愛犬家の馴染みのフィラリアの予防薬「イベルメクチン」が、新型コロナの新薬に?
オーストラリアのモナッシュ大学の研究チームは、寄生虫感染症の治療薬「イベルメクチン」が、新型コロナウイルスの抑制に効果があったと発表しました。まだ、試験管内の実験ですが、新型コロナウイルスの治療に、光が射すかもしれませんね。
愛犬家には、「イベルメクチン」というとピンとこない言葉かもしれませんが、フィラリアの予防薬といえば、理解してもらえますね。今日は、このフィラリアの予防薬について解説してみましょう。
イベルメクチンって?
ノーベル賞受賞者の大村博士が静岡県のゴルフ場で見つけた土壌の中にある新種の放線菌を基に、米製薬会社メルクと共同研究で開発した腸管糞線虫症の経口駆虫薬、疥癬、毛包虫症の治療薬です。副作用がほとんどなく、耐性を持つ寄生虫が現れないのも特長とされています。
イベルメクチンは、なぜフィラリアの予防薬なの?
イベルメクチンは無脊椎動物(腸管糞線虫症、疥癬、フィラリアなどの寄生虫は無脊椎動物。人、犬、猫は脊椎動物ですね)の神経・筋細胞に麻痺を起こして、無脊椎動物に死に至らせる。
そういう薬理作用があるので、フィラリアの予防薬として使うようになり、犬は寿命が延びました。30年前の犬の寿命は、10年間も生きずに、フィラリア症で亡くなっていた子は多かったです。
フィラリア症とは
フィラリアは、主にイヌ科動物に寄生します。まれに、人にも寄生(世界で80例程度)。
中間宿主である蚊(トウゴウヤブカ) に犬が吸血されて、ミクロフィラリアが血中に侵入。フィラリアの成虫は犬の右心室に存在します。
症状
・咳
・元気がない。
・息が苦しい。
・赤い尿が出る。
・腹部が膨れる。
などがあり、やがて命にかかることになります。
春から犬が内服するフィラリアの予防薬が、新型コロナウイルスの新薬になる可能性があるのです。
イベルメクチンの駆虫薬以外の効果
・HIVやデングウイルスの抑制がある。
イルベメクチンは、ウイルスタンパク質の核内移行が阻害され、エイズウイルスや、デングウイルスの増殖が低下するという報告があります。
Efficacy and Safety of Ivermectin Against Dengue Infection
・アトピー性皮膚炎に効果がある。
イベルメクチンによりアレルゲン特異的T細胞のプライミングおよび活性化する。そして、炎症性サイトカイン産生が抑制する。これらのことで、アレルギー性皮膚炎の炎症症状が改善。
Ventre E et al. Topical ivermectin improves allergic skin inflammation. Allergy. 2017 Jan 4.
イベルメクチンの注意点
ほとんどの犬に、安全にイベルメクチンを使うことができるのですが、以下の犬種の子には、イベルメクチンの副作用が出る場合があります。「MDR1」検査という血液検査をしてください。
・シェットランドシープドック
・コリー
・オーストラリアン・シェパード
・上記のミックス犬
イベルメクチンの副作用
・神経症状(昏睡、麻痺)
・アナフィラキシーショック
・嘔吐
・よだれ
・沈うつ
・昏睡
などが出る子もいますので、イベルメクチンの投与は獣医師の指示の下でしましょうね。
まとめ
初夏になると、日本の犬は、血液検査でフィラリア症になっていないか検査をしてから、フィラリアの予防薬であるイベルメクチンの投与が始まります。そのお馴染みの薬が、もしかしたら、新型コロナウイルスの新薬になるかもしれないと、聞くとなんだか嬉しいですね。
イベルメクチンの登場で、犬は、フィラリア症という心臓に寄生するフィラリアがいなくなり、いまのように長寿になっています。その薬は、寄生虫の駆除だけでなく、ウイルスの抑制もできるかもしれないということなのですね。私の考えですが、猫のFIVという猫免疫不全ウイルス感染症という病気も将来、イベルメクチンで効果があるかもしれませんね。科学が進むと、いままで治すことができない病気が完治できるようになるかもしれません。新型コロナウイルスの治療薬は早く発見・開発されますように。
参考サイト
“The FDA-approved Drug Ivermectin inhibits the replication of SARS-CoV-2 in vitro”,