レズビアン役で世界から反響のドラマの続編。菅井友香が「自分の気持ちに正直に冒険を選ぶほうです」
レズビアンが主役の復讐愛憎劇として、1月クールに放送された『チェイサーゲームW パワハラ上司は私の元カノ』。世界的な反響も呼び、続編となる『チェイサーゲームW2 美しき天女たち』がスタートした。前作に続き、菅井友香が中村ゆりかとW主演。再会から次々に降りかかる試練に立ち向かう姿が描かれる。櫻坂46を卒業して間もなく2年。4月から『開運!なんでも鑑定団』のMCを務めるなど活動の幅を広げている中、演技でもさらなる進化を見せてくれそうだ。
一瞬ごとに魂をすべて注入する感覚で
――菅井さんはグループ時代から、つかこうへいさん作品の舞台で主演を務めてきましたが、連続ドラマでは前作の『チェイサーゲームW』が初めて。1クール務めて、得たものはありましたか?
菅井 ドラマ自体が久しぶりでしたので、撮影の流れを思い出しながら、毎日必死でした。作品をどう観ていただけるか、不安でいっぱいでしたけど、ありがたいことに日本だけでなく、いろいろな言語で感想をいただけて。「ゆっかーが樹役で良かった」というお声は自信になりました。
――不安というのは、レズビアンの主人公の受け取られ方ということで?
菅井 それより、自分自身のお芝居に対してでした。まだまだだとは思いますけど、こうして喜んでいただけたのは良かったです。さらに、まさかSeason2まで制作されるなんて。そんな作品にW主演という形で出会えたことが、改めて驚きでした。
――ドラマ撮影のスピード感に戸惑うことはなかったですか?
菅井 同じシチュエーションのシーンを1話から8話まで1日で撮ったり、時間との闘いでもありました。その中でパワハラ要素、恋愛要素と盛りだくさんで、感情の起伏がジェットコースターのようでしたから、すごくチャレンジングでした。舞台とは違う映像作品の難しさがあることを感じました。
――切り替えが必要になると。
菅井 グッと集中して、一瞬ごとに魂をすべて注入していく感覚でした。いろいろ試して、まだ見つからない部分もありますけど、あのスピード感を経験して得たものは大きかったです。
いつか会えるとわずかな希望を持っていて
――続編の話は元からあったわけではないんですね。
菅井 そうだと思います。私の耳には入っていなくて、話をお聞きしてビックリしました。
――Season1は、菅井さんが演じた樹と中村ゆりかさんが演じた冬雨が、別れて1年後に再会したところで終わりました。その空白の1年も2で描かれるそうですが、菅井さんが想像したこともありました?
菅井 2人の思い出のカフェで働いていたら、いつか冬雨に会えると、わずかな希望を持って頑張っていた……という想像はしました。ずっと冬雨を忘れられなかったんだろうなと。
――Season1では冬雨はパワハラ上司として現れて、当初は愛憎劇になっていました。今回は2人が問題を抱えつつも、最初から愛情満載のようですね。
菅井 制作チームの皆さんも反響に応えられるように、最大限の配慮をされているのを、台本を読んで感じました。『チェイサーゲームW』のファンになってくださった方に喜んでいただけるものを……と自分でも考えながら、いろいろ話し合っています。
――つまり、樹と冬雨の関係が深まってほしいという声が多かったと?
菅井 2人の幸せがもっと感じられるところを観たい、というお声をいただきました。それと2人の出会いだったり、Season1ではお見せする時間がなかった部分が、過去の回想シーンで深く描かれています。
キスシーンは数え切れないくらいに
――キスシーンはもう慣れました?
菅井 数え切れないくらい、させていただいたので(笑)。躊躇は最初からなかったです。Season1を経て、しばらく作品に入ってなかった間にも、ゆりかちゃんとごはんに行ったり、いろいろ話したうえで続編の撮影を迎えました。前回とは違う心持ちで余計な緊張感はなく、リラックスして臨めて。樹がリードするシチュエーションが多いので、そういったシーンをたくさん経験されているゆりかちゃんに、相談できたことがありがたかったです。
――今回は、高校時代に樹の家でホームステイをしていたヨルムと冬雨に、取り合いされる立場になって。
菅井 ありがたいことに(笑)。冬雨は樹にとって揺るぎない存在。でも、人格形成に影響を受けたのがヨルム。2人ともすごく大切で、そこはちゃんと伝わるようにしたいと思いました。ヨルムは韓国のインフルエンサーで、日本、中国、韓国と多国籍な作品になるのはワクワクします。ヨルム役のちせちゃんには、合間に「マシッソヨ(おいしい)」といった韓国語をいろいろ教わりました。
――ヨルムは樹にグイグイ来ますよね。
菅井 「好き」とはっきり伝えられたり、カッコいいなと思います。苦労人でもあって、レズビアンであることを自分から発信して、人のために行動できる。そういう姿に私自身も惹かれます。
甘えてくれるシーンで目が合ってドキッと
――改めて冬雨については、菅井さん目線ではどう映りますか?
