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永瀬拓矢王座に挑戦するのは誰か? 豊島将之九段、王座戦本戦トーナメント開幕戦で近藤誠也七段に勝利

松本博文将棋ライター
(記事中の画像作成:筆者)

 4月26日。大阪・関西将棋会館において第70期王座戦本戦1回戦▲近藤誠也七段(25歳)-△豊島将之九段(31歳)戦がおこなわれました。

 10時に始まった対局は20時34分に終局。結果は72手で豊島九段の勝ちとなりました。

 豊島九段はこれでベスト8進出。2回戦で丸山忠久九段-飯島栄治八段戦の勝者と戦います。

豊島九段、終盤の読み合いを制す

 永瀬拓矢王座(29歳)への挑戦権を争う本戦トーナメントが、いよいよ開幕しました。

 豊島現九段は2014年の五番勝負で羽生善治王座(当時)に挑戦。2勝3敗で敗退しました。

 以後の挑決では2015年と19年の2回進出し、それぞれ佐藤天彦現九段、永瀬現王座に敗れています。

 近藤七段はまだタイトル戦登場経験がありませんが、いつブレイクしてもまったくおかしくない若手実力者です。本戦進出は2019年(上記表)に続いて2回目となります。

 両者は本局以前に3回対戦し、豊島1勝、近藤2勝という成績が残されています。直近は王位リーグ紅組で対戦し、豊島九段の勝ち。両者は現在、紅組の優勝を争う立場です。

 本局は近藤七段先手で、まずは互いに矢倉を組みます。豊島九段は右四間飛車に構え、互いに銀を引いて角筋を通したあと、豊島九段が仕掛けて戦いが始まりました。

 1図から豊島九段は激しく攻めますが、近藤七段は的確に応じます。近藤七段が反撃に転じたところでは、形勢は近藤よし。しかし豊島九段も頑強に受けて、難しい終盤戦に入りました。

 2図は豊島九段が△6三銀打と受けたところです。龍を逃げるか、それとも飛車を切るか。近藤七段は18分考えて▲3二飛成と踏み込み、決めに行きました。先まで読んでの決断だったのでしょう。しかしどこかに誤算があったのか。進んで3図を迎えます。

 豊島玉は▲3四金△同玉▲3二龍で危ない。しかしそこで△3三角という正確な合駒があり、きわどく詰みません。一方、近藤玉はすでに受けが難しい形です。

 持ち時間5時間のうち、残りは近藤51分、豊島43分。盤面の動きがぴたりと止まったまま、時間が過ぎていきます。

 考えること、46分。近藤七段は次の手を指さずに、そのまま投了を告げました。もちろん3図から指し続けようとすれば手は続きます。しかし勝ちがないと読み切って投げるあたりもまた、上級者らしいといえそうです。業界用語で言うところの「残念棒」が長い形での終局となりました。

 豊島九段が勝ち残ったトーナメント表右側の山は、5月2日に残り3局がおこなわれます。

 左側の山は4月28日に渡辺明名人-服部慎一郎四段戦、5月6日に藤井聡太竜王-大橋貴洸六段戦がおこなわれます。

将棋ライター

フリーの将棋ライター、中継記者。1973年生まれ。東大将棋部出身で、在学中より将棋書籍の編集に従事。東大法学部卒業後、名人戦棋譜速報の立ち上げに尽力。「青葉」の名で中継記者を務め、日本将棋連盟、日本女子プロ将棋協会(LPSA)などのネット中継に携わる。著書に『ルポ 電王戦』(NHK出版新書)、『ドキュメント コンピュータ将棋』(角川新書)、『棋士とAIはどう戦ってきたか』(洋泉社新書)、『天才 藤井聡太』(文藝春秋)、『藤井聡太 天才はいかに生まれたか』(NHK出版新書)、『藤井聡太はAIに勝てるか?』(光文社新書)、『棋承転結』(朝日新聞出版)など。

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