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打者が一塁の手前で「逆走」し、本塁と一塁の間に挟まれて…。その結果、走者は生還、自身は二塁へ

宇根夏樹ベースボール・ライター
左から、W.クレイグ、J.バイエズ、W.コントレラス、M.ペレス(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 魔術師が、ルーキーを幻惑した。

 5月27日、2死二塁の場面で打席に入ったハビア・バイエズ(シカゴ・カブス)は、三塁を守るエリック・ゴンザレス(ピッツバーグ・パイレーツ)の正面にゴロを打った。ゴンザレスの送球は少し本塁側に逸れ、一塁手のウィル・クレイグはベースから離れて捕球した。とはいえ、数歩下がってベースを踏めば、イニングは終わっていた。

 ところが、クレイグの目の前まで来ていたバイエズが、そこで立ち止まり、方向転換して本塁へ向かって走り出した。それに釣られ、クレイグはバイエズを追いかけ始めた。二塁走者のウィルソン・コントレラスは、本来なら発生しない、このランダウン・プレーの間に三塁を回って本塁へ。バイエズを本塁近くまで追っていたクレイグは、コントレラスに気づき、捕手のマイケル・ペレスにボールをトスした(写真)。

 コントレラスのホームインは、ペレスにタッチされるよりも早かった。それでも、パイレーツは、再び向きを変えて走り出したバイエズを一塁でアウトにすれば、無失点のままイニングを終えることができた。だが、ベースカバーには誰も入っておらず、バイエズと競争するように二塁手のアダム・フレイジャーが走り出した。フレイジャーはペレスからの送球を捕れず――捕球していても、一塁到達はバイエズが先だったと思われる――ボールが外野に転がる間に、バイエズは二塁に達した。

 カブスの選手たちは、ダグアウトで大喜び。なかでも、アンソニー・リゾーは、まさに文字どおり、腹を抱えて笑っていた。

 28歳のバイエズは、「エル・マゴ(魔術師)」のニックネームを持つ。下のツイートにある、ノールック・パスならぬノールック・タグも、その「魔術」の一つだ。

 一方、26歳のクレイグは、昨年8月にメジャーデビューしたばかり。今シーズンも、2週間前まではAAAにいた。この日は、通算出場15試合目だった。

 次の打者のヒットで、バイエズは二塁から生還した。

ベースボール・ライター

うねなつき/Natsuki Une。1968年生まれ。三重県出身。MLB(メジャーリーグ・ベースボール)専門誌『スラッガー』元編集長。現在はフリーランスのライター。著書『MLB人類学――名言・迷言・妄言集』(彩流社)。

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