12日から何気に始まるサッカー・アジア杯で日本が絶対全勝優勝すべき理由を26年W杯とからめて
FIFAワールドカップ2026(カナダ・メキシコ・アメリカ共催。以下「W杯」)アジア2次予選(日本は1次免除)が昨年11月から始まり、ミャンマーとシリアをともに5対0で下す圧勝で幸先のいいスタートを切ったのはご承知の通り。
ところで予選はいったん中断して3月に再開します。この間(1月12日~2月10日)に行われるのがAFCアジアカップ(以下「アジア杯」)。実はこの大会の結果が26年の本大会へ重大な影響を与えるのです。
以下の記載は詳しいサッカーファンだと「わかりきっている」話。ただ結構、アジア予選とアジア杯の区別がつかない人も多いようなので、そうした方向けへの解説です。
アジア予選とアジア杯の違い
まずは両大会の違いから。W杯アジア予選は現在2次の段階。勝ち残った16チームによる3次予選で本大会出場枠「8」のうち「6」がまず決まり、及ばなかった6チームから出場枠「2」を選ぶ(4次)。さらに及ばなかった2チームがプレーオフ枠(後述)をかけて戦う仕組みです。
他方、カタールで開かれるアジア杯本大会はW杯の出場権と関係ありません。優勝しても予選で敗退(=「8」枠+プレーオフ枠に届かない)したらW杯には出られないのです。
その意味、つまり「26年W杯に出る」限りでは手を抜いてもよさげですけど、そうではないというお話しをします。
アジア枠「8」拡大で日本はまず大丈夫
まず日本はよほどでない限り予選で本大会アジア出場枠「8」は逸すまい=大丈夫という観測から。
前大会の枠は5.5でした。2.5増えたのです。本大会出場チームも32から48へと拡大されます。
日本が本大会初出場した98年大会でアジア枠は「3.5」。最終2グループの1位が通過したのですが、日本はグループ2位で、同じ2位のイランと戦って勝利を収め、念願を果たしました。「ジョホールバルの歓喜」で知られています。順位を付けるならば「3位」。
その前の94年大会のアジア枠は「2」。日本は出場2チームを決める最終予選で「3位」に沈んで切符を逸したのです。世にいう「ドーハの悲劇」。
つまりこの頃の日本でもアジア3位ほどの実力で、出場枠で94年は泣き、98年は笑いました。
その後、実力をつけたサムライ・ブルーは予選を比較的無難に突破していきます。前大会予選は3次予選で決定。
時折取りこぼしてヒヤヒヤさせられても枠が「8」あれば、さすがに「出られない」はなさそうです。油断は大敵だが。
26年大会の変更点
今や日本の目標は「本大会決勝トーナメント(T)での勝利(を重ねる)」あたり。そのためには本大会のグループステージ(GS)突破が必須のところ、26年大会の出場チーム増によって22年大会と状況が変化します。
22年大会は32チームが8つのGSにわかれて上位16チームが決勝T進出、でした。対して26年大会は48チームが12のGSへ振り分けられ、上位2つ×12=24チームと各GS3位のうち上位8チームの計32チームが決勝Tを構成すると改められたのです。
初出場した98年以来、日本の感覚だと「決勝T=16」であったのが倍になりました。その分、GS突破はやさしくなった半面で決勝T初戦敗退では、従前のGS敗退と同じ位置づけになってしまうのです。
最新ランクに基づいてポット分けしたら
そこでアジア杯。GSの構成は今まで通りFIFAランキング上位からポット分けします。このランクへ最も大きな影響を与えるのが同大会の成績なのです。
22年大会の日本は23位だったので23÷8=2.87となって「ポット3」(※注)。最新のランク(23年12月21日発表)では17位だから26年大会はこのままいくと17÷12=1.41となって「ポット2」(※注)。順当に行けば32へ倍加した決勝Tには進めます。
では最新ランクに基づいてポット分けしてみましょう。ランク上位でも各大陸の出場枠から外れたら除き、欧州以外の5大陸の次点5チームと開催枠の北中米カリブ海での次々点1チームの計6チームから「2」を選ぶ「プレーオフ」はランク上位が勝つという仮定です。米・墨・加は開催国でポット1と決まっているのも織り込みました。
【ポット1】(12)
アルゼンチン、フランス、イングランド、ベルギー、ブラジル、オランダ、ポルトガル、スペイン、イタリア、アメリカ、メキシコ(15位)、カナダ(48位)
【ポット2】(12)
クロアチア(10位)、ウルグアイ(11位)、モロッコ、コロンビア、ドイツ、日本、スイス、デンマーク、セネガル、イラン、ウクライナ、韓国
【ポット3】(12)
オーストリア(24位)、オーストラリア、スウェーデン、ハンガリー、チュニジア、ウェールズ、アルジェリア、エクアドル、エジプト、ペルー、パナマ、ナイジェリア
【ポット4】(12)
チリ、カメルーン、コートジボワール、マリ、コスタリカ、ジャマイカ、サウジアラビア、ブルキナファソ、カタール、イラク、アラブ首長国連邦、ニュージーランド
ポット1に相変わらず欧州と南米の強豪が占めそうな一方で、開催国枠の北中米カリブ海の米・墨・加が加わるのが26年大会の特色。カナダと当たればいいなとも思いますが、開催国は実力以上を出しがちだから痛しかゆし。しかもそうなればポット3で欧州勢、4でアフリカ勢かチリあたりと同組になりそう。スウェーデンとチリが一緒となると怖い。
FIFAランキングで現状、最も重要度の高い大会
さてアジア杯。FIFAランキングは「試合の重要度×(試合の結果-期待値)」で計算されていて、アジア杯のような「大陸選手権」本大会の「重要度」はW杯予選よりも大きく、W杯本大会より小さい。ただW杯本大会(22年)の結果は既に現ランクに織り込まれているから現状、最も重要度の高い大会です。
だから間違ってもGS敗退などという失態を犯すとマサカのポット3落ちがないともいえません。としたら本来は同じポット2であったはずのメンバー(アジアを除く)と当たる厳しい環境が待ち受けているのです。
単に勝つだけではダメ
反対に勝ちまくって優勝したら、欧州のW杯予選の結果次第でポット1に届くかもしれません。開催国で3枠も占めるのがつらいところですが。
単に勝つだけではダメです。まず「試合の結果」を90分ないしは120分で勝ちきらないと。そうすれば最高の「1」点。PK戦にもつれると勝っても0.75へ縮んでしまいます。
最後の「期待値」はアジア最高位の日本にとってはオーナス(負担)でしかありません。この係数はFIFAランクが低いほど恵まれるボーナス。PK抜きの勝ちオンリーで優勝すれば気にしなくていいとはいえ、GSで当たるイラク(63位)とインドネシア(146位)は過去に苦杯をなめた経験もありベトナム(94位)もあなどれない。ドローも避けたい。
短期決戦だからこその難しさもあります。注目したいところです。
※注:実際にはランク上位国が予選で敗退する場合もあるので正確な計算ではありません。あくまで目安です。