【七十二候・雷乃発声】白小豆の優しいこし餡と風味豊かな練り切りが織り成す「春の歌」を感じて
【七十二候・雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)】
本日3月31日より5日間を雷乃発声と呼びます。花散らしの雨と申しますように、突然ざぁっと強い雨が降ったり、雷が轟く日もありますよね。
厳しい雨ですが、農作物の成長を促す大切な恵みの雨、すなわち空からの愛情とも受け取る地域もあるようです。
本日は、そんな謂れも交えた和菓子です。
お馴染みの百貨店、高島屋さんの若手バイヤーさん企画。
全国各地の和菓子屋さんへ若手アシスタントバイヤーさんが依頼し、生菓子を製作していただくという企画に巡り合いました。
今回は個人的にも大好きな、風光明媚な富山湾のお膝元に本店を構える「引網香月堂」さんの作品をご紹介。
二つ巴(巴は勾玉や火の玉のような日本古来の模様)が雷太鼓の模様のようにも見えて、今日からはじまる七十二候「雷乃発声(かみなりすなわちこえをはっす)と、春に恵みをもたらすと言われている雨を思い出した次第です。
同時に、こちらに込められた「愛と希望」という意味合いが、「雨は厳しくても愛情となって新芽に希望の息吹を与える」という解釈にも私は捉えました。
優しさと厳しさ。相反していても、どちらも愛情なんですよね。
では早速、お味をご紹介。
「春の歌」は練り切り製・中餡は白小豆のこし餡です。二つ巴の紋に桜の花びらを重ねた春らしい意匠。全体に色づけるのではなく、内側からじわりとにじむような色合いから、いざ成長せんとするような力強さをも感じます。
練り切り餡は白餡の甘味の中にも強かに感じる、山芋のねっとりとした味わいが後半になると頭角を表します。この旨味が、白小豆のこし餡と味わいのベクトルが似ており、美味しさのユニゾンのような上品な味わいに。
ほっとするような、それでいて優雅な逸品です。
4代目引網さんの意匠は、絶妙な引き算がもたらしてくれる想像や読み解く楽しさも魅力のひとつだと思っています。(あくまで個人の見解です)
素敵な企画のお菓子は、日本橋高島屋さん銘菓百選で購入しました。