菅井 ゆりかちゃんが演じる冬雨は、脆くてはかないように感じる瞬間も多いですけど、内には強さを秘めていて。ツンデレというよりツンツンでも(笑)、甘えるときはすごく甘い。感情豊かなところが魅力的ですね。撮影でも甘えてくれるシーンが結構あって、目が合うとドキッとしちゃいました(笑)。
――今回の冬雨はSeason1に比べて、はかなさが目につきます。
菅井 樹がヨルムに翻弄されて、冬雨とちょっと亀裂が入ってしまうシーンもあって。冬雨がいなくなってしまうんじゃないか……と思ったりもするんです。冬雨のほうもいろいろ問題を抱えていて、一緒にいるためにお互い努力しつつも、うまくいかないこともある。このままだと……ってハラハラしますけど、だからこそ2人でいる時間が幸せで大切なんだと感じました。
――同性カップルが住む家とか娘の幼稚園とか、現実的な問題も出てきますが、その辺で何か考えたりもしました?
菅井 どんなに相手を大切だと思っても、それだけではなかなか一緒にいられない現実が、まだまだあるんですよね。時代を経て変わってきてはいますけど、そういう想いを抱えている方のインタビューはたくさんあって。読んでみると、自分の知らなかったことはまだ多かったです。樹もこんなに心が痛かったんだと、演じながら感じました。
気負わず演じられる環境を作ってもらいました
――Season2の撮影に入って、すぐ樹のモードに戻れましたか?
菅井 撮影前に、監督とちせちゃんで集まる時間があって、2人の関係性や台本に書かれてないところでどんなことがあったか、しっかり話し合えました。それが大きくて、自然に撮影に入れて。スタッフの皆さんもほとんど知っている方で、変に気負わず演じられる環境を作っていただきました。
――改めてSeason1を観返す必要もなく?
菅井 期間が空いていたので、ちょっと観返しました。大学時代のシーンなどのリテイクもあったので、繋がるようにしたくて。
――今回は高校時代のシーンも出てきます。同じ人物でも、年齢感など変えている部分もありますか?
菅井 変えるように努めました。背景を考えながら、自分の中ではとてもていねいに演じたところです。高校時代の樹はふさぎ込んでいて、学校に行きたくなくて。自分がどういう人間なのか整理し切れず、葛藤していたのが、ヨルムの支えで吹っ切れたんです。いろいろ話せるようになって、キラキラしていた大学時代。冬雨と一緒に問題を解決していくのが、大人になった現代。16歳から28歳までを行き来しながら、13年間の変化をすごく考えました。
――16歳の高校時代の外見について、気を配ったところも?
菅井 メイクや髪型や服装はスタッフの方々が一緒に考えてくださいました。撮影した学校で高校生の皆さんを見ながら、「こうだったな」と思い出していました。
大変と感じるのは大きな変化をしているから
――このドラマでは人生の選択もテーマになっています。菅井さんのこれまでの人生で、そうした岐路に突き当たったことはありますか?
菅井 9年前にこの世界に挑戦したいと思ったのは、大きな転機でした。人生が大きく変わった瞬間です。
――オーディションを受けたのは、いろいろ考えた末の決断でした?
菅井 勢いで決めたので、悩みはしませんでした。「やっちゃえ!」と飛び込んでしまうタイプではあると思います。自分の気持ちと感覚に正直に動きたくて。周りに相談したり頼ったりもしながら、最終的には冒険を選ぶほうです。
――安定志向ではないんですね。
菅井 そうですね。周りが応援してくださる限り、いろいろチャレンジしていきたいです。そこで学べることもたくさんあるはずと、思い切り行きます。
――結果、それでうまくいっていると。
菅井 やってみたら想像以上に難しかったり、目の前に大きな壁を感じることはたくさんあります。でも、初めて出た舞台の演出家さんが言ってくださった言葉が、今もすごく胸に残っていて。「人生で大変だと感じるのは、大きな変化をしている瞬間だから」という。辛いときこそチャンス。今は大変でも乗り越えたら、全然違う世界が開けると信じて、めげそうになるとその言葉を思い出します。
『なんでも鑑定団』は心からの驚きがあります
――4月からは『開運!なんでも鑑定団』でMCも務めています。何か勉強もしました?
