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200年に一人の天才ボクサーが言う「フロイド・メイウェザーvs.那須川天心戦は茶番に過ぎない」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Mayweatherにしてみれば、大晦日のイベントは遊び半分か(写真:ロイター/アフロ)

 フロイド・メイウェザー・ジュニアは、31日に予定されている那須川天心とのイベントを「あくまでもエキシビジョンだ」と語っている。その一方で、那須川サイドは本気ムードだ。ただ、いくら興行側が「スーパーファイト」と騒いだところで、エキシビジョンに勝敗はつかない。

 ●3分3ラウンド

 ●ボクシングルール

 ●RIZINの8オンスグローブを両者が使用する

 ●ウエイトは67.7kg

 ●ジャッジ無し

 などとRIZINは発表し、真剣勝負のような演出を続けているが、ショーの域を出ない。

 さて、今回も「200年に一度の天才」と謳われた元WBAジュニアウエルター級1位、元日本同級&日本ウエルター級チャンピオンの亀田昭雄氏に、同イベントについて語ってもらおう。

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 フロイド・メイウェザー・ジュニアvs.那須川天心との対決なんて、面白くなりようがないです。メイウェザーは引退した“元ボクサー”ですし、やって来た競技が異なっているんですよ。

 昔、協栄ジムの先輩だった西城正三(元WBAフェザー級チャンピオン)さんが、キックボクシングの藤原敏男と試合をしたことがありました。当時の協栄ジムの会長、金平正紀にしてみれば、興行を打って金が入れば、それで良かったんですね。単なる金稼ぎのイベントでした。当時、西城さんは何の練習もせずに毎日のように飲み歩いていましたよ(笑)。そんな状態で、リングに上ったんです。

 

 メイウェザーvs.那須川もプロモーターの「金稼ぎ」に過ぎません。かつての藤原陣営も、今回のRIZINも、基本的な姿勢は同じですね。それを「真剣勝負」なんて信じ切ってしまうファンも非常にレベルが低いです…。モハメド・アリとアントニオ猪木の試合も、ボクシング側の人間は茶番だとしっかり認識していました。ボクサーは倒れている人間を攻撃しませんから。でも、プロレスファンはワーワーキャーキャー言っていたでしょう。RIZINファンも同類ですよ。

 

 ボクシングのファンとプロレスや格闘技のファンっていうのは別世界の人間です。けっして相容れないんです。ビジネスとして成立している部分もありますから、一概に何だかんだとは言えませんが、ボクシングっていうのは世界中に普及している競技なんです。オリンピック種目としての歴史もあるでしょう。TVで見る茶の間の皆さんには、ボクシングと格闘技が似たように感じるかもしれませんが、RIZINやK-1とは全然違う物なのです。

 実は僕ね、K-1の石井館長から「アンディ・フグのトレーナーをやってくれ」と頼まれたことがあるんですよ。でも、そんな世界に足を踏み入れようとは思わなかったので断りました。僕は、あんな見世物の世界に興味は無いんです。ボクシングなら、指導者をやった可能性も無くはないですがね。

 ここ数年、大晦日はボクシング中継を楽しみにして来ました。ボクシングファンは、ボクシングの試合を目にして、それぞれ喜んだり悲しんだりしながら、いい気分で新年を迎えたいものですね。まずは、30日の伊藤雅雪、井上拓真、拳四朗、大晦日は京口紘人、井岡一翔でスカッとしたいですよ。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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