「夏前のワクワクをテーマにしたいね」ということで、KOUMIちゃんに書いてもらいました。
――タイトルは“夜通し起きて”という意味ですよね。
KOUMI 夏にはフェスとかオールナイトイベントとか楽しみが待っていて、ドキドキする気持ちを書きました。この歌詞を書いていた時期はちょうど忙しくて、友だちと遊んだり、夜遅くまで飲みに行けなかったので、その反動も入ってます(笑)。「早くオールしたい!」という。
――夜通し何かすることはよくあるんですか?
MIMORI レコーディング終わりとかで翌日のことを気にしなくていいときは、アレンジャーさんの行きつけのバーに朝6時までいたりします。
RUUNA 「会わせたい人がいる」と言われて、いろいろな方とお話しするのは刺激になります。あと、メンバーの誕生日はだいたい、お仕事の後でみんなでごはんに行くんです。終わるのが12時くらいで、そこから「まだ遊びたい」となるんですよ。
MIMORI 「もう1軒行こうか」って。
RUUNA 朝5時までカラオケになるのが恒例です(笑)。
――どんな曲を歌うんですか?
KOUMI みんなバラバラです。
MIMORI それぞれの盛り上がり方があります。
RUUNA KOUMIちゃんは洋楽。
MIMORI めっちゃ上手いんですよ。
KOUMI テイラー・スウィフトさんとか歌います。あと、洋楽ではないですけど、ジュディ・オングさんの「魅せられて」が好きで、毎回歌いたくなるんですよね。
――なぜそんな古い曲を?
KOUMI テレビで観て「艶やかだな」と思いました。
MIMORI 入り込んで、両手を広げて歌ってます(笑)。私はアニソンや2.5次元ミュージカルの曲を踊りながら歌うのがマスト。小さい頃に『テニスの王子様』のミュージカルが大好きだったんですね。お姉ちゃんがDVDを持っていて、一緒に3期くらいまで観てました。盛り上がり方がすごくて、「これをやろう」と。ラケットを持っているつもりで振ってます(笑)。
RUUNA すごくクオリティが高いですす。
KOUMI kolmeでのパフォーマンスより上手(笑)。
MIMORI 完コピしてますから(笑)。『うたのプリンスさまっ』の曲を歌うと、2人がコールを入れてくれます。
RUUNA もう完璧です(笑)。
KOUMI 覚えちゃいました(笑)。
MIMORI 最初は「ここで」と教えてましたけど、3回目くらいから何も言わずともやってくれるようになって、バッチリです(笑)。
――RUUNAさんは歌謡曲派?
RUUNA そうですね。80年代、90年代の曲が多いです。
MIMORI カラオケの落ち着き担当です(笑)。
RUUNA 松田聖子さんの曲とか歌います。あと、島谷ひとみさんの「亜麻色の髪の乙女」や小泉今日子さんの「木枯らしに抱かれて」もオハコです。
――さっきも出ましたが、kolmeは昨年のパリに続き、この2月にマルセイユと、フランスでライブを行いました。日本でのライブと心持ちは違いましたか?
RUUNA 去年の『JAPAN EXPO』のステージで「今まで自分たちがやってきたことは間違ってなかった」とすごく感じられたので、マルセイユで気負いはありませんでした。日本と同じように3人でステージに立って、歌って踊るだけ。ただ、フランス語を前より練習していきました。
MIMORI 前回はライブ中にMCを通訳してもらったんですけど、今回は全部、自分たちの覚えた言葉で伝えました。たぶん伝わっていたと思います(笑)。
KOUMI オドオド感も受け入れてもらいました(笑)。
――今後も世界進出は目指していくんですか?
RUUNA そのために、デビューから曲のタイトルを全部、英語縛りにしているので。
KOUMI YouTubeやインスタグラムのコメントを見ると、「この国から!?」みたいな反響もあります。YouTubeではメキシコやチリ、インスタだとインドネシアとかが多くて、本当に幅広いです。kolmeの曲を見つけてくれた世界の皆さんに会いに行きたいです。
RUUNA 今は配信で世界のどこでも私たちの音楽を聴いてもらえますけど、やっぱり直接届けたい。ダンスと歌を通して気持ちを交わし合いたいと、フランスですごく感じました。
――制作期間を経て、今年の下半期にはCDリリースもありそうですか?
RUUNA 出せたらいいなと思ってます。CDになると思うと、また違う気合いが入ります。パッケージとして残るので、何十年か先に令和生まれの子どもたちが聴いても、「この曲好き」と言ってもらえる作品にしたいです。
PROFILE
仙台出身のグループの同い年メンバーだったRUUNA、KOUMI、MIMORIで2014年12月30日に結成。それぞれの得意分野を活かし楽曲やパフォーマンスをセルフプロデュースして活動をスタート。2015年3月4日にシングル「To shine」でメジャーデビュー。デジタルシングル「Up all night」を6月17日より配信。詳細は公式HP参照。