Yahoo!ニュース

クラウドフレアが発信者情報開示訴訟控訴審で敗訴

栗原潔弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授
出店:クラウドフレア社ウェブサイト

「物議を醸している」という表現がぴったり当てはまる米クラウドフレアですが、先日、漫画村に関する発信者情報開示訴訟の控訴審で敗訴し、発信者情報が開示されたとのニュースがありました(参照記事「漫画村問題、クラウドフレアを漫画家が訴えた裁判で逆転勝訴 足掛け4年、”少しでもいい前例になってくれたら”」)。

これは、漫画村に作品を無断掲載されていた漫画家のたまきちひろさんが、クラウドフレアを使用していた発信者の情報を開示を求めた訴訟の控訴審です。ちょっと前にあった、大手出版社が4社がクラウドフレアを著作権侵害の幇助(共同不法行為)で訴えた話とは別の話しです(関連過去記事「クラウドフレアは邪悪なのか?」)。

今回の控訴審の判決文はこちらです(原審の判決文はこちらです)。

原審では、すでに運営者(今さら伏せ字にしてもしょうがいないので書くと星野ロミおよび共犯者)の情報は明らかになっており損害賠償請求等が可能な状況になっているので、改めて発信者情報を開示する必要はないという理由で開示請求が棄却になっていました。それに対して、控訴審では、ちゃんと発信者の住所・氏名も開示せよという判決が下されました(電子メールアドレス、IPアドレス、タイムスタンプについては、既にクラウドフレアが原告に任意開示しています)。

逮捕された漫画村運営者以外にも無断アップロードした人がいる可能性はあるので、ちゃんと情報開示してもらうのは著作権者の当然の権利と言えます。ちょっと原審の判決がおかしかったのではないかという印象です。今回の情報開示によって権利者にどれくらいの利益があったかは不明(住所・氏名が偽りである可能性は十分にあります)ですが、今後、このタイプの訴訟があった場合に、話が迅速に進む可能性が増したという点で意義があるでしょう。

弁理士 知財コンサルタント 金沢工業大学客員教授

日本IBM ガートナージャパンを経て2005年より現職、弁理士業務と知財/先進ITのコンサルティング業務に従事 『ライフサイクル・イノベーション』等ビジネス系書籍の翻訳経験多数 スタートアップ企業や個人発明家の方を中心にIT関連特許・商標登録出願のご相談に対応しています お仕事のお問い合わせ・ご依頼は http://www.techvisor.jp/blog/contact または info[at]techvisor.jp から 【お知らせ】YouTube「弁理士栗原潔の知財情報チャンネル」で知財の入門情報発信中です

栗原潔のIT特許分析レポート

税込880円/月初月無料投稿頻度:週1回程度(不定期)

日米の情報通信技術関連の要注目特許を原則毎週1件ピックアップし、エンジニア、IT業界アナリストの経験を持つ弁理士が解説します。知財専門家だけでなく一般技術者の方にとってもわかりやすい解説を心がけます。特に、訴訟に関連した特許やGAFA等の米国ビッグプレイヤーによる特許を中心に取り上げていく予定です。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

栗原潔の最近の記事