「超一流の攻防戦だった」大谷翔平vsダルビッシュ有を上原浩治が解説!投手心理を難しくした18秒ルール
メジャーリーグの韓国シリーズ、パドレスVSドジャースが20日、ソウル・高尺スカイドームで開幕した。パドレスの開幕投手はダルビッシュ有投手で、松井裕樹投手も中継ぎで登板して2つのアウトを奪って無失点と結果を出した。ドジャースは今季は打者に専念する大谷翔平選手が「2番・DH」で先発出場してマルチ安打に盗塁もマークして好スタートを切った。
TBS系情報番組「サンデーモーニング」の仕事で現地観戦する機会に恵まれた。ダルビッシュ投手は2年ぶり4回目の開幕投手をしっかりと務めたのは、さすがの貫禄だ。本来の開幕からは10日ほど早く、「オープン戦の延長」になってもおかしくない状況で、制球にやや苦しみ、球数が増えたものの、ボールにはキレがあるように見えた。3回3分の2を2安打1失点(自責0)と堂々たる好投。72球での降板は、本来よりも開幕時期が前倒しされている現状から言えば、十分の内容だろう。
大谷選手との対決は2打席あった。私は開幕前のこちらのコラムで、初球にストライクを取れるかを鍵に挙げていた。その意図は、初球がストライクなら、投手は次にきわどいボールを投げられる。逆に初球がボールになると、カウントを意識して2球目はストライクが欲しくなる。大谷選手の第1打席は初球がボールだったので、2球目を打ちにいっている。結果的にファウルになり、最後は遊ゴロに倒れたが、心理的には優位な打席になっていたはずだ。一方、第2打席は初球がファウル。ダルビッシュ投手が今度は優位に立ち、2球目はボール球を投じる余裕が生じた。3球目は特大のファウル。ダルビッシュ投手はおそらく、意図してファウルを打たせてカウントを取りにいったのだろうが、しっかりと振り切る大谷選手のスイングも力強かった。まさに超一流同士の攻防だと言えるだろう。結果的に、この打席は右前打を放って、初球に盗塁も決めた。
もちろん、ダルビッシュ投手は大谷選手とだけ戦っているわけではない。大谷選手の前を打つムーキー・ベッツ選手、後ろを打つフレディ・フリーマンらを擁するドジャースの強力打線に対し、失策による最少失点のみといい流れを持ってきた。
松井投手も6回1死から4番手で登板し、メジャー初三振など2つのアウトを奪って無失点で切り抜けた。ボールもすごく良かった。
全体を通じて気になったのは、投球間隔制限の「ピッチクロック」違反(ボールを宣告される)が多発した点だ。ダルビッシュ投手も松井投手も違反を取られた。試合時間の短縮を狙いに昨季から導入されたが、今季は走者ありの際に20秒から18秒へ短縮(無走者の場合は15秒で変更なし)された。投手に投球間隔の短縮を求めるルールだが、この日の試合を見ていた視聴者はわかると思うが、打者が構えるまでの時間もカウントは進むため、投手はどうしても心的に負担が大きくなる。この日も違反にはなっていないが、制限ギリギリでの投球も多く、せわしない印象だった。
野球から「間」のスポーツという醍醐味が消えてしまわないか。みなさんはどう思うだろうか。