村田諒太が再戦のリングへ 王座奪還のポイントとは?
7月12日にエディオンアリーナ大阪で、前WBA世界ミドル級王者の村田諒太(33)と、現チャンピオンのロブ・ブラント(28)が対戦することが発表された。
村田は今回が初の大阪での試合となり、約9カ月ぶりの再起戦がダイレクトのリマッチとなった。
チャンピオンのブラントは、今年2月アメリカで、バイサングロフ(ロシア)をTKOで下し、初防衛に成功している。
チャンピオンと挑戦者の違い
チャンピオンと挑戦者では立場が大きく異なる。挑戦者がタイトルを奪うには、チャンピオンを上回る姿勢が必要だ。
ボクシングは採点競技のため、各ラウンドで優劣をつけ、どちらかにポイントを振り分ける。どっちつかずの際どいラウンドは、チャンピオンに流れる場合がある。
そのため、挑戦者は攻める姿勢を見せて、積極的にポイントを取りにいかなければならない。
今回のような再戦では、お互い手の内を知っているので、戦い方を変える必要も出てくるだろう。
ブラントは、前回と同じ戦い方で、手数と足を使ったボクシングをしてくる可能性が高い。それに対し、村田がどのように戦うかが、キーポイントになる。
ブラントの巧みな戦術
前回の試合では、ブラントの圧倒的な手数に、村田は攻める糸口を見出せなかった。ブラントは、村田の動きをかなり研究していたようだ。
例えば、右のジャブのようなパンチを打つことで、村田の前の手を殺していた。そうなると攻撃の起点となるジャブが封じられ、リズムを崩されてしまう。
また、村田のようなパワー型のファイターは、強いパンチを打ち込んだ後に隙ができやすい。そこを狙って、打ち終わりにパンチを集めてきていた。
それに、ブラントは重量級にしては、手数も良く出て運動量も豊富だ。前回の試合では、ブラントが1262発のパンチを繰り出して356発を的中させ、村田は774発中、180発だったというデータもある。
村田はガードを上げながら前に出てプレッシャーをかけていくのだが、その時にガードの上からパンチを打たせてしまい、相手に勢いづかせてしまった。
勝つために必要なこと
ミドル級ではトップクラスのパワーを持つ村田は、その類い稀ないフィジカルをベースに勝ち続けてきた。
村田のトレーナーにも聞いた事があるが、そのパンチの破壊力は世界でも群を抜いているようだ。しかし、ここ最近はパワーに頼る場面が多かった面もある。
ダウン経験もなく打たれ強いので、肉を切らせて骨を断つスタイルでプレッシャーをかけて、パワーパンチを打ち込んでいた。
今回はより戦術的な工夫が必要になってくるだろう。非常に賢く研究熱心なので同じ戦法では望まないはずだ。
ブラントの運動量と手数を封じるためにも、上下への打ち分けで相手のスタミナを減らし、動きを封じる事が必要になってくるだろう。
今回は1発のパワーに頼るのではなく、戦略を変えて、手数を多く出すこともポイントになってくる。
ミドル級の盛り上がり
ミドル級は世界的にも熱を帯びスターが集まる注目の階級だ。メキシコのスターカネロ・アルバレスを筆頭に強い選手が集まっている。
また、スポーツ動画配信のDAZN(ダゾーン)が次々と大型契約を結び、活気を帯びている。
5月には、WBAスーパー、WBC正規王者のカネロとIBF王者のダニエル・ジェイコブス(アメリカ)の統一戦もある。
そして、元3冠統一王者の帝王と呼ばれたゲンナジー・ゴロフキンが、6月8日に再起戦を行う。全階級の中でもタレントが集まり、世界的な盛り上がりを見せている。
今回の試合に勝ち、再浮上して、ぜひビックマッチにも絡んでいってほしい。
村田も今回の試合に向けて、「ここで負けるようなら価値はないと思う。ジャッジメントされる試合だと思っている」と語っている。
自身の選手生命を賭けて、背水の陣で今回の試合に向かっていくだろう。
日本では、抜群の知名度を誇り影響力もある。アジア人では、難しいと言われてきた重量級のミドル級で、数々の偉業を成し遂げてきた。
プレッシャーも大きいだろうが、日本の多くのファンの前で、復活した村田の姿を観せてほしい。