【河内長野市】秋祭りのだんじりは精巧な木彫り芸術。小塩町だんじり浮彫の素晴らしさを間近で見学
全国的にだんじり(地車)と言えば岸和田を思い出すかもしれませんが、河内長野や富田林をはじめ、南河内地域でも、だんじりの文化が残っています。そして秋祭り前の9月には、町内でだんじりの練習をしている音色が流れています。
河内長野では、今年の5月19日、市制70周年記念行事で、市内の全だんじりが市役所に集結し河内長野駅前までパレードを行いました。60周年の時にもパレードを行ったそうですから、10年ぶりのイベントです。
市制70周年のだんじりパレードの関連もあり、5月に行われた南花台公民館の講座で、今年新調した小塩町のだんじりを間近で見学できる機会がありました。私のように普段だんじりの無い町に住んでいる者にとっては、だんじりは近寄りがたい雰囲気があるため、またとない機会でした。
本来ならもっと早く紹介すべきことだったのかもしれませんが、やはり秋祭りの前に紹介したほうが、だんじりモードになりつつある河内長野をさらに盛り上げることになるのではと考えました。そこで9月29日に行われる河内長野だんじり試験曳きを前に、ご紹介することにしました。
ということで、5月16日、小塩町のだんじり小屋の前に来ました。
普段、祭の無い時は大きく町の名前が書いている建物を見るだけしかできないだんじり小屋ですが、今回は特別に中に入っているだんじりが公開されました。
だんじり小屋の扉が開くと、小塩町のだんじりが姿を現しました。
小屋から出て来ただんじりを、正面から捉えます。
公民館講座ということで、特別に小屋から出して披露されました。
だんじりが出た後の小屋の中です。今年の4月29日昭和の日にだんじりの入魂式が行われたと記載してあります。
公民館講座の講師、河内長野市の文化課学芸員の吉村君子さん(画像左から3番目)と、講義に参加した人たちと小塩町の人たちです。
このときにこちらの冊子を頂きました。修理が終わって入魂式を記念して作られたものです。修理は2023年10月15日から2024年3月23日にかけて行われたとのこと。
冊子に、小塩町だんじりの歴史や形状について詳しく記載があります。江戸天保年間に作られただんじりは、明治中期に堺から購入したそうです。冊子によると中百舌鳥で引き渡し式が行われたとのこと。
さて、ここからが本題です。だんじりの彫刻を見てみましょう。専門用語の多いだんじりの部分や彫られている内容については、冊子をベースに、一部他の情報を参考にしています。
まずは正面です。懸魚(げぎょ)と呼ばれる部分には伝説の動物「鳳凰」が彫られています。
こちらは正面の節目と呼ばれる部分です。「獅子噛み」と呼ばれるものです。
正面の下の部分です。冊子には書いていませんが、別の情報では住吉踊りという記述がありました。これは本来大阪の住吉大社の御田植神事で行われる踊りで、戦国時代以降に全国に広がり、江戸時代には全国の大道芸になったといわれているものです。
この部分は扉になっていて開きます。
開いた中には太鼓が収納していました。
足跡のような穴が開いていますが、これは開いてる扉の反対側です。
だんじりの鐘や太鼓を叩く場所があります。
良くみると、垂木(たるき:屋根の下側)にも彫刻が施されています。
彫刻された顔の正体は「阿吽(あうん)の唐獅子・獏」とのこと。このようにみると、だんじりを動かす「曳き手」「鳴り物」「大工方」「前梃子」「後梃子」らの動きに注目しがちですが、非常に細かい彫刻がなされており、まさしく動くアート・芸術作品です。
後の部分の屋根は、折屋根になっていて、上に折りたたむことができます。
天保年間に最初に作った人の技術は本当にすごいですね。波の雰囲気も立体的に幾重にも重なって臨場感があります。
「助けてくれ!」と右手を伸ばして叫んでいるような人の表情が見事です。
こちらの彫刻は日本神話「三韓征伐(さんかんせいばつ)」の武内宿禰(たけし<の>うちのすくね)です。宝珠を投げているとのこと。
ちなみに三韓征伐を簡単におさらいすると、14代仲哀天皇が「朝鮮半島にある新羅を攻めよ」という神のお告げを無視し、当時熊襲と呼ばれた南九州を攻めたために急死しました。そして仲哀天皇の死後、皇后で応神天皇の母親である神功皇后が、武内宿禰らを従えて海を渡り、新羅を攻めたという伝承のことです。
こちらも三韓征伐です。安倍介丸(麿)が龍退治をしている様子を彫っているとのこと。
そして武内宿禰の反対側に行くと、三韓征伐の主役・神功皇后が登場します。
こちらです。軍配を持っているのが皇后です。
花戸口虹梁(はなとぐちこうりょう)と呼ばれる部分です。ここには龍虎が彫られています。
右面大屋根側です。上の方(枡合:ますあい)には伝説の動物・麒麟が、下の方(虹梁:こうりょう)には鶴が彫られているとのこと。
こちらは皆で曳いたり、押したりする部分ですね。ここにも彫刻があります。上が勾欄(こうらん)合・下が縁葛(えんかづら)と呼ぶそうです。勾欄合が牡丹に唐獅子で、縁葛が三韓征伐を表しているそうです。
台木と呼ばれる部分は、「波に鯉」を表しているそうです。黄金に輝く鯉のインパクトが強いですね。
柱巻き付くように装飾されている金具は「青龍」を示しています。
さらにだんじりに近づいてみました。刀を持った人物にもリアルな表情があります。
こちらも戦いのシーンです。
伝説上の動物のようです。獏のようにもみえますね。
こちらも伝説上の動物でしょうか?猿に似ていて顔が赤っぽいところから、酒が好きと言われている猩々(しょうじょう:オランウータン)かもしれません。
ということで、だんじりに近づいて細かく精巧に彫られているあれこれを撮影しました。
だんじりのある町に住んでいる人にとっては当たり前のようなものでも、河内長野でも無い町に住んでいると、秋祭り・だんじりの世界は少し遠い気がします。
今回のように間近でだんじりに触れる機会が少しでも増えると、だんじりの無い町の人間もだんじりへの親しみが増えるのかなという気がしました。
小塩町だんじり小屋
住所:大阪府河内長野市小塩町
アクセス:南海三日市町駅から徒歩11分
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