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大阪桐蔭あと2勝で頂点!  夏の甲子園は準決勝

森本栄浩毎日放送アナウンサー
夏の甲子園はいよいよ準決勝。大阪桐蔭は浦和学院を圧倒し、頂点が見えた(筆者撮影)

 超満員の甲子園の準々決勝は、朝の5時40分に、今から球場に行っても入場できない旨が阪神電車の各駅に告知される「満員通知」が張り出された。2度目の春夏連覇に挑む大阪桐蔭(北大阪)と浦和学院(南埼玉)の大一番が第1試合に組まれたからだ。

大阪桐蔭は浦和学院を圧倒

 試合は桐蔭が、先発マウンドに上がった根尾昂(3年)のアーチで先手を取り、藤原恭大(3年)のソロなどで着々加点。浦学が1点差に迫ると、直後の6回に打者一巡の猛攻で突き放した。桐蔭は藤原の2発など計4アーチを浦学投手陣に浴びせ、投げては根尾から柿木蓮(3年)への継投で11-2と盤石の試合運びを見せた。藤原は、「1本目は苦しい場面で打てた。試合を重ねるごとに、自分の調子もチーム状態も上がっている」と自信に満ちあふれた表情で話した。

金足農は2ランスクイズで逆転サヨナラ

 第2試合は報徳学園(東兵庫)の9回裏の猛追を振り切った済美(愛媛)が、14年ぶりの準決勝進出。日大三(西東京)は、下関国際(山口)の鶴田克樹(3年)に7回2死まで無安打に抑えられていたが、8回のワンチャンスを代打・高木翔己(3年)の同点打と日置航(3年=主将)の勝ち越し打で一気に逆転してうっちゃった。日大三の夏の4強は7年ぶりとなる。最高の盛り上がりを見せた第4試合は、好投手・吉田輝星(3年)の金足農(秋田)が、9回無死満塁から9番・斎藤璃玖(3年)の意表を突く2ランスクイズで近江(滋賀)に逆転サヨナラ勝ちした。吉田は近江から10三振を奪い、4試合連続の二桁奪三振で、同校34年ぶりの4強進出に大貢献した。大阪桐蔭の試合以外は、すべて3-2というクロスゲームで、実力差が紙一重だったことを物語る。準決勝は、休養日を挟んで、金足農ー日大三、済美ー大阪桐蔭の顔合わせで、20日に行われる。

<金足農ー日大三>

金足・吉田は4試合51三振

 準決勝の第1試合は、金足農の吉田と日大三打線のぶつかり合いに注目。吉田は準々決勝までの4試合を完投し、51三振を奪った。

金足農・吉田は今大会4試合すべてで二桁奪三振。しかし準々決勝以降は勝負に徹した投球をしている(筆者撮影)
金足農・吉田は今大会4試合すべてで二桁奪三振。しかし準々決勝以降は勝負に徹した投球をしている(筆者撮影)

近江戦では、変化球も制球でき、メリハリの利いた投球が目を引いた。初戦(鹿児島実戦)の三振はオール直球で仕留めていたが、2戦目以降は変化球も交え、ピンチ以外では平均で10キロくらい直球のスピードを落としている。その証拠が3回戦の横浜(南神奈川)戦の9回。8回に逆転してもらって気合が入り、150キロをマークした。休養日を挟むため、吉田のパフォーマンスが大きく落ちるとは考えにくい。牽制やフィールディングも巧みで、投手としての総合力が極めて高い真のエースだ。

日大三は土壇場で底力

 

 日大三打線は準々決勝で苦しんだ。終盤まで無安打に抑えられていたが、8回の好機は途中出場の飯村昇大(3年)と8番・柳沢真平(3年)が演出したもので、これを2回戦で代打本塁打を放った高木が返す選手層の厚さを見せた。

日大三の日置は主将としての重圧か、打撃は本調子ではない。しかし、準々決勝では8回に決勝打を放った(筆者撮影)
日大三の日置は主将としての重圧か、打撃は本調子ではない。しかし、準々決勝では8回に決勝打を放った(筆者撮影)

そして決勝打は主将の日置が放ち、土壇場での底力を感じさせる。日大三は、投手陣も多彩だ。準決勝の先発は、龍谷大平安(京都)との3回戦で先発した189センチの大型右腕・廣澤優(2年)か。5回を2安打2失点にまとめ、平安に主導権を渡さなかった。奈良大付戦で3回を無安打投球した150キロ右腕の井上広輝(2年)の起用も考えられるが、故障上がりのため、無理させられない。投手陣を支えるのが左腕の河村唯人(3年)。下関国際戦では、あと1点失っていたら敗色濃厚だったが、よく粘った。小倉全由監督(61)は、河村への継投で逃げ切りという青写真を描いているはずで、楽な状態でバトンを渡したい。

金足農は終盤勝負に持ち込めるか

 金足農は、横浜戦が2本塁打で全5得点。近江戦がスクイズで全3得点と大技小技で見事に好投手を盛り立てている。日大三は、早めの継投も考えられるので、金足農は河村が出てくるまでにリードすれば、得意の終盤勝負に持ち込める。

<済美ー大阪桐蔭>

済美は星稜戦でミラクル

 済美は昨年と同じ初日の第2試合に登場し、快勝スタートを切った。苦戦が予想された星稜戦は、大差をつけられたが8回に8点を奪って逆転。追いつかれて突入したタイブレークでは、2点差を1番・矢野功一郎(3年)の逆転サヨナラ満塁弾という春夏甲子園の高校野球史上初の劇的弾で大逆転した。

済美の山口直は、スライダーの制球がよく、粘りの投球が身上。大阪桐蔭を苦しめるか(筆者撮影)
済美の山口直は、スライダーの制球がよく、粘りの投球が身上。大阪桐蔭を苦しめるか(筆者撮影)

スタミナ十分のエース・山口直哉(3年)を温存して臨んだ準々決勝の報徳学園戦は、主将の池内優一(3年)が先発し、5回途中まで1失点と試合を作った。ピンチで報徳の小園海斗(3年)を迎えて山口が救援し、三振に打ち取った。中矢太監督(44)は、「山口が小園君に打たれたら仕方ないと思っていた。チームは想像以上に粘り強く戦えている」と、星稜戦から続くミラクルを準決勝でも生かしたい。準決勝は山口直が先発することになるだろう。

大阪桐蔭の投手起用に注目

 受けて立つ大阪桐蔭は、浦和学院を投打に圧倒した。藤原が言うように、チーム状態は確実に上がっている。高岡商(富山)の好左腕を打ちあぐんだが、残る3校にやりづらい左腕はいないので、打線が沈黙することはなさそうだ。もちろん、金足の吉田が万全の投球をすれば話は違ってくるが、当たるとしても連投となる決勝しかない。

大阪桐蔭は柿木が絶好調。今大会最速の151キロもマークした。西谷監督も、「テンポがよく、しっかり腕が振れている」と成長を認める(筆者撮影)
大阪桐蔭は柿木が絶好調。今大会最速の151キロもマークした。西谷監督も、「テンポがよく、しっかり腕が振れている」と成長を認める(筆者撮影)

鍵を握るのは桐蔭の投手起用だ。決勝まで進むと想定して、準決勝を柿木ひとりに任せるか、準々決勝同様に根尾~柿木の継投策か。北大阪大会から西谷浩一監督(48)は、大事な試合を根尾に任せてきたが、今大会の根尾の調子は万全とは思えない。理想を言えば、準決勝で根尾を温存して、決勝の先発は根尾。最後にエースナンバーの柿木で2度目の春夏連覇を迎えられれば、最高のシナリオに違いない。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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