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初黒星後の生き残りを懸けたサバイバル

林壮一ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属
Esther Lin/SHOWTIME

 デビュー以来、連勝街道を走っていた期待の選手がキャリア初の敗北を経験する。マネージャーやプロモーターは、慎重に再起戦の相手を探すのが常だ。

 16戦全勝6KOでSHOWTIMEが売り出していたクリス・コルバートは、2022年2月26日のWBAスーパーフェザー級タイトル挑戦者決定戦で判定負けした。7回にダウンを奪われる、ワンサイドの内容だった。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20220301-00284184

 12戦全勝8KOだったホセ・ヴェレンズエラも、2022年9月4日のWBCコンチネンタル・アメリカ、ライト級タイトルマッチで3回KO負けした。

https://news.yahoo.co.jp/byline/soichihayashisr/20220913-00313602

 先日、連敗は許されない両者によるサバイバルマッチが実現した。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 試合開始23秒、サウスポーのヴェレンズエラがカウンターの左フックをヒットして早々とダウンを奪う。試合を決めたいヴェレンズエラのラッシュを、コルバートはよく凌いだ。

 両者は激しく打ち合いながらラウンドを重ねる。まさしく一進一退で、非常に見応えのある戦いだった。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 ジャッジは3人とも95-94でコルバートを支持し、ヴェレンズエラは2連敗となった。昨年9月に初黒星を喫したヴェレンズエラは素早く再スタートを切った。放ったパワーパンチの数は117。コルバートの77発を大きく上回っていた。

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 判定に納得できないヴェレンズエラは言った。

 「俺はコルバートを倒した。彼は一度として俺にダメージを与えちゃいない。こっちは1秒1秒を楽しんでいた。勝ったのは俺だ。よりハードなショットで彼を打ちのめした。リングを支配してもいた。自分の力を世界に示したかった。俺はアウトボクシングもできるし、接近戦だって可能なんだ。

 これが現実かよ。応援に駆けつけてくれたみんなに感謝したい。再戦を望む。正々堂々とハードワークしたってのに、こんな風になるなんて......最悪だ」

Esther Lin/SHOWTIME
Esther Lin/SHOWTIME

 勝者も再戦の意志を表明した。

 「聞いてくれ、俺はファンを愛している。彼がリターンマッチを望むなら、そうしようぜ。苦しい試合だったよ。俺は審判ではなく、言い訳をするような人間でもない。男なんだ。男らしく結果を受け止めることができる。

 ヴェレンズエラは負けず嫌いなんだろう。こちらは彼をアウトボクシングし、的確なジャブでポイントを奪った。彼は良いパンチを打ってきたが、やがて止まった。でも、俺はジャブ、ジャブ、ジャブと手数を多く出した。ダウンさせられたが、これは10ラウンドの試合だ。総合的に自分が優っていた」。

 リターンマッチは早々に決まるだろう。この両者は、アルツロ・ガッティとミッキー・ウォードのようなライバルになるかもしれない。

ノンフィクション作家/ジェイ・ビー・シー(株)広報部所属

1969年生まれ。ジュニアライト級でボクシングのプロテストに合格するも、左肘のケガで挫折。週刊誌記者を経て、ノンフィクションライターに。1996年に渡米し、アメリカの公立高校で教壇に立つなど教育者としても活動。2014年、東京大学大学院情報学環教育部修了。著書に『マイノリティーの拳』『アメリカ下層教育現場』『アメリカ問題児再生教室』(全て光文社電子書籍)『神様のリング』『世の中への扉 進め! サムライブルー』、『ほめて伸ばすコーチング』(全て講談社)などがある。

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