シリアのシャーム解放機構(HTS)とは? 穏健化を約束しアルカイダと関係断絶 #専門家のまとめ
シリア内戦でアサド政権を打倒した最後の攻勢作戦での主力は「シャーム解放機構(HTS:Hay'at Tahrir al-Sham)」と呼ばれる組織です。シャームとはシリア周辺の古い呼び名でもあり、日本の報道では意訳して「シリア解放機構」と呼ばれる場合もあります。彼らは元イスラム過激派(旧ヌスラ戦線)ですが、アルカイダとは関係を断って穏健化を目指して生まれ変わろうとしています。
ココがポイント
エキスパートの補足・見解
シャーム解放機構(HTS)は穏健化を目指す姿勢を見せています。その姿勢すら微塵も見せなかったイスラム国などとは一線を画しています。この姿勢が続くかどうかに、新生シリアが上手く行くかどうかが掛かっているのでしょう。もしもアフガニスタンのタリバンのように穏健化すると言って見せ掛けて嘘だったような場合には、シリアにまた戦乱の日々が舞い戻って来る恐れがあります。
しかしヌスラ戦線が2016年頃にアルカイダと関係を断ち新たに2017年にシャーム解放機構(HTS)と名前を変えた以上、現在の彼らを「シリアのアルカイダ」呼ばわりすることは許されません。それは旧アサド政権の流していたプロパガンダ宣伝の残滓でしかないのです。
なお旧ヌスラ戦線の親アルカイダ派は2018年2月頃に「フッラス・アル=ディーン(Hurras al-Din)」という新組織を作って出て行きました。これこそが正式な真の「シリアのアルカイダ」であり、アルカイダのシリアにおける正式な拠点です。フッラス・アル=ディーンを無視してシャーム解放機構(HTS)をアルカイダ呼ばわりするなど、おかしな話です。
ましてやシャーム解放機構(HTS)をイスラム国呼ばわりなども出来ません。両者は仲違いし交戦した間柄です。そしてやはり肝心なことは、もしイスラム国ならば穏健化などと絶対に口走らないだろうという単純な事実でしょう。