初開催のセパン8時間レースは見所満載!MotoGPライダー、日本チームも多数参戦。
鈴鹿8時間耐久ロードレース(鈴鹿8耐)を含むオートバイ耐久シリーズの「FIM世界耐久選手権(EWC)」が12月14日(土)にマレーシアのセパンサーキットで「セパン8時間耐久レース」を開催する。東南アジアで同シリーズのレースが開催されるのは初めての試みとなるが、なんと51台ものエントリーを集める大盛況。日本から参戦のチームも多く、鈴鹿8耐のファンにとっても見逃せないレースである。
モルビデリらMotoGPライダーも参戦!
MotoGP・マレーシアGPの開催地でもあるセパンサーキット(1周約5.5km)で初開催の「セパン8耐」には数多くの注目チームがある。そんな中で地元マレーシアで最も関心を集めているのがヤマハYZF-R1で参戦する「#21 Yamaha Sepang Racing」だ。
このチームの母体となっているのは2019年からMotoGPに「Petronas Yamaha SRT」として参戦を始めたSIC Racing Teamである。バイクレース人気が高まるマレーシアで地元ライダーの若手育成を担いながらMoto3、Moto2に参戦し、ついに最高峰MotoGPまで登りつめた、最も勢いのあるレーシングチームだ。
地元のスペシャルチームとして参戦する「#21 Yamaha Sepang Racing」は現役MotoGPライダーのフランコ・モルビデリ(イタリア)、ハフィス・シャーリン(マレーシア)、そしてスーパーバイク世界選手権のライダーで鈴鹿8耐で4勝を飾っているマイケル・ファン・デル・マーク(オランダ)という強力なライダー編成となる。ライダーの速さだけで言えば、全51チームの中で群を抜いた実力派チームと言えるだろう。
ヤマハのエースナンバー「#21」を付ける「#21 Yamaha Sepang Racing」はヤマハの準ワークスチームという体制で戦うことになり、今回はスポット参戦ながら一番の優勝候補である。ただ、ヤマハの耐久ノウハウが豊富に投入されているとは言え、耐久チームとしては初出場。シャーリンとファン・デル・マークは鈴鹿8耐の出場経験があるが、フランコ・モルビデリは耐久レースは初めての挑戦。モルビデリは結果次第で夏の鈴鹿8耐でヤマハワークスに召集される可能性も秘めているといえ、速さだけでは勝てない耐久レースでモルビデリがどんなパフォーマンスを見せつけるかに注目が集まる。
また、ハフィス・シャーリンは今年でMotoGPのシートを喪失し、来季からはMoto2に戻るが、このレースはヤマハに対しても強くアピールができる舞台となる。シャーリンは雨のレースを得意とし、2012年にスポット参戦したMoto2マレーシアGPでは3位表彰台を獲得。レース中の降雨、雷雨も予想される雨季のマレーシアで彼の実力が大きな武器になることは間違いないだろう。
ボルドールではアクシデント多発
近年の「FIM EWC」は年をまたいで開催されていて、2019-20年シーズンはすでにフランスの「ボルドール24時間」(9月21日〜22日)で開幕している。鈴鹿8耐を最終戦に全5戦で争うEWCのシリーズで最も獲得ポイント数が多いのが開幕戦「ボルドール24時間」と第3戦「ル・マン24時間」(4月18日〜19日)の2つの24時間レースだ。
そういう意味で「ボルドール24時間」はEWCの年間参戦チームにとっては大量ポイント獲得の好機だったが、スタートから激しい降雨に見舞われたポールリカールサーキットではアクシデントが続出。12時間以上に渡ってレースは中断される異例の展開となった。朝6時のリスタート後はEWCのトップチームによる好バトルが見られるも、「#5 F.C.C. TSR Honda France」がエンジンブロー。コース上に出たオイルに乗って、昨シーズンの王者「#1 SRC KAWASAKI France」とトップ走行中だった「#7 YART YAMAHA」が転倒。バイクが炎上して、優勝候補のトップチーム3台が同時リタイアという大波乱の展開になった。
優勝したのは「#2 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM(SERT)」。このレースでSERTは60点という大量ポイントを稼ぎ、早くもライバルを突き放した。今回のセパン8時間は途中経過時間エキストラポイントがない通常の8時間レースであるため、ライバルたちはこのレースだけではSERTを逆転できないが、年間チャンピオンを考えれば、ここは是が非でも大量ポイントを勝ち取りたいレースになる。
日本代表チームの「#1 F.C.C. TSR Honda France」はジョシュ・フック(オーストラリア)、フレディ・フォーレイ(フランス)、マイク・ディメッリオ(フランス)の昨シーズンのトリオを継続。藤井正和・総監督は「アジアの第1回大会だけに重要なレース。F.C.C.と共に総力を結集して戦う。目標は優勝だが(年間タイトルを獲るという意味では)2位表彰台でも御の字。SERTとの差を詰めることが何より大事なこと」と冷静にセパン8時間での目標を語る。
