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ネット通販は当日配達の時代 - アマゾンの挑戦がここまで来た -

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
アマゾンの生鮮食品宅配「Amazon Fresh」の専用トラック(写真:ロイター/アフロ)

米アマゾン・ドットコムは先ごろ、米国の有料プログラム「Prime(プライム)」の会員向けに追加料金なしで提供している即日配達サービスの対象地域を拡大したと発表した。

「午前中の注文で夜9時までにお届け」

このサービスは「Prime FREE Same-Day Delivery」と呼んでいるもので、昨年5月に米国で始めた。そのサービスの内容は、年会費99ドルのPrimeに加入している人が午前中にアマゾンに注文をすると、その日の夜9時までに商品が届くというもの。

また注文する時間が午後だったり、夜だったりした場合は翌日に商品が届くが、いずれの場合も利用者には年会費以外は費用は発生せず、都度の送料は無料という形になる。Prime会員はこれを年間何度利用してもかまわない。

ただし、これには、注文1回当たりの対象商品の合計金額を35ドル以上にしなければならないという条件がある。35ドルに満たない場合は、1回の注文に付き5.99ドルの送料がかかる。

また、この即日配達サービスはPrime会員向けだが、非会員でも利用できる。その場合は注文1回に付き8.99ドルと1商品当たり0.99ドルの送料がかかる。

前述のとおり、アマゾンはこのサービスを昨年5月に米国で始めた。そして同年10月には、対象地域にシカゴ(イリノイ州)、オーランド(フロリダ州)などを加え、合計16の大都市圏でサービスを展開した。

今回は、さらにシンシナティ(オハイオ州)、ミルウォーキー(ウィスコンシン州)、ナッシュビル(テネシー州)、リッチモンド(バージニア州)などの都市圏を加え、ロサンゼルスやサンディエゴ(カリフォルニア州)などでも対象エリアを増やした。

これにより、同サービスは、米国の1000を超える市町村から成る27の大都市圏で利用できるようになった。

テッククランチなどの米メディアはこれについて、米ウォルマート・ストアーズや米ターゲットといった実店舗を持つアマゾンのライバル企業にとって脅威になりそうだと伝えている。

2日間配送は全米で展開、商品種は3000万種以上

アマゾンにはこれ以外にもPrime会員向けの配送サービスがあるが、同社はそのいずれもでサービスの向上を図り、顧客の囲い込みを狙っている。例えば、最短1時間で商品を届ける「Prime Now」は対象地域を米国の約25の都市圏に拡大している。

このPrime Nowでは、昨年9月に同社の本社があるワシントン州シアトルで、レストラン料理のデリバリーサービスを始めたが、今年2月までにその対象地域を7都市へと増やした。

またPrimeプログラムの開始当初から提供していた、商品が2日後に届く「Free Two-Day Shipping」は、大都市や地方を含む全米で展開している。

アマゾンによると、それぞれのサービスでは取り扱い商品数が異なる。例えば、Prime Nowの商品数は数万点、即日配達サービスは約100万点、2日間配送サービスの商品数は3000万超に上ると同社は説明している。

「ダッシュボタン」で数千種の商品を購入可能に

このほか同社はボタンを1回押すだけで商品の注文が完了する小型機器「Dash Button(ダッシュボタン)」の種類を大幅に増やしている。

このDash Buttonは消しゴム大の機器で、それぞれ異なる商品ブランドがプリントしてある。スマートフォン用アプリであらかじめ商品種の詳細と数量を指定しておき、本体前面にあるボタンを1回押すと、アマゾンに注文が入り、その商品が2日後に届くという仕組みだ。

アマゾンはこれまで28ブランドのDash Buttonを提供していたが、新たに78ブランドを追加。これにより、スナック菓子やオフィス用品、ペット用品、乾電池、飲料など数千種に上る日用品をDash Buttonで購入できるようにした。

こちらも米国のPrime会員向けのサービスとなる。

同社はDash Buttonを昨年3月末に発表し、Prime会員を対象に無料で提供していたが、その後有料化し、1台4.99ドルで販売した。現在はDash Buttonで商品を購入した人に、アマゾンの買い物に利用できる4.99ドルのポイントを付けており、Dash Buttonは実質無料となっている。

アマゾンによるとこの機器を使った注文は、過去3カ月で75%以上増えた。現在は1分に1回以上のペースでDash Buttonからの注文が入るという。

JBpress:2016年4月8日号に掲載:オリジナルタイトル「米アマゾンの急ぎ便サービスがライバルの脅威に、今度は即日配達を米国の27都市圏に拡大」)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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