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「スター・トレック」生誕50周年と新作を祝うファンイベントに行ってきた

猿渡由紀L.A.在住映画ジャーナリスト
パラマウント・スタジオで行われたイベント(写真/猿渡由紀)

「スター・トレック」が生まれて、今年で50年。最新作「スター・トレック ビヨンド」の北米公開を2ヶ月先に控える中、米西海岸時間20日(金、)パラマウント・ピクチャーズが、ファンのための大規模なイベントを開催した。このようなイベントが行われるのは、初めてのことだ。

会場に集まったのは、およそ500人。招待客は、なぜ自分がこのイベントに参加するべきかを伝える50秒以内のビデオ映像を送るコンテストを経て選ばれている。ドレスコードは“ビジネスカジュアル”で、「コスチュームは着てこないように」とのお達しがあったためか、コミコンのような雰囲気はまったくない。しかし、スタジオのサウンドステージ内に特別に作られた、宇宙艦隊の内部を模した会場の中に入っていく人々からは、ただならぬ熱気が伝わってきた。

イベントは、サイモン・ペグやゾーイ・サルダナ、「〜ビヨンド」で新しく参加するイドリス・エルバなどが、なぜ「スター・トレック」が好きなのか、また「スター・トレック」に関するどんな思い出があるかについて語るビデオ映像でスタート。

J・J・エイブラムス(左)
J・J・エイブラムス(左)

それが終わると、J・J・エイブラムスと、彼に代わって「ビヨンド」で監督を務めるジャスティン・リンが登場した。「自分は子供の頃から『スター・トレック』のファンだったわけではない」と認めるエイブラムスは、「ジャスティン・リンは、すごく早くから『スター・トレック』のファンで、この世界をとても良く知っていた。彼との会話からは、多くの刺激を受けたよ。彼と仕事ができたのは、本当にラッキーだった」と、リンを絶賛。「撮影現場では、リビングルームにいた3歳の自分をしょっちゅう思い出したね」と言うリンは、「50年も愛されてきたキャラクターたちに敬意を払いつつも、先に推し進めていくのは、とても楽しい経験だった」と振り返っている。

エイブラムスは、ファンがキックスターターで資金集めをし、YouTubeにアップした20分の映画「Prelude to Anaxar」についても言及した。現在、パラマウントとCBSは、この短編映画の製作者に対して著作権侵害の訴訟を起こしているが、近々、スタジオはこの訴訟を取り下げることを発表するはずだと、エイブラムスは語っている。「長年のファンであるジャスティンが、(この訴訟に関して)怒ったんだよ。彼と話し始めると、これはファンに対する正しい姿勢ではないと気づいた。ファンは、『スター・トレック』の世界の一部なんだ。それで僕らはスタジオに、この訴訟をやめるよう説得したのさ」(エイブラムス。)

続いてエイブラムスとリンは、「〜ビヨンド」の世界プレミアが、7月20日、サンディエゴのコミコンにて、世界初のアウトドアのIMAXスクリーンで、ライブのオーケストラを使って行われると発表。このファンイベントに参加した人々は全員このプレミアにも招待されることが伝えられると、会場は大きな歓声に沸いた。

ふたりが退場した後には、代わってクリス・パイン、ザッカリー・クイント、カール・アーバンが登壇。

クリス・パイン(右、)ザッカリー・クイント(左)
クリス・パイン(右、)ザッカリー・クイント(左)

パインは、この3作目について、「ユーモアもあるし、深さもある。最初に思っていたよりも、ずっと奥深い映画に仕上がったと思う」とコメント。ツィッターで送られてきたファンからの質問に対し、クイントは、「この映画に出演して一番楽しいのは、これら共演者と時間を過ごせたこと。もう10年近くも一緒にやってきているんだよ。僕らはこれからもずっと友達であり続けるだろう。この友情は、何よりも貴重だ」と語った。

クイントは、オリジナルのスポックを演じたレナード・ニモイとも親しい関係を築いている。昨年亡くなったニモイに敬意を表し、パラマウントは、オリジナルが撮影されたステージ32のある通りを「レナード・ニモイ・ウェイ」と命名した。

レナードに乾杯
レナードに乾杯

この夜は、その祝福の儀式もあり、ニモイの家族も出席して、ファンたちとともにシャンパンで乾杯をしている。

その後は、新しい「〜ビヨンド」のトレーラーのお披露目があった。まずは、この夜ヨーロッパにいて来られなかったペグが、このトレーラーについて、そして映画について紹介を行う映像を上映。トレーラーが終わると、さらに3つほどのフッテージが上映された。カークが毎日同じ服を着ることにやや不満を見せるユーモアを感じるシーン、カークとボーンズが酒を飲みながら語り合うシーン、最後はアクションのシーンだ。イベントの締めくくりはカクテルパーティ。パーティ会場には衣装や小道具などが展示され、パインらキャストも顔を出している。

パーティ会場にはメモラビアが多数
パーティ会場にはメモラビアが多数

帰り際には、限定版ポスターを含むおみやげが配られた。約束されたとおり、7月のプレミアの招待状も入っている。まさに、ファンにとっては、まさに至れり尽くせりのイベントだったと言えるだろう。大満足したこの500人が押し寄せるプレミアも異常な盛り上がりを見せるのは、間違いない。

「スター・トレック ビヨンド」の北米公開は7月22日。日本公開は秋。

photo by Alex J. Berliner/ABImages
photo by Alex J. Berliner/ABImages
L.A.在住映画ジャーナリスト

神戸市出身。上智大学文学部新聞学科卒。女性誌編集者(映画担当)を経て渡米。L.A.をベースに、ハリウッドスター、映画監督のインタビュー記事や、撮影現場レポート記事、ハリウッド事情のコラムを、「ハーパース・バザー日本版」「週刊文春」「シュプール」「キネマ旬報」他の雑誌や新聞、Yahoo、東洋経済オンライン、文春オンライン、ぴあ、シネマトゥデイなどのウェブサイトに寄稿。米放送映画批評家協会(CCA)、米女性映画批評家サークル(WFCC)会員。映画と同じくらい、ヨガと猫を愛する。著書に「ウディ・アレン 追放」(文藝春秋社)。

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