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200年に一人の天才ボクサーが語った「井上尚弥の勝利」

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
写真:山口裕朗

 現役時代に在籍していた協栄ジムの会長、故金平正紀に「具志堅が100年に一人の選手なら、亀田は200年に一人の天才だ」と評された、元WBAジュニアウエルター級1位、日本同級&日本ウエルター級王者の亀田昭雄が、井上尚弥vs.アラン・ディパエン戦について語った。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 「井上尚弥の芸術性は、相手が強ければ強いほど生きるんです。レベルの高い戦いだからこそ、綺麗なボクシングが見せられる。今回は『リードパンチで倒す』『2年ぶりの日本でのファイトで、ファンの期待に応えたい』と気合が入っていたでしょうね。

 でも、ディパエンのようにガードを高くして、ディフェンスだけ考えている選手には誰だって手こずりますよ。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 打ってこない相手に対しては、セコンドだって『もう、倒さなくてもいい』としか掛ける言葉が無いものです。でも、真吾トレーナーは『打ち合ってカウンターで勝負するか、ボディーを狙え』と指示を出したんですよね。実に的確な指示だったと思います。ただ、ボディーって言っても、ムエタイ上がりはタフですからね。とにかくやり辛かったでしょう……。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 攻めてこない選手に対し、井上は様々なバリエーションのコンビネーションを見せました。それで8ラウンドに仕留めたのですから、勝ったことを評価するのが自然です。

 井上尚弥の名を聞けば、『秒殺』『圧勝』『芸術的な勝利』が思い浮かびますから、それを期待していたファンには肩透かしだったかもしれません。でも、あの相手なら仕方ないですよね。逆にしっかりフィニッシュしたところを僕は称えます。

写真:山口裕朗
写真:山口裕朗

 ノニト・ドネアも先日、レイマート・ガバリョにKO勝ちしましたね。彼も井上尚弥とのリターンマッチを切望しています。僕も両者の戦いは是非、見たいですね。

 ドネアは間違いなく攻めて来ますから、井上も自分の良さが出せますよ。どんな名ボクサーだって、逃げる相手には苦戦を強いられるんです。倒し切れないものです。井上だからKO出来たと思いますね。引き出しが多いんです。

(C)Esther Lin/SHOWTIME
(C)Esther Lin/SHOWTIME

 ボクシングって、勝者より、敗者の方が試合内容を克明に覚えているものです。だからドネアは井上戦を振り返って、調整しているでしょうね。ドネアのことだから頑張るでしょうしね。39歳ながら進歩も見せていますし。

 出て来るドネアに対する井上は強いですよ。本来の彼が見られるでしょう。長いキャリア内でダメージが蓄積されている点を考えれば、やっぱり井上が有利でしょう…。

 ともあれ、彼らのリターンマッチが実現することを切に願います。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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