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[高校野球]来春センバツでは、神奈川、京都、長崎から初の21世紀枠選出なるか?

楊順行スポーツライター
(写真:アフロ)

 来春開催される第97回選抜高校野球大会の21世紀枠選考対象となる推薦校が決まった。9地区の選出は次のとおり。

北海道=釧路江南

東北=久慈(岩手)

関東・東京=横浜清陵(神奈川)

北信越=小松工(石川)

東海=名古屋たちばな(愛知)

近畿=山城(京都)

中国=大田(島根)

四国=高松東(香川)

九州=壱岐(長崎)

 来年1月24日の選考委員会で、この9校から2校が選ばれることになる。

 そもそも21世紀枠とはなにか、おさらいしてみよう。21世紀が始まった2001年、選抜高校野球大会に新設された出場枠で、主催の毎日新聞によると、

「勝敗にこだわらず多角的に出場校を選ぶセンバツ大会の特性を生かし、技能だけではなく高校野球の模範的な姿を実践している学校を以下の基準に沿って選ぶ。

・少数部員、施設面のハンディ、自然災害など困難な環境の克服

・学業と部活動の両立

・近年の試合成績が良好ながら、強豪校に惜敗するなどして甲子園出場機会に恵まれていない

・創意工夫した練習で成果を上げている

・校内、地域での活動が他の生徒や他校、地域に好影響を与えている」

 つまり、一般枠の選考基準とは一線を画すわけだ。一般枠の選考において、前年の秋季大会の結果はあくまで参考資料にすぎないのだが、事実上、センバツの予選といっていいほど、その成績の比重は大きい。そもそもセンバツは、夏とは違う独自性をうたって創設されているのに、それでは夏の選手権と大差ない。秋の成績にさほど拘束されない21世紀枠は、その独自性を象徴するものといえばいいか。

甲子園では大きく負け越し……

 選考のプロセスは、まず、各都道府県の高野連が1校を推薦する。それには一定水準の成績が必要で、参加校数が128校を上回る都道府県では秋季大会ベスト32(12年まではベスト16)、それ以外の県ではベスト16(12年まではベスト8)以上。もし甲子園で顕著な力量差がある相手と当たったとき、試合がしっちゃかめっちゃかになりかねないから、ある程度の水準が要求されるのは当然だろう。

 その推薦校からさらに全国9地区(関東・東京で1地区)で各1校に絞り、選抜選考委員会はその9校から2校を選ぶ。07年までは東日本と西日本1校ずつの2校、それ以降は東西1校ずつに加え、地域を問わずさらにもう1校の3校を選出していたが、昨年から東西を問わず2校に戻った(13年は85回記念大会のため4校、前年の明治神宮大会が中止となった21年も、神宮枠分を含めて4校が選出された)。なお21世紀枠で選出されなかった高校でも、一般選考枠で選出対象となる。

 昨年、枠数が3校から2校に減ったのは、失礼ないい方をすれば少々「ネタ切れ」になったからじゃないか。前出のような選考基準にぴったり当てはまる、お手本のような学校がそうそうあるわけじゃないだろう。加盟校が少ない県ではなおさらで、事実、過去に複数回の都道府県推薦、あるいは今回の釧路江南のように、複数回地区推薦を受ける高校も少なくない。また、出場校の固定化を避けるために「甲子園出場から遠ざかっている学校」も推薦を受けがちだ。

 過去に全国制覇のあるチームにしても例外ではなく、洲本(兵庫)は12年に21年ぶり、桐蔭(和歌山)は15年に31年ぶりに、いずれも21世紀枠として出場を果たした。

 今回選ばれた各地区候補9校のうちでも釧路江南、久慈、小松工、山城、大田の5校には甲子園出場歴がある。北海道を除く46都府県の推薦校を見ても、過去に甲子園出場経験があるのは22校とほぼ半分に達していた。なかには岡山東商、宇都宮工(栃木)のように、過去甲子園でそれぞれ優勝、準優勝を果たしているチームもある。

 21世紀枠創設第1回の2001年大会でも、47都道府県の推薦校中16校に甲子園出場経験があり、全国制覇4回の大体大浪商(大阪)、同じく3回の前出・桐蔭のような超ブランド校もそれに含まれる。もっともこれは導入初年度で、各都道府県も推薦の決め方が手探りだったのだろうが……。

過去に「春夏通じて初出場」が40校

 それでも、導入からほぼ半世紀、たとえば今年の別海(北海道)のように、21世紀枠での選出が初めての甲子園、というチームはこれまで計40校にのぼる(21世紀枠での出場ののち、自力で甲子園出場を果たしたのがそのうち6校)。春夏ともに甲子園が遠かったチームに門戸を広げた意義は、確かにあるようだ。

 ただ、やはり前年の秋季大会上位校とは実力差があるのか、2024年現在で21世紀枠の通算成績は19勝65敗(20年の甲子園交流試合分を含む)。21世紀枠同士の対戦と交流試合を除けば11年、報徳学園(兵庫)に勝った川島(徳島)以来、白星から遠ざかっている。

 導入初年度の01年の宜野座(沖縄)、09年の利府(宮城)が記録したベスト4が、ここまでの21世紀枠の最高成績だ。宜野座は同年夏の甲子園に出場したし(ほかに10年の山形中央も同年夏に出場)、利府はのちに14年夏の甲子園に出場するから、そもそもの力があったのだろう。この例のように、21世紀枠で甲子園初出場後、自力でふたたび甲子園に戻る率は15パーセント。果たしてこれを、高いと見るか低いと見るか……。

 さてさて、来春のセンバツでは、どの2校が選出されるか。個人的には、山城と壱岐あたりが有力とにらんでいる。両府県にとって、もし選出されれば初めての21世紀枠だが、こればかりはフタを開けてみないとわからない。かつては選考会当日、「ここ」と予想されるチームに取材に出向いていたのだが、なぜか空振りに終わることが多かったんだよなぁ。

スポーツライター

1960年、新潟県生まれ。82年、ベースボール・マガジン社に入社し、野球、相撲、バドミントン専門誌の編集に携わる。87年からフリーとして野球、サッカー、バレーボール、バドミントンなどの原稿を執筆。85年、KK最後の夏に“初出場”した甲子園取材は64回を数え、観戦は2500試合を超えた。春夏通じて55季連続“出場”中。著書は『「スコアブック」は知っている。』(KKベストセラーズ)『高校野球100年のヒーロー』『甲子園の魔物』『1998年 横浜高校 松坂大輔という旋風』ほか、近著に『1969年 松山商業と三沢高校』(ベースボール・マガジン社)。

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