2024年の宇宙開発を振り返り SLIM月面着陸・スターライナー帰還断念・デトネーションエンジン実証
2024年も様々な宇宙開発に関するニュースがありましたね。本記事では、その中でも注目度の高かった、SLIM月面着陸、スターライナーの軌道上不具合、デトネーションエンジンの宇宙実証についてご紹介します。
■SLIMによる日本初の月面着陸
SLIMはJAXAと三菱電機が開発した月着陸機です。1月20日に月面への着陸に挑戦し、見事成功しました。月へ着陸したのは日本として初めてであり、世界ではアメリカ、ソ連、中国、インドに続き、5か国目に月着陸を成功させた国となりました。さらに、搭載していたマルチバンド分光カメラにより、月面岩石の撮影も十分に行うことができました。
その後、SLIMは4月までに月面での越夜に合計3回成功しています。実は、SLIMは搭載質量やサイズ、消費電力の観点などから、月面での越夜に対応できる設計にはなっていません。また、月面での越夜は技術的に難しいことで知られており、月面の温度差は非常に激しく、日照は約110度、日陰はマイナス170度と、なんと300度近い温度差があるのです。それにも関わらず、SLIMが4月までに3度の越夜に成功するという、歴史的な快挙を成し遂げました。
■スターライナー地球帰還を断念
2024年6月、ボーイング社の新型宇宙船「スターライナー」が打ち上げられ、宇宙飛行士2名がISSへ到着しました。当初、宇宙飛行士は打ち上げから8日後には地球へ帰還する予定となっていました。しかし、様々な不具合がスターライナーに見つかったため、宇宙飛行士の帰還日程は五里霧中となります。
そして、ボーイングは地上で様々な試験を実施し、地球再突入時の安全性を評価しましたが、満足する結果を得ることができず、スターライナーによる宇宙飛行士の地球帰還を断念したことが発表されます。宇宙飛行士は2025年にスペースX社が運用しているクルードラゴンで地球へ帰還することが決定されました。
苦境が続くボーイング社ですが、宇宙事業の売却が検討されている旨も報道されています。売却の検討がされているのは、まさに「スターライナー」です。度重なる不具合から不採算事業の一つとなっており、売却をすればこれ以上の損失を抑止することができると見られています。
■デトネーションエンジンの宇宙実証に成功
11月には観測ロケット「S520-34号機」の打ち上げに成功しました。搭載された実験機器は、ロケットエンジンに変わる画期的な推進装置と期待されている「デトネーションエンジン」です。これは、火炎の速度が音速を超える爆発的な燃焼現象「爆轟」を利用しています。通常のロケットは素早く燃焼する「爆発」を利用していますが、「爆轟」になると音速を超える衝撃波を生み出します。この衝撃波を推進力とすることで、小型軽量、かつ既存のエンジンよりも低価格で安く高速飛行をさせることができるのです。
宇宙空間でも想定通りの推力が得られ、7秒間の飛行に成功しました。今回の宇宙実証に成功したことで、ロケットで使用するエンジンの実用化に大きく近づいたこととなります。さらに、デトネーションエンジンはロケットのみならず、月や火星を行き来する宇宙船用のエンジンとしての応用も期待されているのです。これからの開発が楽しみですね。
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