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心霊で笑いをとる。オンリーワンのリアル霊視芸人・シークエンスはやともという生き方

中西正男芸能記者
霊視芸人としてオファーが殺到しているシークエンスはやとも

 霊が視える特殊な能力を生かし、フジテレビ「ホンマでっか!?TV」「ダウンタウンなう」などでの“生き霊チェック”が話題になっているピン芸人・シークエンスはやともさん(29)。2016年から「女性自身」で連載「ポップな心霊論」も担当し、昨年12月には2冊目の著書「霊が教える幸せな生き方」も上梓しました。今月4日に放送された日本テレビ「情報ライブ ミヤネ屋 新春!初笑いスペシャル~大泉洋2021年どうでしょう!~」でも大泉さんが会いたかった人物として出演するなど反響は広がるばかりですが、活動の根底にある思いを明かしました。

スキンヘッドの男の人

 小学3年の時に、殺人現場を目の当たりにしてしまったんです。

 スキンヘッドの男の人がもう一回り大きな男の人に追いかけまわされて、最終的には駐車場で刺されているところを見ちゃいまして。

 その日の夜、夜中から朝方にかけて、そのスキンヘッドの人が寝ている僕に覆いかぶさるようにすぐ横にいたんです。

 実は、父も、いわゆる視える人で、これは父いわくなんですけど、僕も小さな頃からずっと見えてはいたらしいんですよ。

 小さな子が誰もいないはずのところをジーッと見てたりすることがあったりすると思うんですけど、普通、親御さんには視えてないので「変なことをしてるなぁ」で終わるところが、ウチは父も視えるので「この子はアレが視えてるんだな」となってたみたいなんです。

 でも、僕からすると、視えている人は血みどろでもないし、白装束を着ているわけでもないし、お化けという感覚がなかったんです。だけど、この時は目の前で殺されたはずの人がすぐ横にいたので「あ、この人は生きている人間ではないんだ」と、そこをきっかけに自分が視えることに気づいたんです。

もう芸人を辞めよう

 ただ、それを人に言うわけでもなく普通に暮らして、憧れていた芸人の世界に入りました。

 芸人になってからも、公の場では言ってはこなかったんですけど、同期にはプライベートな場でそんな話を少しはしてたんです。

 そんな中、とあるオーディションライブのエンディングで、同期の一人が「実は、こいつ、視えるんですよ」と言ったことをきっかけに、MCを務めてらっしゃった「ダイタク」の吉本大さんが興味を持ってくださいまして。

 そこから“楽屋のおもちゃ”程度ですけど、期せずして、視える話を仲間内ではするようになったんですけど、結果、それが今も芸人を続けていることに繋がりまして。

 というのは、そうやって話しているうちに、僕が視えるという話が広まって、フジテレビのディレクターさんを紹介いただいたんです。そこからディレクターさんにかわいがってもらって月に5~6回は飲みに連れて行っていただくようになったんです。

 ただ、その頃、自分の中ではもう芸人を辞めようと思っていたんです。

 こんなことを自分で言うのもアレなんですけど、もともと吉本興業の若手有望株を集めたユニット「よしもとスパイス」とか「ゲキノビ!」にはことごとく選んでもらってまして。スタートとしては決して悪くはなかったんです。

 ただ、先輩や同期はどんどん売れていく。「ナインティナイン」さんの「おもしろ荘」に出たり「M-1グランプリ」で決勝進出したり。

 後輩を見ても、明らかに自分より面白くなってるんです。すごいスピードで伸びている。「このままいったら、オレ、この人たちに勝てないな」と思うようになったんです。

 ディレクターさんに飲みに連れて行ってもらうようになった中でも、辞めるという決意はどんどんかたまっていって、辞めるんだったらディレクターさんにもきちんと伝えなきゃと思っていた、まさにそのタイミングで電話をもらったんです。「『ホンマでっか!?TV』が決まったよ」と。

 1年くらい飲みに連れて行ってもらっていて、電話をいただいたのが2019年12月でした。収録が2020年1月末で放送が翌2月。もう辞める気でいたので、ラストチャンスだと思って収録に臨みました。

 その結果、ありがたいことに、僕の中では断トツの反響をいただいたんです。そこからあらゆる番組からお声がけをいただくようになって、何もかもガラッと変わりました。

 そもそも、芸人になろうと思ったのは「M-1」を見たのがきっかけですし、いろいろな先輩のように面白くなりたいと思ってのことだったんで、霊が視えることで売ろうだなんて全く思ってもなかったんです。

 だけど、世の中に必要とされるニーズで考えると、明らかにこっち(視えること)なんだろうなと。逆に言うと、それを売りにしようだなんて全く思ってない状況でこれだけ反響があるということは、よっぽどニーズがあるということなんだろうなとも感じました。

心霊で笑いをとる

 ありがたいことに、そうやってお声がけをいただけるようになって、今、思っているのが“お笑いと心霊の融合”というか、うまく混ぜられたらなと思ってるんです。

 今、番組に呼んでもらうパターンで圧倒的に多いのが、ゲストの女優さんや俳優さんについている生き霊を見るというものなんですけど、ほとんどの方は最初怖がるというか、嫌がるというか、そういうモードになるんです。そういう方々が最後には心底笑って帰ってくださるようになればいいなと。

 心霊で笑いをとる。これはみんな「できない」と言ってた領域なんですけど、なんとか、そこができたらいいなと思っています。

 お笑い的な観点で言うと、まず、心霊は死という概念がすぐ近くにあるものだから、なかなか笑いにつなげにくい。そして、目には見えないものなのだから、フリもきかせられないし、話が積み上げられないし、システム的にも笑いに持っていきにくい。

