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桃田に好条件、3年ぶりの世界選手権で進化を証明できるか

平野貴也スポーツライター
好調で3年ぶりの世界選手権を迎える、男子シングルスの桃田賢斗(写真:長田洋平/アフロスポーツ)

 金色に輝くメダルを獲得すれば、全世界に復活と進化を証明する場になる。バドミントンの世界選手権が30日に中国・南京市で始まる。日本の桃田賢斗(23歳=NTT東日本)は、3年ぶりの挑戦で初優勝を狙う。世界選手権は、五輪開催年を除いて毎年開催。桃田は2015年に銅メダルを獲得した。

 しかし、翌年に違法賭博店の利用が発覚して無期限の資格停止処分を受けたため、国際舞台から遠のいた。昨年の5月に復帰を果たした後、強烈な勢いで成績を上げ、世界ランクも上位に再浮上。今大会には優勝候補の筆頭として臨む。初戦は31日、ウクライナの選手と対戦する。

同ブロックの強敵2人が欠場

 男子シングルスは、64選手が出場する。桃田は、大会シードが決まる7月12日付の世界ランキングで第6シードを獲得。早々に強敵と当たることが避けられるようになった。しかも、大会直前になって同じブロックの上位シード選手2人が消えた。準決勝、準々決勝で対戦する可能性があった世界ランク2位のリー・チョンウェイ(35歳=マレーシア)、韓国のエース孫完虎(ソン・ワンホ、30歳=韓国)が欠場したのだ。

 その他の有力候補では、桃田と同じ1994年生まれでジュニア時代からのライバルである長身選手ビクター・アクセルセン(24歳=デンマーク)や石宇奇(シー・ユーチー、22歳)、林丹(リン・ダン、34歳)、シン龍(※シンは、ごんべんに甚。チェン・ロン、29歳)といった中国の強豪選手がいるが、すべて逆ブロックで決勝戦まで対戦の可能性がない。勝ち上がるための好条件が揃った。

 もちろん、油断は禁物。日本代表を率いる朴柱奉ヘッドコーチは「ラッキーではあるけれど、そこまでを勝たないとダメ。ハッピーなイメージで準備をするのは、良くない。それは、私からも(男子シングルス担当の)中西洋介コーチからも桃田選手にハッキリと指示をした。絶対に、ハッピーなイメージを持ってはいけない」と警戒を強めた。むしろ、他の有力選手から「桃田さえ倒せば」とターゲットにされる可能性もある。

 朴ヘッドコーチは、6月のマレーシアオープン1回戦で桃田を敗戦寸前に追い込んだアンソニー・シニスカ・ギンティン(22歳=インドネシア)、続くインドネシアオープン初戦でファイナルゲームまで競ったキダムビ・スリカンス(25歳=インド)の名前を挙げて「まだまだ(強敵は)いる」と強調した。ただ、強敵が減ったことは事実だ。

国際バドミントン連盟の公式サイトでも脚光

 直近52週間における上位成績大会の獲得ポイントで決まる世界ランクでは7位。まだ5人以上の名前がある中で、優勝候補と呼ぶのに違和感を持つ人もいるかもしれない。しかし、桃田は今季、4月のアジア選手権や7月のインドネシアオープンで優勝する過程において、世界ランクで自分より上位の選手にも勝利を収めており、最も勢いがある。BWF(国際バドミントン連盟)の公式サイトにおける男子シングルスのプレビュー記事のタイトルは「SPOTLIGHT ON MOMOTA」だ。

 1年前を振り返れば、トップ選手が格付けの高い大会に出場する中、桃田は世界ランクを282位まで落とし、自費で格下の大会に参加して、コツコツとポイントを稼いでいた。格付けの高い大会でポイントを稼げるようになったのは、今年に入ってから。世界ランク7位は、まだトップに足りない力を示しているのではなく、むしろ、復帰後の勝ち上がりがハイペースであることを示している。

復帰後、初の世界一への挑戦

 3年前の2015年に世界選手権で銅メダルを獲得したとき、桃田は、世界のトップクラスとの距離を詰めている最中だった。同年末には、世界最高峰のスーパーシリーズ成績上位者のみが参加するスーパーシリーズ・ファイナルズで優勝。翌年のリオデジャネイロ五輪は金メダル候補に名が挙がったが、先の事件で出場できなかった。

 すでに直近の大会で実力を実証しているが、世界選手権という大舞台で過去の成績を超えることができれば、資格停止処分前の自身を乗り越えたことを全世界に証明できる。復帰後初の世界一への挑戦。日本は他種目も有力選手を抱えるが、一度キャリアを失いかけた若者の再挑戦は、最大の関心事となる。

スポーツライター

1979年生まれ。東京都出身。専修大学卒業後、スポーツ総合サイト「スポーツナビ」の編集記者を経て2008年からフリーライターとなる。サッカーを中心にバドミントン、バスケットボールなどスポーツ全般を取材。育成年代やマイナー大会の取材も多い。

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