Yahoo!ニュース

さらば「あづま」! 高円寺の街に愛された中華そばも旨い老舗甘味処が55年の歴史に幕

井手隊長ラーメンライター/ミュージシャン
高円寺の「甘味 あづま」が閉店

東京・高円寺にある老舗甘味処「甘味 あづま」が昨年12月30日、55年の歴史に幕を下ろした。

JR中央線・高円寺駅北口からすぐのところにある高円寺中通り商店街。この商店街は道が広くなく、飲食店や居酒屋が所狭しと立ち並ぶ。商店街をまっすぐ行くと左側に現れるのが、ひときわ昭和な趣で存在感を放つ「あづま」だ。

甘味 あづま
甘味 あづま

「あづま」は1968年に創業。

ショーケースには時代を感じる食品サンプルが並び、お店に入ると昭和の時代そのままのほっとした空間。地元の人たちを中心に高円寺で長く愛されたお店だ。

閉店を告げる貼り紙
閉店を告げる貼り紙

筆者は同じ商店街にあるライブハウス「ShowBoat」でイベントがあるとよくここに来ていた。クリームあんみつやところてん、おしるこなど昭和な甘味が充実しており、時の止まった空間でゆったりできるのが大好きだった。

同じイベントに出ていたたけし軍団のグレート義太夫さんと一緒に来たのが初めての「あづま」だったが、その時何に驚いたかというとメニューに「コーヒーがない」ことだった。

メニューを隅から隅まで見ても「コーヒー」の文字はない
メニューを隅から隅まで見ても「コーヒー」の文字はない

「あづま」は“甘味処”なのでよく考えれば分かることなのだが、メニューを一生懸命探しても「コーヒー」の文字が見当たらない。「中華そば」や「カレー」はあるのに「コーヒー」がないことにびっくりした記憶がある。

福岡の知人が東京に遊びに来た時に連れてきたこともあったが、その時も彼は一生懸命コーヒーを探していた。

コーヒーがないので、いつもあまり甘いものを食べない筆者も「あづま」に来た時は甘味を楽しんできた。

むしろ日常で甘味をいただく数少ないお店だったともいえる。特に好きだったのがクリームあんみつだ。

グレート義太夫さん(左)と筆者(右)
グレート義太夫さん(左)と筆者(右)

そんな「あづま」が閉店するということで、グレート義太夫さんと待ち合わせて食べ納めをしてきた。

昨年末に閉店する話は少し前から出ていたが、最後は営業日を減らしていたので2回予定を変更し、3度目でやっと行くことができた。

中華そば
中華そば

最後なので今回は「中華そば」を食べようと思って来た。

ここに来るといつも甘味なので、実はここでラーメンは食べたことがなく、最初で最後のラーメンになった。

「中華そば」は450円。令和の今ではあり得ない価格である。餅の入った「餅入ソバ」も有名だ。

しっかり麺線が整っていて麺量も多め
しっかり麺線が整っていて麺量も多め

具はチャーシュー、ナルト、メンマ、ネギ、ノリ、ゆで卵。麺は中太でしっかり麺線が整っている。

じんわりとした味わいの醤油スープは昭和の面影そのまま。意外にも麺量が多く、チャーシューも分厚くて美味しい。

クリームあんみつ
クリームあんみつ

締めにいつもの「クリームあんみつ」。クリームあんみつも450円だ。

バニラアイスと餡のほかにフルーツと緑の求肥が入っているのが特徴だ。ここのあんみつは甘さ控えめで嬉しい。

甘いのがそれほど得意ではない筆者でもここのあんみつはいつもぺろりだ。

グレート義太夫さんは「ところてん」を楽しんでいた。

ところてんを楽しむグレート義太夫さん
ところてんを楽しむグレート義太夫さん

最後を惜しむ常連客がたくさん訪れ、長居もせずパッと食べて挨拶して帰っているのが印象的だった。

店主さんと女将さんともにご高齢だと思うのでゆっくり休んでほしい。昭和から続くいいお店がまた一つ幕を下ろした。

※写真はすべて筆者による撮影

ラーメンライター/ミュージシャン

全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライター。東洋経済オンライン、AERA dot.など連載のほか、テレビ番組出演・監修、コンテスト審査員、イベントMCなどで活躍中。 自身のインターネット番組、ブログ、Twitter、Facebookなどでも定期的にラーメン情報を発信。ミュージシャンとして、サザンオールスターズのトリビュートバンド「井手隊長バンド」や、昭和歌謡・オールディーズユニット「フカイデカフェ」でも活動。本の要約サービス フライヤー 執行役員、「読者が選ぶビジネス書グランプリ」事務局長も務める。

井手隊長の最近の記事