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藤井聡太挑戦者(19)3連勝か? 豊島将之竜王(31)1勝を返すか? 竜王戦第3局、戦型は角換わり

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 10月30日9時。福島県いわき市「雨情の宿 新つた」において第34期竜王戦七番勝負第3局▲藤井聡太三冠(19歳)-△豊島将之竜王(31歳)戦が始まりました。棋譜は公式ページをご覧ください。

「定刻になりました。第34期竜王戦七番勝負第3局。挑戦者・藤井三冠の先手番でお願いいたします」

 立会人の屋敷伸之九段が声をかけ、両対局者は「お願いします」と深く一礼。持ち時間8時間、2日制の対局が始まりました。

 藤井挑戦者は湯呑を手にしてお茶を口にしたあと、初手、飛車先の歩を突きました。

 藤井挑戦者の今年度成績は驚異の35勝6敗(勝率0.854)です。さらに先手番に限ると、なんと19勝1敗(0.950)です。

 恐ろしいことに、この一年(2020年10月29日-現在)でも27勝1敗(0.964)。この一年の間、先手番で負けたのは、なんと王位戦第1局の豊島戦ただ一度だけ、ということになります。

 一呼吸おいて、豊島竜王もまた飛車の前の歩を一つ伸ばします。両者の対局ではここ6局、相掛かりが続きました。

 3手目、藤井挑戦者は角筋を開きます。以下、両者の対戦としては少し間を置いた形で、戦型は角換わりに進みました。

 両者ともに、攻めの銀を手早く押し出していく「早繰り銀」。27手目、藤井挑戦者は3筋の歩を突いて仕掛けていきました。対して豊島竜王は8筋の継ぎ歩で十字飛車をねらい、反撃していきます。まだ前例のある進行ですが、このあとは一気に激しくなる可能性もありそうです。

 七番勝負はここまで藤井挑戦者の2連勝です。

 第2局の対局場は京都でした。第3局は福島に転戦です。対局がおこなわれるのは詩人・野口雨情(1882-1945)ゆかりの宿。雨情は将棋の強豪で、文壇トップクラスの指し手でした。若い頃には将棋を指して生活の資としていた、という話も伝わっています。

 豊島竜王と藤井挑戦者のこれまでの対戦成績は、豊島9勝、藤井10勝です。

 最初は豊島6連勝でスタートした両者の対戦。この一年では藤井挑戦者が巻き返し、今期竜王戦でついに追いつき、そして追い越したことになります。

 豊島竜王の今年度成績は17勝14敗(勝率0.548)です。

 対藤井戦の3勝9敗をのぞけば14勝5敗。不調というわけではないでしょう。直近では王将戦リーグで永瀬拓矢王座に逆転勝ちする大きな白星をあげました。

 竜王戦第3局のあとには、王将戦リーグでも豊島-藤井戦が組まれています。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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