半世紀ぶり 東京の気温が変わる
気温や湿度、降水量など気象観測を行う場所を露場(ろじょう)といいます。一般的な露場は、人や動物が立ち入らないように柵で囲み、日射の照り返しや雨の跳ね返りを少なくするため芝が植えてあります。
人や動物が立ち入らないように、といいましたが、人里離れた山間部にある観測場所では動物が積雪計の下を通ったために、雪が積もったと誤って記録されたり、雨量計にクモの巣が張り、雨量が計れなかったり。人目が届きにくいだけに様々な苦労があるようです。
50年ぶり 東京の気象観測場所が移転
現在、東京の気象観測は千代田区大手町にある気象庁の構内で行われていますが、今年12月に北の丸公園に移転することが決まりました。東京の観測場所が変わるのは1964年以来、50年ぶりのことです。
これに先立ち、北の丸公園の新しい露場では3年前の2011年8月から試験的に観測が始まっていて、大手町と北の丸公園ではどのくらい気象データに違いがあるのか、調査が進められてきました。
それによると、オフィス街と公園という環境の違いが気温と湿度に大きな影響を与えていることがわかりました。緑が多い北の丸公園では、大手町と比べると気温が低く、湿度が高くなるのです。とくに、最低気温に影響が大きく、平均して1.4℃も低くなることがわかりました。
日本の天気のイメージが変わる?
気温差1.4℃では大した違いではないと思われるかもしれませんが、たとえば、この夏の熱帯夜の日数を調べてみると、大手町は29日、一方、北の丸公園では13日と大きな差がでました。北の丸公園の熱帯夜は大手町の半分だったのです。
ややこしいことに、観測場所が大手町から北の丸公園に移っても、表記は東京のままということ。熱帯夜が29日と13日では東京の暑さのイメージが変わってしまうでしょう。
地図でみれば、わずかな距離ですが、日本を代表する観測地点であるだけに影響が大きい。観測場所の環境が変わっただけなのに、東京が寒くなったと誤解されるおそれもあります。今年の冬は暖冬傾向とされていますが、東京だけは気温が低くなる、奇妙な冬になるかもしれません。
東京(国際地点番号47662)観測場所移転の歴史
<1875年(明治8年)6月1日>
東京都港区赤坂葵町3番地(現在の東京都港区虎ノ門2-10ホテルオークラ付近)で観測が始まる。気象記念日はこれを記念したもの。
<1882年(明治15年)7月1日>
東京都千代田区代官町に移転する。
<1923年(大正12年)1月1日>
庁舎移転にともない、東京都千代田区竹平町1番地に露場も移される。
<1964年(昭和39年)10月1日>
新しい庁舎が現在の東京都千代田区大手町1-3-4に完成し、露場も移転する。現在に至る。
【参考資料】
報道発表資料「地上観測地点「東京」の移転について」:2014年10月3日,気象庁
報道発表資料「東京(北の丸公園)における気象観測施設の完成について 」:2011年7月28日,気象庁観測部計画課
報道発表資料「東京では昨日真夏日の連続が31日となりました」:1995年8月23日,気象庁統計室
東京(北の丸公園)試験観測データ:東京管区気象台