初めての「Awooon!」の充実へ。山下裕史が見るサンウルブズの新スクラム。【ラグビー旬な一問一答】
「Awooon!」
サンウルブズがスクラムを組む時、ホームの東京・秩父宮ラグビー場に集まったファンは狼の鳴きまねをして会場を盛り上げる。チームは国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦し、4シーズン目を迎えている。2月23日には秩父宮でホーム初戦に挑む。相手は優勝経験のあるワラターズである。
サンウルブズの先発右プロップは山下裕史。日本代表として2015年のワールドカップイングランド大会に出場した身長183センチ、体重122キロの33歳だ。今秋は約3年ぶりの代表復帰を果たしている。神戸製鋼所属で、2016年にはニュージーランドのチーフスに入ってスーパーラグビーを経験している。サンウルブズ入りは今季が初。
16日、シンガポール・ナショナルスタジアムでの開幕戦ではリザーブ出場。チームは序盤からスクラムで後手を踏んでいて、シャークスに10―45で敗れた。今回、先発に昇格したベテランにかかる期待は大きいだろう。右プロップはスクラムの最前列で最も相手の重圧のかかる位置だ。
山下は21日、千葉・市原スポレクパークで取材に応じた。
以下、共同取材時の一問一答の一部(編集箇所あり)。
――日本でスーパーラグビーの試合をするのは初めてです。
「ホームで、あのスクラム前の『Awooon!』が聞けるのは嬉しいんじゃないですか。笑うてまいそうですけど。ファンに後押しされてスクラムが組めるので、いいスクラムを組まなきゃいけない」
――初戦、スクラムで苦しむ場面もありました。
「相手あってのことなので、好みの相手、そうじゃない相手と色々あります。ただ出るからには、いいボールをバックスに出すのが仕事だと思います」
――ワラターズのスクラムについて。
「大きい3番(右プロップ)。1番側に流れてくるイメージ。ただ、(サンウルブズは)相手が動き出してから動くのではなく、ヒットでしっかり当たって、ちょっとでも前に出る。こっちから動いて、ワラターズを動かせるようにはしたいですね。向こうは有名どころばかりなので、どこまで通用するか楽しみ。通用しないと、来週出られるかどうかわからないので、1試合1試合、頑張らないと」
――チーム内でのスクラムのコンビネーションは。
「今回、僕の後ろの選手(ロックのトム・ロウ)は初めて(一緒に)やるので、(通常より)プラスで(スクラム練習を)やりました。フッカーも、ジャバ(・ブレグバゼ=今回、2戦連続で先発)とはあまり合わせてきませんでしたけど、きょうの午前中のライブスクラム、午後(の個別練習)でよくはなっています。コミュニケーションが取れれば、相手の癖もわかる(共有できる)」
――ジョージア出身のブレグバゼ選手とのコミュニケーションは。
「ゴリゴリ日本語で、『ジャバ!』言うてね。いつも無口で喋ってくれないので、喋ってくれと言っています。僕にどうして欲しいのか、どこにいて欲しいのか、どう組んで欲しいのか。僕は『こうして欲しい』と言うんですけど、2、3番(フッカーと右プロップ)の繋がりがほつれるとプレッシャーを受けるので。やっぱり8人がひとつになるには1~3番がしっかりコネクトしとかないとだめ」
――今週、どんな立て直しを。
「結果は良くなかったですけど、レビューばっかりしていても。(開幕から休息週まで)8戦続きますし、まだ1戦しか終わっていない。(シャークス戦後の)ロッカーでは、次に向けて前を向こうとは言いましたね。それしかないです。やっていたらずっと勝つなんて、難しい。負けたからと言って全てが終わるわけではない。今週はしっかりいい準備を、と、臨んでいます」
サンウルブズのスクラムは前年までの2シーズン、日本代表も教える長谷川慎スクラムコーチが指導。組み手の8人が低く、小さくまとまるのを肝としてきた。
もっとも今季、長谷川コーチはラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)キャンプに帯同。今秋開幕のワールドカップ日本大会に向け、日本代表候補たちはRWCTSキャンプとサンウルブズのふた手にわかれている。
サンウルブズはニュージーランド出身のマーティ・ヴィールをスクラムコーチに招へい。後列両サイドに入るフランカーの身体の向きなど、長谷川式とヴィール式には異なる点が多い。
双方のアライアンスをどう強化するかについて、サンウルブズでフッカーを務める日本代表候補の坂手淳史は「日本代表のスクラムもいいものをもっている。それを(サンウルブズで)合わせていければよくなると思います。慎さんとコミュニケーションを取っているなかでは、『こっち(サンウルブズ)のスクラムのいいところをもってきて欲しい』とも言われている」と話している。