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白金大臣役が反響を呼んだ俳優、渡辺真起子。新たな出演作は日本に家のない?監督との出会いから

水上賢治映画ライター
「COME & GO カム・アンド・ゴー」に出演した渡辺真起子 筆者撮影

 大阪を中心に活動しながら、自由きままにといったら語弊があるかもしれないが、世界各国を舞台に映画を作り続けている中華系マレーシア人のリム・カーワイ監督。

 「新世界の夜明け」「恋するミナミ」に続き三度大阪を舞台に描いた新作「COME & GO カム・アンド・ゴー」は、通称「キタ」と呼ばれる大阪の繁華街にたどりついた人々それぞれの人生模様を映し出す。

 キャストは、ツァイ・ミンリャン作品になくてはならない名優である台湾のリー・カンション、日本でも公開された「ソン・ランの響き」のベトナム人俳優、リエン・ビン・ファット、韓国のイ・グァンス、香港のデイヴィッド・シウ、ミャンマーのナン・トレイシーら実に多彩な才能あるアジアの俳優たちが顔を揃えた。

 その中で、千原せいじ、兎丸愛美らとともに日本から本作に参加した渡辺真起子に話を訊く。(全四回)

リム・カーワイ監督と初めて会ったのは東京国際映画祭で

 はじめに渡辺が、リム・カーワイ監督と出会ったのは9年ほど前とのこと。東京国際映画祭でのことだったという。

「そのとき、リム監督は『アジアの風』部門で審査員をされていて、わたしも(東京国際)映画祭に参加していて、人を介して紹介されたんです。

 それで、リム監督は日本語もとてもお上手なので、映画祭期間中、すれ違ったときとかにちょっと立ち話をしたりするようになりました。

 その翌年も、再び東京国際映画祭でご一緒になり、その後もたとえば東京フィルメックスだったりと映画祭の場でよく会うようになりました。

 その中で、どういう映画を撮る予定とか、今度、この映画祭に出品予定とか、映画の話をするようになっていくうちに、お互い人となりみたいなの分かって。

 そういうことが積み重なってなんとなくお互いのことを知っていった感じです」

 リム監督の印象をこう明かす。

「わたしのリム監督の第一印象は、『とにかく感じのいい人だな』と。なんか壁みたいなものがないんですよね。

 リム監督には、ある種の気軽さと親しみやすさがある。その印象はいまもあまりかわらないですね」

日本に家がないときいたときは、「どういうこと?」って思いました

 ちょうど渡辺がリム監督と出会った10年ぐらい前のとき、インディーズ映画周辺の取材をしていると、よくリム・カーワイ監督の話が出てきた。

 家がなくて、いまはどこどこの家に泊まっているとか、よく話に出てきたことを筆者は覚えている。

「そうなんですよね。

 わたしも日本に家がないときいたときは、『どういうこと?』って思いました。

 大阪は知り合いがけっこういるみたいだけど、東京に出てきたときとか『どうしているの?』とか、ちょっと心配にもなりました(笑)。

 考えてみると、逞しいし、タフですよね。

 でも、独特のおおらかさがあって、そういうことを微塵も感じさせない。性格もまったくひねくれていない。

 意外と居そうでいないタイプの人だと思うんです。

 この人間性はどこから来たのかなと考えると、やはりご両親から家族からではないかとわたしは思って。

 いっとき、リムのご実家に行って『旧正月にギョーザを一緒に食べるぞ!』みたいなプランを勝手に立てたりしたことがありました。実現してませんけど。

 なんか人としてすごく信用ができるところが彼にはありますよね」

「COME & GO カム・アンド・ゴー」 舞台挨拶時
「COME & GO カム・アンド・ゴー」 舞台挨拶時

出してもらえるようにプレッシャーを与えていたんです(笑)

 そして、迎えた今回の出演の経緯をこう明かす。

「いつからか『(出演の)チャンスがあったら連絡してね』みたいなことを伝えて、出してもらえるようにプレッシャーを与えていたんです(笑)。

 で、ヨーロッパの方で撮ることになった作品で、お声がけいただいたんですけど、それがどうしてもスケジュールの調整がつかずに叶いませんでした。

 それで、次機会があったら絶対ということで、来たのが今回のお話で。ようやくリム監督作品への出演が実現しました」

 ただ、当初、作品については、自分の出演のことよりもリム監督のことが心配だったという。

「自分でなにからなにまでやっていたから、大丈夫かなと。

 そもそも、これだけいろいろな国から俳優を集めて、それをまとめるのだけでも大変なこと。

 プロデューサーと監督を兼ねて奔走していましたから、『倒れなければいいが』と心配していました」

 ただ、作品に関しては全幅の信頼を寄せていたという。

「初参加ではありましたけど、彼の人となりは知っていて、さきほど言ったように人柄も信用していました。

 なので、リム監督がやりたいことをやりたいようにやればいい。

 そこは信頼して、わたしはリム監督の望むように役を演じられればと思っていました」

(※第二回に続く)

「COME & GO カム・アンド・ゴー」より
「COME & GO カム・アンド・ゴー」より

「COME & GO カム・アンド・ゴー」

監督:リム・カーワイ

出演:リー・カンション、リエン・ビン・ファット、J・C・チー、

モウサン・グルン、ナン・トレイシー、ゴウジー、イ・グァンス、

デイヴィッド・シウ、千原せいじ、渡辺真起子、兎丸愛美、尚玄

ヒューマントラストシネマ渋谷にて公開中。

大阪・テアトル梅田にて12月3日(金)〜、

大阪・シネ・ヌーヴォにて12月4日(土)〜、

京都・京都シネマにて12月10日(金)〜公開。

公式サイト:https://www.reallylikefilms.com/comeandgo

写真はすべて(C)cinemadrifters

映画ライター

レコード会社、雑誌編集などを経てフリーのライターに。 現在、テレビ雑誌やウェブ媒体で、監督や俳優などのインタビューおよび作品レビュー記事を執筆中。2010~13年、<PFF(ぴあフィルムフェスティバル)>のセレクション・メンバー、2015、2017年には<山形国際ドキュメンタリー映画祭>コンペティション部門の予備選考委員、2018年、2019年と<SSFF&ASIA>のノンフィクション部門の審査委員を務めた。

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