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超新星爆発の500億倍!?ビッグバン以降の宇宙で最大の爆発の痕跡を発見

どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「ビッグバン以降で最大の爆発の痕跡を観測か」というテーマで動画をお送りしていきます。

●周囲を吹き飛ばす超大質量ブラックホール

ブラックホールの周囲には降着円盤と呼ばれる、ブラックホールに飲み込まれかけている物質によって形成された円盤状の構造があります。

この降着円盤を形成する物質たちはブラックホールの強大すぎる重力によって光速近くにまで加速させられています。

そんな速度でお互い擦れ合うので、凄まじい摩擦熱が生じ、とてつもない温度になっています。

この降着円盤にある物質は最終的に全てブラックホール飲み込まれるわけではなく、実は大部分は飲み込まれる直前にブラックホールの上下方向に光速に非常に近い速度で放出されます。

これは宇宙ジェットと呼ばれます。

この宇宙ジェットの強さはブラックホールの大きさや、その周囲に残っている物質の量によってまちまちです。

ですが巨大な銀河団の中心にあるようなブラックホールの場合、その周囲には大量の物質があるため、膨大なエネルギーの宇宙ジェットを放ち、周囲の物質を吹き飛ばして巨大な空洞を作ってしまう場合すらあります。

Credit: NASA/CXC/Ohio U./B.McNamara
Credit: NASA/CXC/Ohio U./B.McNamara

実例として、これまで歴代最強の爆発の記録を持っていた、地球から遥か26億光年も離れた場所にある「MS 0735.6+7421」という銀河団があります。

今画像が表示されていますが、左がチャンドラというNASAのX線宇宙望遠鏡によって実際に観測された銀河団の映像、そして右がより視覚的にわかりやすくしたイメージ図です。

一説では、銀河団中心にある巨大銀河の中心には、太陽質量の500億倍を超える超巨大なブラックホールがあるとされています。

その上下には銀河団自体に空洞が存在しているという、非常に奇妙な形をしていますね。

これは銀河の大集団である銀河団なので、この空洞の大きさも半端ではありません。

2つの空洞の直径はなんと実に60万光年もあるそうです!

天の川銀河のディスクの直径が約10万光年なので、片方の空洞に5-6つ程度並べられそうです。

これだけ巨大な空洞を形成するには、一般的な超新星爆発によって放たれる総エネルギーの実に100億倍以上に相当するエネルギーが必要であると見積もられています…

このような膨大なエネルギーが、1億年ほどかけてじっくりとブラックホールから放たれ、周囲の物質を吹き飛ばしていったそうです。

●記録を大きく塗り替える大爆発

Credits: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF
Credits: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF

そんな中、2020年2月には、先述のMS 0735.6+7421で起きた爆発で放たれた総エネルギーの、さらに5倍ものエネルギーが放出されたと見積もられている、「ビッグバン以降の宇宙で最大の爆発現象」の痕跡が発見されたと話題になりました。

爆発跡が確認されたのは、地球から3億9000万光年離れた場所にある「へびつかい座銀河団」という銀河団です。

画像中心部からやや右上の明るい領域の十字マークの位置に、銀河団の中心部と、超大質量ブラックホールがあります。

Credits: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF
Credits: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF

2014年にチャンドラX線観測衛星でこの銀河団を観測して得られた画像から、銀河中心部から左下の部分に、X線(紫色の部分)が凹んで分布している構造が存在することが明らかになりました。

これはブラックホールから放たれたジェットによって形成された、銀河団内の物質の巨大空洞の端の一部にあたるのではないかと考察されたものの、その空洞の直径が約150万光年に相当し、それを形成するにはあまりに膨大なエネルギーが必要となるため、当初は超大質量ブラックホールの活動によって形成されたものとは信じられていなかったようです。

ですがその後、通称MWAと呼ばれる望遠鏡で同じ銀河団を電波によって観測したところ、X線が凹んで分布している向こう側にフィットする形で、電波ノイズ(青色の部分)が多く分布していることが明らかになりました。

この電波信号は、光速に近い速度にまで加速された電子から放たれていると見られています。

このことから、この領域にはブラックホールのジェットとして放たれた超高エネルギーの電子が満たされた、超巨大な空洞が存在していることが示されています。

つまりこの電波での追加観測の結果が、「この超巨大空洞が超大質量ブラックホールの活動によって形成されたものだ」という説を裏付ける決定的な証拠となったようです。

このような規模の爆発が起きるには、中心のブラックホールが太陽質量の実に2.7億倍に相当する膨大な量の物質を飲み込む必要があるそうです。

小さな銀河に相当する量を飲み込むには時間がかかるため、1億年にわたり爆発が続いたようです。

ビッグバン以降最大の爆発と呼ばれるだけあり、想像を絶する規模の凄まじい現象だったんですね。

Credits: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF
Credits: X-ray: Chandra: NASA/CXC/NRL/S. Giacintucci, et al., XMM-Newton: ESA/XMM-Newton; Radio: NCRA/TIFR/GMRT; Infrared: 2MASS/UMass/IPAC-Caltech/NASA/NSF

これらの画像には、銀河団中心のブラックホールから現在進行形で放たれているジェットの姿が映されていません。

さらに画像ではわかりにくいですが、銀河団中心部が最もガスの密度が濃い部分から少しだけズレていることからも、現在ではブラックホールの成長に必要な物質が枯渇し、ジェットは停止していると考えられています。

また、通常であればブラックホールのジェットはその両端に放たれるにもかかわらず、今回発見された空洞と反対側には同様の構造が見つかっていません。

この天体に残る多くの疑問を解決するには、さらに多くの観測によるデータが必要となりそうです。

今後の展開が楽しみですね!

https://chandra.si.edu/blog/node/751
https://chandra.si.edu/photo/2020/ophiuchus/
https://www.nasa.gov/mission_pages/chandra/news/record-breaking-explosion-by-black-hole-spotted.html

https://www.nytimes.com/2020/03/06/science/black-hole-cosmos-astrophysics.html

「宇宙ヤバイch」というYouTubeチャンネルで、宇宙分野の最新ニュースや雑学などを発信しているYouTuberです。好きな天体は海王星です。

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