ラニーニャ終わる この夏は平常な状態でも
この春、ラニーニャ現象が終息する。今後は平常の状態となる可能性が高い。今年と同様の2018年は台風が5個上陸し、西日本で大きな被害が発生した。また、日本近海の水温が年々上昇していることも懸念材料だ。
ラニーニャ終わる
気象庁は9日(金)、定例のエルニーニョ監視速報を発表しました。ラニーニャ現象は勢力を弱め、この春に終息する見通しです。
今回のラニーニャ現象は2020年夏に発生し、徐々に勢力を拡大しました。ピークは11月から12月で、エルニーニョ監視海域の海面水温の基準値との差は最大マイナス1.2度に達しました。
この規模を比較するために、海面水温の基準値との差が大きいものから順に並べました。最も基準値からの差が大きかったのは1988年6月のマイナス2.0度です。今回は勢力の弱い方から数えて3番目、規模の小さいものとなりました。
12月の寒さに影響
影響はどのくらいあったのでしょう。12月は北日本と西日本で気温が低くなりました。一方、東日本は気温の変化が非常に大きくなったものの、冬全体では暖冬となりました。ラニーニャ現象が発生すると冬は寒くなると言われますが、この冬への影響は限定的だったようです。
この夏は平常な状態に
こちらはこの先の見通しを示した図です。ボックスと呼ばれる、黄色の長四角で示されたところが今後の予測です
海面水温は夏に向けて、少しずつ上昇する様子がわかります。みどり線で描かれた「0.0」が平年値で、これを0.5度超えるとエルニーニョ現象、0.5度下回るとラニーニャ現象です。
予測によれば、この夏はこれらのちょうど間に入り、平常な状態となる可能性が高い(確率70%)です。
同じように、オーストラリア気象局もエルニーニョ/ラニーニャ現象の予測を行っています。最新の情報によると、この夏の終わりまではエルニーニョ/ラニーニャ現象ともに発生する兆しはないとしています。
2018年は台風が5個上陸
エルニーニョ/ラニーニャ現象は地球規模の海洋と大気の運動であるため、長期の天候予測に欠かせません。ラニーニャ現象が終わったといっても、その影響がすぐに消えることはないと考えています。こちらは今年と同じように、ラニーニャ現象が春に終わった年の天候を表にしたものです。
発生数は2018年を除いて、平年(25.1個)を下回りました。気になる上陸数も年による差が大きく、2008年と2000年は上陸した台風がなかった一方で、2018年は上陸した台風が5個に達しました。
西日本で大きな被害が発生
2018年と言えば、9月の台風21号です。1993年以来、25年ぶりに非常に強い台風として上陸し、近畿地方に大きな爪痕を残しました。
そして、2011年の台風12号です。勢力はそれほど強くはなかったのですが、夏台風特有の動きの遅い台風で、長時間にわたり大雨が続きました。総雨量が2,000ミリを超えた紀伊半島では大規模な土砂崩れが川をせき止める=土砂ダムができ、台風が去った後もしばらく影響が残りました。また、避難の在り方が問われ、特別警報創設のきっかけとなったことを思い出します。
日本近海の水温上昇で
近年、温暖化の進行で、日本近海の海面水温が世界と比べて大きく上昇していることがわかってきました。海は大量の熱を蓄えるため、天気に与える影響は非常に大きいです。
例えば、台風が衰えずに日本列島に近づくこと、海が与える大量の水蒸気が日本列島に流れ込み、大雨が増えていることなど、気になる現象が増えていると感じています。
今年も3月は記録的な暖かさとなったため、日本近海だけでなく、北西太平洋全体で、海面水温が平年と比べて高くなりました。気温が高くなれば、海も暖かくなり、海が暖かくなれば、気温も高くなる。気温の上昇が気候という大きな歯車を変えてしまっているように感じています。
【参考資料】
気象庁:エルニーニョ監視速報(No.343)、2021年4月9日
気象庁:海面水温に関する診断表、予報、データ
オーストラリア気象局(BoM):Climate Driver Update、La Nina 2020–21 fades as El Nino–Southern Oscillation returns to neutral、30 March 2021
アメリカ海洋大気局(NOAA):April 2021 ENSO update:spring triathlon、April 7 2021