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転向の仕方で変わる3連休中に日本を襲う台風19号

饒村曜気象予報士
台風15号の雲(9月8日15時、左)と台風19号の雲(10月8日15時、右)

台風19号が北上中

 大型で猛烈な台風19号「ハギビス」が北西中です(図1)。

図1 台風19号の進路予報(10月9日3時現在)
図1 台風19号の進路予報(10月9日3時現在)

 台風の進路予報は最新のものをお使い下さい。

 この「ハギビス(Hagibis)」という名前は、アジア各国が台風防災等のために組織している台風委員会にて、フィリピンが提案した名称で、「すばやい」という意味があります。

 今後、台風19号は、進行方向を西よりから東よりに変えますが、この進行方向を東よりに変える場所を転向点といいます。

 上空で偏東風が吹いている低緯度の海域と、上空で偏西風が吹いている中緯度の海域の境目が転向点ということもできます。

 台風19号でいえば、11日(金)の午後に転向点に達することになりますが、転向点付近に達する頃の予報は、台風予報の中でも難しい予報の一つです。

 転向点を過ぎると、偏西風による加速が始まりますので、転向点付近の予報に誤差があると、転向点以降の進路予報が大きくずれるからです。

 北にずれたり、南にずれたり、襲来が予定より早まったり、遅れたりすることで、3連休中の日本の天気が大きく左右されます。

 現時点の台風の進路予報は、最新の進路予報で確認が必要な予報です。

 転向点を過ぎた後の台風予報は、転向前の進路予報に比べて正確になりますが、西から東日本に最接近の直前です。

季節で違う転向点

 個々の台風によって違いがありますが、一般的には、春から夏になると転向点の位置が次第に高緯度になります。

 そして、一般的には秋が深まるにつれ、転向点が次第に低緯度に移ってきます。

 また、同じような緯度で転向しても、秋が深まると急に曲がるようになります(図2)。

 日本上空の偏西風が強くなって南下しているからです。

図2 秋の台風進路のイメージ図
図2 秋の台風進路のイメージ図

雨域が広い台風

 台風19号は、広い範囲の雨雲を伴っているという特徴があります。

 約1か月前の9月9日、5時前に千葉市付近に上陸した台風15号の雨雲の範囲に比べれば、大雑把に言って10倍はあります(タイトル画像参照)。

 大型の台風19号が直撃した場合、暴風が吹いている時間が長くなると同時に、強い雨が降っている時間も長くなります。

 このため、台風による総雨量が記録的になるおそれがあります。

 土砂降りの雨と言われている、時間雨量が20から30ミリが10時間続けば200~300ミリの雨になりますし、24時間続けば500ミリを軽く超えることになります。

 11日(金)午後から西~東日本で風雨が強まりますが、暴風や強い雨がどれくらい継続するかを注意し、警戒する必要があります(図3)。

図3 風と雨の分布予報(10月11日15時の予報)
図3 風と雨の分布予報(10月11日15時の予報)

暴風警報や大雨警報が発表となる可能性

 気象庁では、5日先までの警報級の現象がおきる可能性を、早期注意情報として、「高」「中」の2段階で発表しています。

 これによると、11日(金)の大雨警報が発表となる可能性は「高」も「中」もありませんが、12日(土)になると、西日本から北日本の広い範囲で「高」や「中」がついています(図4)。

図4 大雨警報の可能性(10月12日の予想)
図4 大雨警報の可能性(10月12日の予想)

 そして、13日(日)には、「高」の範囲が東北地方へも広がります。

 また、暴風警報の可能性も、12日(土)には、近畿から東日本、東北南部で「高」となり、13日(日)には、「高」の範囲が東北北部まで広がります(図5)。

図5 暴風警報の可能性(10月12日の予報)
図5 暴風警報の可能性(10月12日の予報)

 今年一番の発達した台風の接近です。

 最新の台風情報の入手に努め、念には念を入れて警戒してください。

タイトル画像、図1、図3、図4、図5の出典:ウェザーマップ提供。

図2の出典:著者作成。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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