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岡崎慎司と本田圭佑。「正反対」ゆえの共鳴。

二宮寿朗スポーツライター
セネガル戦で同点ゴールを生み出した本田圭佑と岡崎慎司は敬礼ポーズを披露(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 やっぱり、お前のところにこぼれ(球)が行くんだな。

 セネガルとのグループリーグ第2戦。1-2から同点ゴールを奪った本田圭佑に対し、ゴール前でつぶれ役となって『アシスト』した岡崎慎司はそうこぼしたそうだ。途中出場組の活躍によって、日本は貴重な勝ち点1を手にした。

 言い得て妙だ。

 泥臭い役回りを「9」がこなし、おぜん立てして最後は「4」が持っていく。ボケとツッコミの役回りではないが、いやはやオカ&ケイスケは良いコンビである。敬礼ポーズも、息が合っていた。

 2人はともに32歳。ワールドカップもずっと一緒に戦ってきた。そしてこの大舞台において、コンビでゴールを決めてきた。

 2010年の南アフリカワールドカップ、グループリーグ第3戦目のデンマーク戦。本田からのパスを受けて、岡崎がチーム3点目となるゴールを奪った。そして4年後のブラジルワールドカップ、グループリーグ第3戦目のコロンビア戦でも本田のクロスから岡崎がヘディングで合わせている。2人とも2大会連続でゴールを決め、本田はセネガル戦でひと足先に「3大会連続」となった。

 本田が先を走ろうとし、岡崎がそれに追いつき、追い越そうとする。この状況も、何だか2人らしいとも言える。

 8年前のことだ。南アフリカワールドカップは決勝トーナメント1回戦でパラグアイにPK戦の末に敗れた。その日の夜、宿舎に戻って食事を終えた2人は朝まで部屋で語り合っている。

 サッカーのこと、これまでのこと、これからのこと。

 それでも時間が足りなかったようである。帰国後、岡崎に会話の中身を尋ねた。彼は笑って明かしてくれた。

「いろんな話をして『俺とお前は正反対だな』って。圭佑は戦いを好むタイプで、僕はどちらかと言うと戦いを好まないタイプ。アイツからは『そんな性格でよくここまで来れたな』と言われましたね。

 でも僕らの世代は圭佑もそうですけど、同じ世代のヤツらが高いレベルにいたので、自分もここまで来れたんだと思う。才能を持っている選手が多くいるし、頑張れるきっかけになった。海外に行っているヤツを見て、俺もいつかは海外でやってみたいなと思ったりもします」

 戦いを好むタイプの本田に、引っ張られた感はある。岡崎も長友佑都も、同級生では細貝萌たちも海を渡ることになった。

 シュツットガルトから始まり、マインツでは2シーズン連続2ケタゴールをマークして英プレミアリーグへ。2015~16年シーズン、「史上最大のジャイアントキリング」と呼ばれたレスターの優勝劇に、岡崎は大きく貢献することになる。日本代表でも100キャップ到達に同年代で一番乗りを果たした。

 追い掛け、追い越し、逆に追い越され、また追い抜こうとする。

 トルコのガラタサライで評価を再び高めている長友を含め、彼らはいつもそんな関係にある。岡崎も知らず知らずのうちに「どちらかと言えば戦いを好むタイプ」に近づいていった感がある。

 3度目のワールドカップは岡崎も本田も、ここ2試合はベンチからスタートしている。年長者の立場からチームを支えることにフォーカスしつつ、試合に出て、勝利に導く活躍をするというメラメラ感は変わらない。岡崎にしても、無論本田にしても。そして彼ら同世代に向けるライバル心も、ずっと変わっていないのかもしれない。

 ポーランド戦の2日前、ベースキャンプ地カザンで岡崎はメディアの囲み取材に応じた。「本田の活躍は刺激になるか?」という問いに頷いた後で、こう語った。

「刺激にもなるし、単純に貴重なゴールなのでチームが勝つにはそういう(決める)選手がいないと勝てない。その意味では、自分がその選手にならなくちゃいけないという思いを持ちつつ、でも、そういう(決める)選手がいて、自分みたいな(役回りの)選手がいて……またそれが逆になるかもしれない」

 決める気概を持って、結果的にチームが生み出すゴールになればいい。その両方が等しく大切なのだと経験豊富なストライカーは語っているような気がした。これを「立場」に置き換えてみてもいい。試合に出る気概を持って、結果的にチームが勝てばいい。その境地に、岡崎は達しているのだ、と。

 

 決戦当日の6月28日朝、ヴォルゴグラードの空は快晴だ。

 ロシア南部にあるこの工業都市は、猛暑に襲われている。前日、ヴォルゴグラードアリーナで行われた夕方5時半からの練習でも気温35度を記録した。日の長い今の時期、暑さは昼間と変わらない。湿気はそれほどではないとはいえ、日射しが肌に突き刺さる。

 日本はロベルト・レヴァンドフスキを擁するポーランドに対して引き分け以上で、自力での決勝トーナメント進出が決まる。相手は既に2連敗でグループリーグ敗退が決まっているが、このグループHで最もFIFAランクが高く、欧州の強豪であることに変わりはない。意地に懸けても、勝ちに来るはず。その彼らに、屈することなく決勝トーナメントに駒を進めなくてはならない。

 何やらチーム全体が、戦いを好む集団になりつつある。それは本田や岡崎、長友たち彼らの世代が、浸透させてきたことなのかもしれない。

 ワールドカップ第3戦において本田がアシストして岡崎が決めるというパターンは、2大会続いている。

 ケイスケからオカへ――。

 2度あることは、3度あるような気もしている。

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スポーツライター

1972年、愛媛県出身。日本大学卒業後、スポーツニッポン新聞社に入社。格闘技、ボクシング、ラグビー、サッカーなどを担当し、2006年に退社。文藝春秋社「Sports Graphic Number」編集部を経て独立。著書に「岡田武史というリーダー」(ベスト新書)「闘争人~松田直樹物語」「松田直樹を忘れない」(ともに三栄書房)「サッカー日本代表勝つ準備」(共著、実業之日本社)「中村俊輔サッカー覚書」(共著、文藝春秋)「鉄人の思考法」(集英社)「ベイスターズ再建録」(双葉社)がある。近著に「我がマリノスに優るあらめや 横浜F・マリノス30年の物語」。スポーツメディア「SPOAL」(スポール)編集長。

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