ビッグバンから10億年後の宇宙では時間が5倍も遅く進んで見えると判明!
どうも!宇宙ヤバイch中の人のキャベチです。
今回は「初期の宇宙では時間が5倍も遅れていることが判明」というテーマで動画をお送りします。
シドニー大学とオークランド大学の研究チームは2023年7月、ビッグバンから約10億年後の初期宇宙に存在するクエーサーからの光を観測することで、当時の時間の進みが現在の5倍も遅れていることを明らかにしたと発表しました。
●時間の進みが遅れる!?
光速度が誰から見ても常に一定であるという原理を取り入れたアインシュタインの相対性理論によると、光速に近い速度で移動する物体ほど、時間の進みが遅れます。
光速度が不変であることも、時間が相対的なものであることも明確な事実であり、例えば地球を周回する人工衛星によって地上の私たちの位置情報を測定するGPSも、この「時間の遅れ」を考慮に入れて位置情報を計算しています。
また、この宇宙は膨張しており、遠方の天体ほど地球に対して速い速度で後退していることがわかっています。
ここで相対性理論、宇宙膨張による後退の2つの効果を組み合わせると、「地球から遠方の宇宙にある天体ほど時間が遅れて見える」と導き出せるのです。
これまでも超新星爆発からやってくる光が弱まっていくペースを調べることで、遠方の宇宙における時間の遅れを観測することに成功してきました。
しかし超新星爆発によって時間の遅れを検出できたのは、138億年の宇宙の歴史の半分程度までに限ります。
それ以遠の超新星を検出することは困難であり、よって誕生後間もない宇宙の時間の遅れを検出した事例はありませんでした。
●初期宇宙の時間の遅れの測定に成功!
そんな中、シドニー大学とオークランド大学の研究チームは2023年7月、ビッグバンから約10億年後の初期宇宙における時間の遅れを検出することに成功したと発表しました。
そのために研究チームは、超新星爆発ではなく「クエーサー」からやってくる光を観測しました。
クエーサーは地球から数十億光年以上彼方の超遠方の宇宙に多く見られる、極めて明るい天体です。
超新星爆発のように突発的に輝く天体や現象を除いた、比較的長期にわたって安定して輝き続ける天体としては、クエーサーは「宇宙で最も明るい天体」と言われています。
そのまばゆい光の起源は超遠方にある銀河の中心にある、超巨大なブラックホールに膨大な量の物質が流れ込むことでその周囲に形成される、降着円盤であると考えられています。
ブラックホールの強大すぎる重力により、降着円盤は数十億度という超高温に加熱されており、ブラックホールが属する銀河全体より数百倍以上明るく輝くこともあるそうです。
継続的に輝くクエーサーに共通する変化パターンを見出し、それらを比較して時間の遅れを検出するのは困難なことです。
しかし研究チームは過去20年以上にわたって観測された190個ものクエーサーからやってきた様々な波長の電磁波を調べることで、誕生から約10億年後という、観測史上最も古い宇宙で起きている「時間の遅れ」を検出しました。
具体的に、誕生から約10億年後の宇宙にあるクエーサーの時間の進みは、より最近の宇宙に存在するクエーサーより5倍も遅かったのです。
ここで、「時間の遅れ」は自分から見て異なる速度を持つ物体の時間が遅く見えるというもので、自分自身が感じる時間の進みは常に一定である点に注意が必要です。
つまり現代の地球に住む私たちが遠方のクエーサーを観測すると時間の進みが遅れて見えますが、仮に私たちがそのクエーサーに存在した場合、現代の地球と変わらないペースで時間が経過するように感じます。
今回の研究の意義として、まず時間の遅れの効果を考慮に入れてより詳細なクエーサーの研究が可能になります。
また相対性理論、そして宇宙が膨張しているとするビッグバン宇宙論の正しさを裏付けたとも言えます。