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予想超えの2億円到達も、もう少しだけ映画ファンからの愛を! ミニシアターへのクラウド支援続く

斉藤博昭映画ジャーナリスト
MOTION GALLERYの「ミニシアター・エイド基金」より

それでも希望は持ち続けようーー。

新型コロナウイルスの感染拡大による緊急事態宣言で、映画館の営業が全国的に止まっているなか、とくに経営存続の危機に瀕するミニシアターをなんとか救いたい。そんな思いから、『淵に立つ』の深田晃司監督、『寝ても覚めても』の濱口竜介監督らが発起人となって、4月13日、クラウドファンディング「ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)基金」がスタートした。

当初の目標は1億円だったが、その額を超え、4月28日、ファンドの総額が2億円を突破した。ミニシアターを愛する人たちの熱い思いが結果となって現れた。

もちろん大手のシネコンも苦境に立たされている。しかし全国各地のミニシアターは、通常営業でもギリギリの利益で運営されているところが多い。一方で、発起人の深田・濱口監督をはじめ、日本映画を代表する監督たちを育て上げ、映画ファンに多様な作品を提供してきたという意味で、ミニシアターは「文化」の重要拠点である。そのミニシアターをなんとか存続させたいという思いがミニシアター・エイド基金に注がれている。

4月20日の時点で、参加劇場数は109、参加運営団体は92となり、ファンドはそれぞれに分配されることになるのだが、現段階の2億円の場合、1参加団体に割り当てられるのは、約220万円。しかし映画館の営業自粛がいつまで続くのか。今はまったく先が読めない状態である。もしオープンしても、上映できる新作がどこまで揃うのか。そもそも観客がすぐに詰めかけるという状況になるまでは、ある程度の時間が必要になる。ミニシアターの維持のために、どれほどの額が必要かは未知数だ。

当初の目標は超えたものの、さらにゴールでの目標額を3億円に見据えて、このミニシアター・エイド基金は5月14日まで続く。

映画監督、俳優からも続々と支援の声が集まっており、4月28日には、日本を代表する俳優の役所広司もメッセージを寄せた。

「日本でもミニシアターを守らなければ、日本映画はどんどん痩せていくと思います。日本映画で活躍する映画人たちはミニシアターで、様々な映画を学び、表現の場を与えられ、育てられ、世界中の映画ファンから高い評価を得ています。そんな監督たちに、私も多様な映画の楽しみ方を教わってきました」(中略)

ミニシアターを愛する人は、すでにこのエイドに参加しているかもしれないが、まだ声が届いていない映画ファンも多いと思うので、ぜひ5月14日までにもう少し拡散してほしいと思う。

賛同の額は3000円から、さまざまなパターンがあり、5000円からは、自分に選んだミニシアターの2022年までの鑑賞チケットがついてくるなど、意外に気軽に応援できるのもメリット。最高額は、なんと500万円! すでに2人が賛同しているというのにも驚く。

このミニシアター・エイド基金と連携する「SAVE the CINEMA」キャンペーンでは、署名活動だけでの参加も受け付けている。ぜひ「声を届けたい」だけの人も協力してほしい。

日本に限らず、各国も同じような状況であり、たとえばアメリカでは、配信サービスで業績好調のNetflixが、ミニシアターへの支援を表明するなど、映画業界全体が垣根を超えて協力するという動きも出始めている。

もちろん現在、明日の生活さえも不安であり、生きるか死ぬかという状況で、「たかが映画」と思う人も多いだろう。しかし「されど映画」である。1本の映画によって人生が変わった人もいるはずだし、この自粛期間、在宅で映画を観て、気分転換する人もたくさんいる。その映画の未来を、少しでも応援すること。一人でも多くの、自宅からのエールが届くことを願いたい。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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