Yahoo!ニュース

梅雨前線が弱まって土用蒸

饒村曜気象予報士
令和2年(2020年)7月21日の予想最高気温

鹿児島県奄美地方の梅雨明け

 令和2年(2020年)は、沖縄地方で6月12日に平年より11日も早く梅雨明けとなりましたが、その他の地方の梅雨明けは遅れていました。

 しかし、7月20日に沖縄地方より1日早く梅雨入りした鹿児島県奄美地方が梅雨明けしました(表)。

表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け
表 令和2年(2020年)の梅雨入りと梅雨明け

 平年より21日遅く、これまでで最も遅い梅雨明けでした。

 統計がとられている昭和26年(1951年)以降で、これまで一番梅雨明けが遅かったのが、平成22年(2010年)と昭和58年(1983年)の7月15日ですので、5日も最遅記録更新でした。

 気象庁の週間天気予報では、梅雨明けをしている沖縄県・那覇と、鹿児島県奄美地方・名瀬は晴れの日が続き、最高気温は連日30度以上の真夏日という予報です(図1)。

図1 気象庁が発表した週間天気予報(数字は最高気温)
図1 気象庁が発表した週間天気予報(数字は最高気温)

 これに対して、東から西日本では、雨や曇りの日が多く、この地方の梅雨明けはまだまだ先のようで、週末はまた大雨に注意が必要です。

 また、ウェザーマップの16日先までの東京の天気予報によれば、傘マーク(雨)は、7月22日と23日だけですが、黒雲マーク(雨の可能性がある曇り)は7月30日まで続きます(図2)。

図2 東京の16日先までの天気予報
図2 東京の16日先までの天気予報

 お日様マーク(晴れ)や白雲マーク(雨の可能性が少ない曇り)が続くのは8月に入ってからです。

 ただ、来週の黒雲マークは、降水の有無の信頼度が5段階表示で一番低いEですので、変わる可能性がありますので、関東の梅雨明けは難しい予測です。

 ただ言えるのは、雨や曇りの日が多い梅雨期間がこれからも続くといっても、これまでの梅雨期間とは違い、晴れ間もあるということです。

土用蒸(どようむし)

 日本付近に梅雨前線が停滞して長雨になっているときは暑さが厳しくないのですが、太平洋高気圧に覆われ、晴天が続くと夏の強い日射を受けて気温が高くなるだけでなく、南の海上から湿った空気が流れ込み蒸し暑くなります。

 これは、昔から言われている「土用蒸(どようむし)」です。

 土用とは、立春、立夏、立秋、立冬の前のそれぞれ約18日間のことを指します。

 令和2年(2020年)は、立秋が8月7日(金)ですので、夏の土用の入りが7月19日(日)、夏の土用明けが8月6日(木)となります。

 そして、この夏の土用の間にある丑の日が「うなぎを食べて夏バテを防ぐ日」になっています。

 それが、今年は7月21日(火)の土用の一の丑の日、8月2日(日)の二の丑の日と、2回あります。

 関東ではうなぎを背開きにして素焼きした後に蒸しますが、土用蒸という言葉と関係があるのかどうかはわかりません。

前線の雨というより大気が不安定の雨

 鹿児島県奄美地方梅雨明けの翌日、7月21日は、日本海北部で発達している低気圧に向かって南海上から暖かくて湿った空気が西日本から東日本に流入する見込みです(図3)。

図3 予想天気図(7月21日9時の予想)
図3 予想天気図(7月21日9時の予想)

 このため、晴れて強い日射があることも加わり、西日本を中心に最高気温が30度を超える真夏日になる見込みです(タイトル画像参照)。

 所によっては、最高気温が35度を超える猛暑日になる予報です。

 今年は、新型コロナウイルス対策としてマスク着用が新しい日常ですので、熱中症には例年以上に厳重な警戒が必要です。

 加えて、湿った暖かい空気が流入している所に、強い日射によって下層が温められると、大気が非常に不安定となります。

 局地的に各地で積乱雲が発達し、短時間強雨や落雷、竜巻などの突風の可能性が高くなります(図4)。

図4 発雷確率の予想(7月21日昼過ぎ)
図4 発雷確率の予想(7月21日昼過ぎ)

 屋外で黒い雲が見えたら、発達中の積乱雲が近くにいますので、素早く安全な建物の中への避難が必要です。

 そして、建物の中では密な状態を避けましょう。

 梅雨前線は7月中旬頃には北海道付近まで北上し勢力が弱まることが多く、そうなると、日本付近は太平洋高気圧(小笠原高気圧)に覆われて梅雨明けとなることが多いのですが、今年はちょっと違った雰囲気です。

 太平洋高気圧が見かけほど強くなく、日本海北部の低気圧によって北上した前線が再び南下し、日本列島上でしばらく停滞する見込みです。

 梅雨前線が北上せずにその位置のまま弱まって梅雨が明ける年は天候不順な夏となりやすいので、梅雨末期だけでなく、梅雨明け後も注意が必要となるかもしれません。

 

タイトル画像、図1、図2、図3、図4の出典:ウェザーマップ提供。

表の出典:気象庁ホームページ。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

饒村曜の最近の記事