 もし、それを笑いにできるパターンがあるとするならば、まず僕のことを「視える人」と完全に認知してもらうこと。これが必須だなと。

 自分の目には見えないけれど「この人は霊が視える人なんだ」と皆さんにしっかりと認識してもらう。そうすれば、そこから“やり方”が見えてくるんだろうなとも思うんです。

 具体的には「有田ジェネレーション」(TBSテレビ)や「千鳥のニッポンハッピーチャンネル」(Amazonプライム・ビデオ)とかで「霊が視える、ご存知、シークエンスはやともさんが来ましたよ」ということが作れれば、面白いことができるんじゃないかなと。

 なので、まずは僕が「本当に視えている人」として定着してないと成立しないので、なんとか、そこまで走り切ってみたいと思っているんです。

 視えてることの証明はできないですけど、自分が見えていることを全て正直に言っていれば、それが信じてもらえることにつながっていくのかなとは考えています。視えてるもの、視えてないもの、分からないこと。それを全てお伝えするという。

見たことがない形

 普通は目には見えない世界なので「どう見えてるの?」と聞かれることも多いんです。

 これって、なかなか難しいというか、例えば、生きている人間に好かれている、嫌われているということだったら、胸のあたりに人の思いみたいなものが砂粒のように集まってるんです。その様子を見て、こちらが読み取るんです。

 具体的に文字で「この人は不倫してます」とか出てくれたら分かりやすいんですけど、仮に女の人っぽい存在がその人の胸の周りにいたら「これは受け入れてはないから遊んでいるだけの人なのかな」とか、そういう状態を見て判断する。答えが書いてあるわけではないので、感じて解釈するしかないんです。

 そうやって、日々、いろいろな人の状況を見ながら暮らすことにもなるんですけど、その中でも「こんな形の人は見たことがない」と思った方がいまして。それが、マツコ・デラックスさんなんです。「これを見て、なんと思えばいいんだろう…」となったくらい、唯一無二と言いますか。

 霊的なことで言うと、本来、そこに魂があるはずの胸のところが空洞なんです。

 マツコさんって、下ネタ系の話をされることもありますけど、どんなにエッチなことを言ってもエロく聞こえない。それはフォルムもあるでしょうし、いわゆるオネエという存在が持つ特性もあるんだとは思うんですけど、実は、自分の思いとか、もっというと、自分の人生を完全に押し殺している。人間・マツコの喜びを完全に殺した状態でテレビに出ている。視る立場からすると、そんな感じがすごくするんです。

 いわゆるオネエの方ってたくさんいらっしゃって、なんだったらマツコさんと同じくらいトークスキルのある方もいらっしゃると思うんです。だけど、結局、マツコさんを超える存在は出てこない。

 それはなぜかというと、人間としての欲求みたいなものがどこかで出てくるんです。テレビに出ているオネエの人って、それを出した瞬間、視聴者からの見られ方が一気に変わるんです。ポップなアイコンとしてキャラクターが崩れるというか。

 ナニな話、ピカチュウに性のニオイがしたら、もうピカチュウとしては見られないみたいに、そこはすごくセンシティブな部分でもある。

 もちろん、キャラクターではなく生きている人間ですから、そんな欲求を持つことは普通だし、何も悪いことではないんです。だけど、そういう形でテレビに出るという特殊なことをしている立場だと、そのニオイがした時点で多くの人はひいちゃうんです。

 それを誰よりも分かっているし、そうやって押し殺した先にある“自分が求められている世界”まで理解されている。僕はそう解釈しています。

 あと、圧倒的な魂の強さを感じたのは二宮和也さんです。

 二宮さんの番組に出していただいた時に、他のジャニーズの方もいらっしゃったんですけど、霊的に見ると、まるで違うんです。

 二宮さんがスタジオに入ってきてイスに座った時点で、魂が周りに知らしめているものの強さが尋常じゃない。変な話、この人が座ってさえいてくれれば、何もしゃべらなかったとしても番組が成立する。そう思うくらい、強い力でした。

 いろいろなスターの方ともご一緒させていただきましたけど、あそこまでの強さを感じたのは二宮さんしかいません。純粋に、すごい人だと思いました。

 こうやって、人のことをいろいろ話してるんですけど、これが、自分のことだけは視ることができないんですよね…。視える人、皆さんおっしゃいますけど、自分は視えない。自分の分析ができたら、もう少し、良い感じになるとは思うんですけどね(笑)。

 こんな感じで話してると、今後も霊のことだけを軸に活動していくっぽく聞こえますけど、最初「M-1」に憧れたように、シンプルに賞レースで結果を残すことも、まだまだあきらめてませんから(笑)。そこは、ただただ自分で純粋に頑張るしかないので、力いっぱいやっていきたいと思います。

(撮影・中西正男)

■シークエンスはやとも

1991年7月8日生まれ。東京都出身。小学3年生の頃、殺人現場を目撃したことがきっかけで霊が視えることに気づく。吉本興業所属。NSC東京校20期生。当初はコンビとして活動するが解散を経てピン芸人に。デビュー後、出演したオーディションライブをきっかけに霊視の能力があることを明かし、2016年から「女性自身」で連載「ポップな心霊論」がスタートする。昨年、フジテレビ「ホンマでっか⁉TV」に出演後オファーが殺到し、フジテレビ「ダウンタウンなう」、日本テレビ「行列のできる法律相談所」、フジテレビ「さんまのお笑い向上委員会」などに出演する。昨年12月16日には著書「霊が教える幸せな生き方」を上梓。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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