今回のセパン8耐をホンダのワークスマシンにより近いスペックの鈴鹿8耐仕様で戦うということで、戦闘力は全チーム中で最も高い。TSRは次戦、ル・マン24時間で新型マシンのホンダCBR1000RR-Rを投入することを明言しており、今回がホンダCBR1000RRでの最後の戦いとなる。
【優勝候補の主要チーム】
1 SRC Kawasaki France (フランス)=カワサキ
ジェレミー・グアルノーニ/エルワン・ニゴン/ダビド・チェカ
2 SUZUKI ENDURANCE RACING TEAM(フランス)=スズキ
バンサン・フィリップ/エティエンヌ・マッソン/グレッグ・ブラック
5 F.C.C. TSR Honda France (日本)=ホンダ
ジョシュ・フック/フレディ・フォーレイ/マイク・ディメッリオ
6 Team ERC ENDURANCE(ドイツ)=ドゥカティ
オンドレジュ・ジェセック/ランディ・ド・ピュニエ/ルイ・ロッシ
7 YART YAMAHA(オーストリア)=ヤマハ
ブロック・パークス/マーヴィン・フリッツ/ニッコロ・カネパ
21 Yamaha Sepang Racing (マレーシア)=ヤマハ
フランコ・モルビデリ/マイケル・ファン・デル・マーク/ハフィス・シャーリン
37 BMW MOTORRAD WORLD ENDURANCE TEAM(ベルギー)=BMW
イルヤ・ミカルチェク/マーカス・レイターベルガー/ケニー・フォーレイ
333 VRD IGOL PIERRET EXPERIENCE(フランス)=ヤマハ
フローリアン・アルト/フローリアン・マリノ/ザビエル・シメオン
日本チーム&ライダーが多数参戦
今回のセパン8耐には日本から9チームが海を越えて参戦する。鈴鹿8耐の出場権を獲得するための戦い「8耐トライアウト」のファーストステージが同時開催されるからだ。2020年鈴鹿8耐の「8耐トライアウト」はルールが変わり、現時点で出場権を持っているのは2019年の鈴鹿8耐ウイナー「KAWASAKI Racing Team」とプライベーター枠で優先出場権を得た5チームの合計6チームだけ。
今回のセパン8耐では(年間エントリーチームを除く)上位20チームに出場権が与えられるため、鈴鹿8耐に参戦を希望するチームは完走すれば鈴鹿8耐参戦への切符をもらえることになる。ただ、海外戦ということもあり、国内での「8耐トライアウト」対象レースよりも予算がかかるのは当然。しかし、超プライベート体制のチームにとってはギリギリまで出場枠が取れていないという状況を避けるためにも出場を決意してきた。
「#10 KRP三陽工業 will raise RS-ITOH」からは柳川明、井筒仁康、「#73 TEAM PLUSONE」からは関口太郎、酒井大作が参戦するなど海外レースの経験が豊富なベテラン達が名を連ねている。
また、EWCの年間エントリーチームからも多数の日本人ライダーが参戦する。「#71 SUZUKI JEG KAGAYAMA」(スズキ)からは津田拓也と浦本修充が出場。そして「#55 National Motos」(ホンダ)からはスーパースポーツ世界選手権で来季からホンダにスイッチする大久保光が参戦。日本人ライダーがテレビ中継の国際映像に登場するシーンもきっと多くなるだろう。
日本でのテレビ中継は「日テレG+(ジータス)」で12月14日(土)の13:30-22:30まで完全生中継で放送される。
【日本チーム/日本人ライダー】
5 F.C.C. TSR Honda France (年間参戦)=ホンダ
ジョシュ・フック/フレディ・フォーレイ/マイク・ディメッリオ
10 KRP三陽工業 will raise RS-ITOH(8耐TO)=カワサキ
柳川明/伊藤和輝/井筒仁康
17 チームスガイレーシングジャパン(8耐TO)=アプリリア
須貝義行/ポール・バーン/ベンジャミン・バーク
27 TransMap Racing with ACE CAFE(8耐TO)=スズキ
大石正彦/平野ルナ/ラジーニ・クリシュナン
28 Team Kodama (8耐TO)=ヤマハ
児玉勇太/徳留和樹
51 Team MOTOKIDS icu Takada I.W NAC SANYO(8耐TO)=ヤマハ
福山京太/吉田和憲/奥田貴哉
55 National Motos(フランス/年間参戦)=ホンダ
バレンティン・デビース/大久保光
69 山科カワサキKEN Racing &オートレース宇部(8耐TO)=カワサキ
新庄雅浩/中村修一郎/松本正幸
71 SUZUKI JEG KAGAYAMA(スペイン/年間エントリー)=スズキ
グレゴリー・ルブラン/浦本修充/津田拓也
73 TEAM PLUSONE(8耐TO)=BMW
関口太郎/酒井大作/名越公助
80 TONE RT SYNCEDGE 4413 BMW(スポット参戦)=BMW
星野知也/渥美心/石塚健
87 Team R2CL(フランス/年間エントリー)=スズキ
今野由寛/クリントン・セラー/シェリダン・モライス
88 Honda ASIA Dream Racing with SHOWA(8耐TO)=ホンダ
ザクワン・ザイディ/アンディ・ファイリド・イズディハール/ソムキャット・チャントラ
98 チーム阪神ライディングスクール(8耐TO)=カワサキ
佐野勝人/岡村光矩/東村伊佐三
8耐TO=8耐トライアウト