菅井 前任の片渕茜さんがしっかりされていて、意見をズバッと言われて番組を面白くされているように思っていて。私はまた違う方向性かもしれませんけど、いずれそういうふうになれるように、片渕さんの頃の放送を観させていただきました。『なんでも鑑定団』は心からの驚きと発見が多くて、楽しいです。
――魯山人の作品とされた焼物を250万円と予想したら、3000円だったりもしました(笑)。
菅井 あれは絶対いいものだと思って、「3000円かい!」とひっくり返りそうになりましたけど(笑)、そういうことも多いです。いつも本気で悩んで、知らないことだらけだと実感しながら、だからこそ面白くて。長年MCをされている今田(耕司)さん、福澤(朗)さんも純粋に予想を楽しんでいらっしゃいますし、あのトーク力を間近で見られるのも、ありがたい時間です。どこで切り込めるか、毎回チャレンジしています。
好きな作品は役者さんのインタビューも読みます
――前回の『チェイサーゲームW』の取材のとき、「映画やドラマを観るために大きなテレビを買った」とのお話がありました。今もいろいろ観ていますか?
菅井 観る機会を作るようにしています。撮影中は頻繁には観られませんけど、合間やひとつの作品が終わったら、バーッと一気見したり。
――最近で印象的だった作品はありますか?
菅井 『地面師たち』が面白かったです。重厚感があって、綾野剛さんが経年変化をすごく大事にされていて。同じ人物で軸はありつつ、その時々でまったく違う人生のどこにいるのか、はっきりわかりました。インタビューを読んで、どんな役作りをされているのかも学んでいます。映画の『キングダム』を観てから、出演されている山﨑賢人さんや大沢たかおさんの取材記事も読みました。
――ただ作品を楽しむだけでなく、インタビューも読んで、役者として糧にしているわけですか。
菅井 どうやって作られたのか、裏側を知りたいと思うんです。Yahoo!の杉咲花さんの『アンメット』のインタビューも読ませていただきました。役作りのみならず、撮影での心情に触れられていたりするので、すごく参考になります。
乗馬をまた習うために運転免許を取ろうと
――教習所にも通われているそうですね。
菅井 1ヵ月くらい行けてなくて、久しぶりの運転に緊張しています。まとまって通えているときはいい感じですけど、2日空くと、また1からやる気分になってしまうので、1ヶ月も空くとちょっと心配です。期限も迫っているので、早く感覚を思い出さないといけないし、学科の勉強もしなければと思っています。
――免許が取れたらドライブするのが、モチベーションになっていたり?
菅井 できることが増えたほうが何かの役に繋がるかもしれませんし、私も29歳になるので運転はできたほうがいいかなと考えました。もう一度乗馬を習いたいとも思っていて、車のほうが乗馬クラブにも行きやすいので、そのためにも免許は取りたいです。
――『チェイサーゲームW2』の撮影はもう終わったそうですが、この秋に楽しみなことはありますか?
菅井 私はおいもが好きで、現場に干しいもをおやつに持っていったり、朝ごはんにしたりしています。スーパーとかに行って、焼きいもコーナーがポッポーとあったりすると、つい買っちゃいます。
――意外と庶民的なんですね。
菅井 秋はおいもコラボの食品も増えるので、買えるのを楽しみにしています(笑)。
Profile
菅井友香(すがい・ゆうか)
1995年11月29日生まれ、東京都出身。2015年に欅坂46(現・櫻坂46)の1期生オーディションに合格。初代キャプテンを務め、2022年に卒業。主な出演作は舞台『飛龍伝2020』、『新・幕末純情伝』、ドラマ『チェイサーゲームW パワハラ上司は私の元カノ』、『ビジネス婚-好きになったら離婚します-』など。『チェイサーゲームW2 美しき天女たち』(テレビ東京ほか)に出演中。『開運!なんでも鑑定団』(テレビ東京ほか)、『KEIBA BEAT』(カンテレ)でMC。『東京GOOD!TREASURE MAP』(テレビ東京)に出演中。『菅井友香の#今日も推しとがんばりき』(文化放送)でパーソナリティ。
木ドラ24『チェイサーゲーム W2 美しき天女たち』
テレビ東京ほか・木曜24:30~