巨人優勝 MVPは文句なしで菅野智之。もう一人の立役者は私の想像をはるかに超えたあの選手。
本拠地・東京ドームで巨人が2年連続47度目のリーグ優勝を決めた。選手たちが遠巻きにつくった円の中央で原辰徳監督が球団カラーのオレンジ色の手袋をはめたスタッフらの手で宙を舞うシーンが、コロナ禍のシーズンを象徴していた。
首位独走のチームで、MVPを選ぶとしたら智之(菅野投手)しかいない。6月19日の阪神との開幕投手からプロ野球記録を更新する13連勝。優勝したこの日までの防御率は2・05と、残した数字が圧巻だった。オフにフォーム改造に着手。コロナ禍による度重なる延期で、3カ月遅れの開幕までも難しい調整を余儀なくされた。その中で、結果も内容もエースの役割を見事に果たしたと言える。
もちろん、優勝できるチームに総合力は必要なことは言うまでもない。ありきたりの言葉で言えば、4番だけ並べても勝てないし、投手も左右、先発、中継ぎ、抑えとバランスが重要になる。試合に出場したすべての選手の力、もっと言えば監督、コーチ、トレーナーや球団スタッフも含めた裏方の皆さんを含めた総力での優勝という点は書き留めたい。
その上で、MVPとなれば、やはりインパクトだ。
今季は120試合のペナントレースで、通常のレギュラーシーズンよりも23試合少なくなった。智之が開幕から勝ち星を積み重ねてくれたことでチームに勢いを呼び込んだ。
長丁場のペナントレースも、チーム成績を1週間で区切ると、智之の存在の大きさが浮き彫りになる。
移動日などでほぼ試合が組まれない月曜日を除いて1週あたり6試合。智之が毎週1回の先発で確実に白星を挙げてくれれば、チームは残り5試合を3勝2敗で行けば、智之の1勝を足して4勝2敗。貯金を2つ作ることができる。5試合を2勝3敗で負け越しても勝率を5分で乗り切れる。他球団が追随することは難しくなった。
「打の主役」は和真(岡本内野手)が本塁打と打点でタイトル争いをけん引。勇人(坂本内野手)が2000安打へひた走り、丸佳浩選手も気が付けば本塁打王争いに加わるほどに成績を上げた。投手では、私自身は開幕前にテレビでも戸郷翔征投手が活躍しそうだとの趣旨のコメントをしていたが、高卒2年目で先発ローテーション入りと想像を超える働きぶりに驚かされた。
私が昨季に引退する前、戸郷投手の投球を2軍で見ていたときに、多くの会話を交わすことはなかったが、体のバネと腕のしなやかさが魅力に映った。今季は勝っていく中で表情にも自信が芽生えてきた。6月ごろと10月ごろの顔も見比べたら歴然としている。
監督通算9度目のリーグ優勝となった原監督は復帰してから2連覇。「結果を残さなければ、1軍には生き残れない」という厳しい姿勢が良い意味で選手に緊張感を生み、チーム内の競争にもつながった。誰でも、いつでも試合に出る準備への意識を植え付けられているからこそ、控え選手が試合に出ても結果が出ている印象が強かった。