2、3回のデートでは結婚前提の交際を決められません。(「スナック大宮」問答集その8)
「スナック大宮」と称する読者交流飲み会を東京・西荻窪、愛知・蒲郡、大阪・天満のいずれかで毎月開催している。2011年の初秋から始めて、すでに60回を超えた。お客さん(読者)の主要層は30代40代の独身男女。毎回20人前後を迎えて一緒に楽しく飲んでいる。本連載「中年の星屑たち」を読んでくれている人も多く、賛否の意見を直接に聞けておしゃべりできるのが嬉しい。
初対面の緊張がほぐれて酔いが回ると、仕事や人間関係について突っ込んだ話になることが多い。現代の日本社会を生きている社会人の肌からにじみ出たような生々しい質問もある。口下手な筆者は飲みの席で即答することはできない。この場でゆっくり考えて回答したい。
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「結婚はできればしたいです。結婚相談所に登録したこともあります。でも、お見合い後に2、3回デートしたぐらいでは結婚前提の交際を始められません。男性を好きになりにくい私はどうすればいいのでしょうか。」(40代半ばの独身女性)
世の中には恋愛能力が高い人と低い人の二種類が存在する。「モテるモテない」の分類と重なるところもあるが、完全には一致しない。美男美女で会話上手な人でも、性的な意味で人を好きになりにくい性質や価値観の持ち主であれば、簡単にはカップルにならない。恋愛能力は低いと言えるだろう。
ちなみに筆者は「モテないけれど恋愛能力は高い」と自覚している。自分の年齢の前後15歳(25~55歳)の女性と会うと、3人に1人ぐらいの確率で「自分が独身だったらお付き合いしてみたい」と感じるのだ。この節操のなさが相手にも伝わってしまい、おまけに甲斐性もないのでモテないのだと思う。
恋愛能力が低い人が結婚するための2つの方法
恋愛能力の低い人にとって、自由恋愛が前提の現代日本で結婚するには2つの道しかない。1つは、「生理的に無理な相手でなければ、絶対に断らない」というルールを自らに課すことだ。家同士のお見合いで結婚が決まった大昔に自分だけ戻るという道である。ただし、相手は現代人なので、「別に好きじゃないけれど生理的にはOKなので結婚した」という事実は明かしてはならない。というか、明かしたらそこで関係が終わってしまうだろう。
もう1つは、もう少し現実的な道だ。好きになれそうな独身者とたくさん出会える場を真剣に探し、積極的に参加すること。必要なお金はちゃんと使うべきだろう。自分にとっての「いい男」「いい女」もいるところにはたくさんいるし、いないところにはまったくいないと認識したほうが正解だ。
語弊を恐れずに魚釣りに例えれば、「最近は魚が全然いない。乱獲のせいだ」などと嘆いている人に限って、魚がまったくいない海岸で適当に釣り糸を垂らしているのと似ている。釣る場所を大胆に変えてみたり、船頭さん(お見合いおばさんなどに相当)に頼んで船を出してもらえば、驚くほど大きくて美味しい魚が釣れるはずなのに。
エサなしでは何も釣れない。「モテる人」とは「感じのいい人」
ただし、できるだけ「モテる」人になっておく必要はある。どんなに魚が多い場所でも、適切なエサなしでは何も釣れないのと似ている。心身を健康に保ち、身ぎれいにすることはモテる基本である。女性には必要のないアドバイスかもしれない。同じぐらい大切なのは、「感じのいい大人」であること。これはとても難しい。
抽象的かつ陳腐な表現になってしまうが、謙虚で感謝の気持ちが強い人は「感じがいい」。他人にあれこれ文句をつけたりせず、いいところをすぐに見つけて、出会いに感謝しながら好きになれることだ。
なお、紹介者への感謝も忘れなければ、出会いの頻度と精度は大きくアップする。「結婚相談所は仕事なのだから紹介して当然。イケてない人を紹介されたらクレームをつけてやる」という傲慢な態度では自分が損をする。プロの紹介者も感情を持った一人の人間であることを忘れてはいけない。
「威張らない男性はすべて大好き」と自分に言い聞かせてみる
筆者は残念ながら謙虚な人間ではないが、相手が女性であるだけで「なんだかありがたい。自分にはない柔らかいものを持っている」と感じてしまう。しかも感じがいい大人だったりすると好きになる。もちろん、しつこく口説いたりはしない。だから、直接会った女性から嫌われることは少ないし、ごくたまに好かれることもある。
モテないけれど恋愛能力が高すぎる筆者は、質問者と同じような悩みを抱えている読者に言いたい。「モテないし恋愛能力も低い人」になってはいけない。それでは人生がどんどん寂しくなってしまう。
せめて「感じのいい人」でいることを心がけよう。「威張らない男性はすべて大好き」ぐらいの寛大な所信表明をしたらどうだろうか。その時点であなたは擬似的にでも「恋愛能力が高い人」になっている。出るところに出れば、釣りどころか底引き網レベルの大漁が待っているだろう。その網の中に、本当に好きなタイプの異性が入っている確率は決して低くない。