社会保険料も「税」である
茂木自民党幹事長の「増税に頼らずやる」とする一方「保険料について検討」との発言が物議を醸しています。
[深層NEWS]少子化対策の財源で茂木幹事長「増税に頼らず」「様々な保険料について検討」(読売新聞 2023年4/4(火) 21:15配信)
日本では、社会保険料と税は異なるものと認識されていますが、賃金が税源という点では社会保険料も税も同じものです。実際、アメリカでは高齢者医療や年金の財源は「給与税(payroll tax)」と呼ばれています。
細かいことを言えば、税には反対給付がないけれど、社会保険料には見合いの給付があるという違いが強調されることもありますが、公的年金制度には消費税が投入されていますし、医療保険では高齢者医療への支援金が存在しています。つまり、日本では社会保険とは言っても名ばかりで、リスクに見合った負担・給付にはなっていないのです。また、一部の識者が理想視するスウェーデンでは社会保障の主な財源は税金です。
総務省統計局「家計調査」で見れば、すでに日本の平均的な勤労世帯家計では社会保険料(67,175円)は所得(実収入617,654円)の11%、所得税(直接税49,445円)は8%と給与にかかる税金は20%となっています(なお、「家計調査」の社会保険料の負担額には企業負担分が含まれていませんから、機械的に計算すれば、実質的には社会保険料負担は22%となります)。
この上、さらに、異次元の少子化対策で所得に負担が上乗せされるわけですから、現役世帯はたまったものではありません。
それでもなお社会保険料を財源に求めるというのは、高齢世代の反対が少ない、ことが一番大きいと考えられます。また、社会保険料の場合、労働者の負担ではない企業負担も存在するので得であるという一種の錯覚によって負担感を少なく感じさせるという狙いもあるとすれば、それは国家的な詐欺ともいえるでしょう。
また、メディアも社会保険料は税ではないかのような政治家、財界人、識者の意見を垂れ流すのはやめるべきでしょう。
筆者は、社会保険料も税なのですから、社会保険料の引き上げは、結婚予備軍、出産予備軍の若い独身者や子なしカップルには、独身税、子なし税として機能するので、少子化が加速する可能性もあると思いますが、皆さんはいかがお考えでしょうか?