どうも！宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。

今回は「あり得ない場所で起きた大爆発の謎」というテーマで動画をお送りしていきます。

宇宙では、恒星が寿命を迎えたり、天体同士が衝突したりすることで、至る所で突発的な大爆発現象が発生しています。

中には太陽が120億年の一生をかけて放出する総エネルギーを、1年にも満たない非常に短い期間で放出してしまうほど、とてつもなくエネルギッシュな現象が観測されることもあります。

今回は2018年に新たに発見されたばかりで謎だらけな爆発現象「LFBOT」について、最新の発見も交えて解説していきます。

●謎多き大爆発「LFBOT」

「LFBOT(Luminous Fast Blue Optical Transients)」は2018年に初めて発見された非常に新しい大爆発現象で、1年に1回程度の頻度でしか検出されないとても珍しい現象でもあります。

同じく一過性の大爆発現象である「超新星爆発」と比較すると、まずLFBOTの方が青い光で輝き、瞬間的には超新星爆発の10～100倍明るく輝くこともあります。

ただし超新星は数週間から数か月かけて暗くなるのに対し、LFBOTはより短期間で明るさのピークに達して、たった数日で暗くなるため、総エネルギー的にどちらが上かは一概に言えません。

LFBOTは観測例が極めて少なく、明確な発生原因がよくわかっていません。

これまでは渦巻銀河の渦状腕など、大質量の星々や星団が集まる高密度領域でのみ観測されていたこともあり、LFBOTの原因となる現象は大質量星が一生を終える際に起こす「II型超新星」の一種ではないかと考えられていました。

●定説を覆す「フィンチ」

そんな中2023年4月、「フィンチ(The Finch)」と命名されたLFBOTが観測されました。

フィンチは発生した場所が謎過ぎて、世界中の天文学者たちを大いに困惑させています。

実写の画像でも写っているように、フィンチは渦巻銀河とより小さな銀河の2つの銀河の間で発生しています。

具体的には渦巻銀河からは約5万光年、より小さな銀河からは約1.5万光年離れています。

この発生場所はなぜあり得ないと言われているのでしょうか？

超新星を起こすような大質量星の寿命は一般的に数千万年で、恒星としては非常に短く、星が死ぬまでに、生まれた星団から遠く離れた場所まで移動できません。

しかしフィンチが発生した銀河間空間には、大質量星が含まれるような星団が存在しないのです。

よって、LFBOTの発生原因は大質量星が起こす「特殊なII型超新星」であるという、従来有力だった説に矛盾が生じています。

○フィンチの発生原因の新説

フィンチの観測から、LFBOTの原因として新たに2つの現象が候補にあがるようになりました。

まず一つ目は、中間質量ブラックホールによって恒星が破壊された現象であるという説です。

フィンチの発生源は、付近の2つの銀河を取り巻くハローという構造に位置していると考えられています。

銀河のハロー領域には、恒星が数万～100万個単位で集まり重力的に拘束し合うことで球状に集まった星団である、「球状星団」が存在する可能性があります。

一般的に球状星団の中心部には、太陽の100倍～数万倍の質量を持つ「中間質量ブラックホール」があると予想されています。

フィンチは、太陽の100～1000倍の質量を持つ中間質量ブラックホールに星が砕かれることで発生した可能性があるのです。

そしてLFBOTを起こした現象の二つ目の候補は、中性子星同士の衝突（キロノヴァ）です。

この説では、何十億年も前に付近の2つの銀河のうちいずれかから中性子星同士の連星が飛び出し、銀河から遠ざかりながらお互いゆっくりと接近していき、今になって銀河から遠く離れた位置で衝突したと考えます。

中性子星同士の衝突は、白色矮星の爆発現象である「新星(ノヴァ)」の1000(キロ)倍のエネルギーを放つことから、「キロノヴァ」と呼ばれます。

キロノヴァは超新星よりはエネルギーが小さいですが、中性子星の一方が非常に磁力が強い「マグネター」であれば威力が大きく増大し、一般的な超新星の100倍の明るさになることもあり得るそうです。

LFBOTは瞬間的に超新星の100倍明るく輝くことから、このキロノヴァもフィンチを説明する現象の候補の一つに挙げられています。

LFBOTはとにかく観測例が少なすぎるので、今後多くの爆発を検出することで、その謎が解明されていくはずです。