Yahoo!ニュース

「高麗人参で学習能力向上」山口県の企業が日本での特許取得 「韓国での“当たり前”を日本でも」

画像はイメージ。2018年の大学入試センター試験時のもの(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

暖かくなっては寒くなり。気温の寒暖差がなかなか厳しいこの折、どうしても体調は崩しがちでは? 

そういう時にこそ高麗人参。

韓国のよいものとして筆者自身も幾度か紹介してきた。現地では高級なブランドの商品の広告に超人気ドラマ「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」の主役を務めた女優パク・ウンビンが出演したことがあり、SNSでこのペーストを口にしている写真がアップされたこともある。

ただこの高麗人参について、個人的には「飲むとメキメキとパワーが湧く」という印象をずっと持っていた。パワフルな国・韓国というイメージからだ。スポーツ選手を取材していても「高麗人参を飲んでいる」という話はよく出てくる。

韓国では”紅参(高麗人参の高級品種)の砂糖漬け”といった食べ方も
韓国では”紅参(高麗人参の高級品種)の砂糖漬け”といった食べ方も写真:イメージマート

しかしこれはじつのところ…じっくりと飲み続けて効果が出るもの。すると血行などが良くなり、「コンディションのアップダウンを少なくする」という効果がある。韓国では政府の食品医薬安全処が認めるところだ。

冬、といえば受験シーズンでもある。これを受験に活用できないか。せっかく勉強を頑張ってきたのに、試験日直前にコンディションを崩して泣く受験生を減らしたい。

そんな掛け合わせの発想から商品を開発してきた山口県の企業が12月22日にプレスリリースを発行した。

「受験当日、実力を100%発揮するためのお守り『528高麗紅参茶 受験王100』が未成年者の学習能力向上のための食品として日本で初めて※特許を取得」

高麗人参で学習能向上? どういうこと? 筆者自身、日々韓国関連の情報にあらゆるアンテナを張って収集しているが、この情報は目立った。年の瀬、受験時期が近づいていることもあり、この会社の社長と、商品開発のアドバイスを行った地元の大学受験予備校の経営者に話を聞いた。

試験日直前のコンディション不調をなんとかしたい

「毎年、受験シーズンの時期に体調を崩して泣く生徒がいるんですよ。長年予備校を経営してきた感覚からすると1割はいますね」

山口県西部で大手予備校「東進衛星予備校」を複数校運営してきた大谷恭孝氏が言う。

「私は受験たるもの、勉強5で体力1人格1の生徒よりも、「オール4」のほうが良い結果を残せると思っています。勉強もさておき、まずは何より体力。そうも思いますよ」

ところが、受験生の保護者の多くは「勉強さえできれば志望校に合格できる」と考える人も多いという。やれ、やれ、やれと春からプレッシャーをかける。するとこの時期、当事者にはガタがくる。ましてや受験シーズンは一年で最もインフルエンザなどが流行る時期でもある。大谷は「結果が残せない子どもたちを見るのは心が痛む」。また予備校経営者としても「エース級の生徒の失敗は経営に響く」。街でよく見かける「●●大学何人合格」はストレートに翌年の生徒の集まりに関係してくるからだ。高麗人参と受験を掛け合わせる手法は「必須」に近いものになっていった。

岡本氏(左)と大谷氏(右)
岡本氏(左)と大谷氏(右)

いっぽうでチョイスジャパン株式会社の岡本昭宏氏は、同じ下関の地で韓国関連の商品を多く扱うビジネスを20年以上展開してきた。韓国海苔に始まり、プデチゲの素、サリ麺(韓国インスタントラーメンの太麺)、ビビンソース…。

「高麗人参」もそのラインナップのひとつだった。

「韓国で言われている効能は知っていたんですよ。韓国政府は正式に血行改善、疲労回復、記憶力・集中力増進などに対する機能を認めています」

これを受験にも活用できないか。地元下関の高校の同級生でもある大谷氏との関係のなかで、ふだんからアイデアをやりとりしてきた。そんななかで誕生したのが同社の商品「受験王」(2018年発売)だった。パッケージは日本語だが、中身の高麗人参パウダーはすべて本場韓国での生産・製造のもの。最高級の品種「紅参(ホンサム)」を使用している。

筆者撮影
筆者撮影

「2013年に政府の規制改革会議にて『新たな食品の機能性に関する検討』が開始され、その後の2015年から弊社では高麗人参の日本での商品化を検討し始めました」(岡本氏)

この商品については、まずはコンディションのアップダウンを防ぐ、という点を訴求してきた。

さらに韓国で言われている『学習能力の向上』も日本で証明したい――。韓国でこそ同国政府のお墨付きで効能を謳ってもよいものだが、もちろん日本は事情が違う。日本は日本で別個証明しなければならない。

2つの実験、論文から特許へ

2018年から試みが始まった。近畿大学との共同研究で「未成年者(13~18歳)の学習能力向上に関する臨床試験」を実施。

2つの方式でそれは行われた。

「簡単な一桁の足し算を10分間行い、その正答数を『受験王』の摂取前、摂取後で比較」

「言語式(A式)と非言語式(B式)を併用し、総合的に知能が測定できる知能検査を行った」

専門用語で言うと前者は「内田クレペリン検査」、後者は「TK式田中AB式知能検査」。ごく簡単にいうと、ホンモノとプラセボ群(形・味を似せた偽物)が分からないように被験者に飲んでもらう実験を行った結果…論文上は「効果あり」と実証された。

しかし、2018年発表の論文内容が特許庁に認められるまでは別の行程があった。5年かかった。「細かい点の指摘をいただき、修正する作業の繰り返しでしたね」。

そしてこの12月に、晴れて「未成年者の学習能力向上のための食品」として日本初の特許を獲得したのだ。高麗人参ならどれでも良い、ということではなく、この「受験王」に使われている高麗人参に効能が認められるということだ。

特許証を手にする岡本氏 筆者撮影
特許証を手にする岡本氏 筆者撮影

でもそれ、味が苦いんじゃない?

岡本氏はこう説く。

「スティックを水の入ったコップに入れて、混ぜるだけ。この数秒でよりよい結果への可能性を高められると思うんです。受験は子どもたち本人がやるもので、保護者の方々がやれる部分は『応援』でしょう。ある意味、出来ることは限られるというお悩みもあるのでは。だからこそ『受験王』を継続的に飲んでいただくことをおすすめしたいんですよね」

とはいえ…こんな悩みもある。

「はっきり言って苦い」。

筆者撮影
筆者撮影

韓国では約二千年に渡り食され、飲まれてきたもの。だからこの風味は当たり前のものになっているのだが。「高麗人参キャンディ」も存在するほどに…。

それでもこの二人には独自の「研究結果」がある。大谷氏は自分の予備校の生徒たちに飲んでもらい、どうすれば日本の若い層にとって飲みやすいのかを「研究」した。その意外な答えは…「オレンジジュースで割って飲む」だった。

「苦みが上手くオレンジジュースに合い、おいしく飲めるようなんです」。

5年来、この商品を受験生に勧めているが、受験シーズンにコンディションを崩す学生が減ってきている印象はあるという。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

吉崎エイジーニョの最近の記事