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WBC暫定ウエルター級タイトルマッチ~元世界チャンプ同士のサバイバル~

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 2021年8月、あのマニー・パッキャオを引退に追い込み、その後、ウエルター級統一戦でエロール・スペンス・ジュニアにKO負けした元WBAウエルター級王者のヨルデニス・ウガス。一方、2021年6月にジャーボンテイ・デービスに11回KOで敗れ、WBAスーパーライト級王座を失ったマリオ・バリオス。再起戦でもキース・サーマンに判定負けして2連敗となったが、今年2月にWBCコンチネンタルアメリカ・ウエルター級タイトルを獲得した。

 両者はこの度、WBC暫定ウエルター級タイトル決定戦で拳を交えた。

 Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 接戦が予想されたが、蓋を開けてみれば、2回、12回と2度のダウンを奪ったバリオスの完勝だった。スコアは117-108、118-107、118-107。ウガスはスペンス戦のダメージが抜けていないように見えた。

 Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 試合後、バリオスは語った。

 「体の痛みはあるが、今は興奮と喜びでいっぱいだ。キャンプで乗り越えたことの全てが報われた。自分のパフォーマンスに満足している。私はずっとウガスを非常に高く評価してきたし、今、更なる敬意を表したい。彼はハードな戦いを挑んだ。機会を与えてくれた彼に、心から感謝している。

 Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 最初のダウンが流れを決めた。早い段階で彼の素晴らしいレバーブローを喰らい、自分のスピードが少し落ちた。でも、冷静に、短いジャブを放ちながら、ペースを上げることが出来た」

 バリオスは手を休めずに、ウガスを削り、次第に元WBAウエルター級王者の右目を腫れ上がらせる。3度もドクターがチェックする事態が生じた。

 最終の12ラウンド、バリオスはウガスの腫れた目にカウンターの左フックを決め、この試合で2度目のダウンを奪う。華麗に試合を締め括った。

 何とかラウンドを乗り切ろうとするウガスは、マウスピースを2度吐き出し、時間を稼ぐ。すると、レフェリーのトム・テイラーは減点を告げた。

 Ryan Hafey/Premier Boxing Champions
Ryan Hafey/Premier Boxing Champions

 147パウンドで生き残ったバリオスは、ウエルター級でのビッグマッチに照準を合わせる模様だ。

 同階級のKING、テレンス・クロフォードの動き如何で、バリオスの今後が決まりそうだ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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