高校野球の雑談⑦21世紀枠が1減。連敗脱出はいつ?
来春開催される第96回選抜高校野球大会から、出場枠数が再編されるという。これまで「2」だった東北と東海両地区は1枠増の「3」、中国・四国は合わせて「5」だったのを、両地区とも「2」とし、3校選ばれていた21世紀枠も1枠減の「2」。他地区と明治神宮大会枠は変わらず、合計で32校は従来のままだ。主催者によると、
「(神宮枠と21世紀枠で)4は少し多い、という意見があった」
とか。意地悪に裏読みすると、高野連加盟校自体が減少しているいま、21世紀枠の候補にふさわしい学校の「在庫」も少なくなっているのではないか。
そもそも21世紀枠とは、2001年に21世紀が始まったのにちなみ、選抜高校野球大会に新設された出場枠だ。大会を主催する毎日新聞は、
「勝敗にこだわらず多角的に出場校を選ぶセンバツ大会の特性を生かし、技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を以下の基準に沿って選ぶ。少数部員、施設面のハンディ、自然災害など困難な環境の克服・学業と部活動の両立・近年の試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない・創意工夫した練習で成果を上げている・校内、地域での活動が他の生徒や他校、地域に好影響を与えている」
など、一般選考とは違った選考基準を示している。選考において、前年の秋季大会はあくまで参考資料にすぎない。それでも、事実上はセンバツの予選に近いほど秋季大会の成績に重きが置かれるため、夏の選手権とは違う独自性を打ち出そうというものだ。
過去にはベスト4もあったが、ただいま19連敗中
選考過程はまず、各都道府県の高野連が1校を推薦する。都道府県の推薦には一定水準の成績が必要で、参加校数が128校を上回る都道府県では秋季大会ベスト32(12年まではベスト16)、それ以外の県ではベスト16(12年まではベスト8)以上。その推薦校からさらに全国9地区(関東・東京で1地区)で各1校に絞り、選抜選考委員会はその9校から、東日本と西日本1校ずつ、さらに地域を問わずもう1校の3校を選出(07年までは2校、13年は85回記念大会のため4校、21年は前年の明治神宮大会中止となり、神宮枠分を含めて4校)していた。来春からはそれが、07年までの東西から1校ずつの選考に戻る。
出場校の固定化を避ける意味もあって、「出場から、より遠ざかっている学校」が優先して選出されることもあり、過去は公立高校の選出がほとんどで、私立では13年の土佐(高知)が初めて。地域による偏りも大きく、過去に4回選出されている道県があるかと思えば、未出場の府県も13ある。
前出の選考基準をクリアする学校は限られているから、繰り返し候補にあがることもめずらしくない。たとえばこの春に選出された石橋(栃木)は、3回目の候補でようやく選考がかなったが、一度選ばれれば“対象外”となる。21世紀枠の候補校は、年々少なくなっていくわけだ。
甲子園での成績も、かんばしくない。創設初年の01年に宜野座(沖縄)、09年に利府(宮城)が4強入りしたのが目立つが、23年のセンバツ終了時点で、21世紀枠の初戦は14勝47敗(21世紀枠同士の対戦2試合を含む)、通算では20勝61敗。21世紀枠同士の対戦を除くと、15年から連続19校が初戦敗退だ。
それも無理はないか。仮に秋の大会で、都道府県ベスト16か32のチームが選出されたとして、それが他地区の上位と対戦すれば、チーム力に差があるのは否めない。21世紀枠選出年に夏の甲子園に出場したのも、01年の宜野座と、10年の山形中央の2校のみだ。
ただ、22年のセンバツ21世紀枠校・丹生(福井)のような例もある。センバツでは広島商に完敗したが、当時の2年生がその経験を財産とし、自信をつけ、「今度は実力であそこに行きたい」とばかり、この春には初めて県大会を制覇したのだ。福井には敦賀気比、福井商など強敵は多いが、第1シードで福井大会に臨む丹生が、もし代表になったら……21世紀枠の価値が、再評価されるかもしれない。