「EDNZ(エブリデー・ノー残業)部下」が急増中! ワークライフバランスの副作用が企業をダメにする
EDLP(エブリデー・ロープライス)じゃなくてEDNZ?
新商品が出たときや、クリスマスなどの祝日、在庫処分をしたいときなど、必要に応じて価格を下げるのではなく、毎日低価格の商品を販売する戦略を「EDLP(エブリデー・ロープライス)」と呼びます。ウォルマートが打ち出したこの考え方は瞬く間に世界へ広がり、今日でも多くのディスカウントショップがこの戦略を採用しています。
同じように、月末の繁忙期や、突発的な仕事が入ってきたとき、想定外の顧客からのクレームが出たときなど、必要に応じて残業をするのではなく、とにかく毎日時間外労働はしない働き方を「EDNZ(エブリデー・ノー残業)」と名付けました。
体制を整え、ルールとして整備もされた「EDNZ組織」、もしくは、「私の責任で、全員必ず残業ゼロで退社してもらう」と高らかに宣言するような「EDNZ上司」ならいいでしょう。
しかし、そのような風土もルールもないような組織で、勝手に「毎日ノー残業」を主張する「EDNZ部下」は困りものです。
「EDNZ(エブリデー・ノー残業)」は目指すべきだが
今の日本社会において長時間労働の是正は極めて重要な課題です。昔ながらの働き方を変える――いわゆる「働き方改革」をしなければ、少子高齢化による労働力人口の減少や、グローバル化の進展による国際競争に打ち勝つことはできません。
これから若く優秀な人財を採用するためにも、残業しない・させない文化を組織に定着させる必要が、どの企業にもあります。
ところが現場に入ってコンサルティングしていると、このような風潮に過剰反応し、仕事があるのに残業せず帰る部下(EDNZ部下)が増えているという現実に直面することがあります。
近年、仕事と生活との調和を意味する「ワークライフバランス」は、ますます重要なキーワードとなっています。しかし「ワークライフバランス」を実現したら結果が出る、などという発想は、恒常的に結果を出したことがない人の発想です。
仕事があるのに残業しない部下たち
1日の中で完結するような仕事ならわかりやすいでしょう。「ここまでやらないと帰れない」ことが明確だから、決められた退社時間から逆算して仕事をするはずです。ムダなく、集中して仕事を仕上げようと頑張ることでしょう。いっぽう、期限が曖昧であったり、締め切りが1週間後や1ヵ月後といった仕事なら、ムリして早めに取り掛かる必要はなく、理論上先送りできます。
そのような仕事ばかりのホワイトカラーは、どうしても作業密度が低くなりがちです。優先順位を考えずにメールチェックしたり、ネットサーフィンしたり、それほど必要のない打合せや会議を繰り返したり……。
任された作業に正しい優先順位をつけて、自律的に処理するためには、それなりの訓練が必要です。その訓練に役立つのは「逆算思考」です。いつまでに、この作業をどこまでの状態に持っていけばいいのかは、自分で決めることではありません。その作業を任せた上司やお客様が決めることです。
どの状態にまで仕事の精度を上げなければならないかは、作業によって違いますし、やってみなければわからない作業も多い。(はじめから予測できてマニュアルに記述できるような作業は今後、RPAなどのロボット技術が処理してくれることでしょう)
したがって間違いを繰り返し、上司やお客様に叱られながら、「逆算思考」を体で覚えていくしかないのです。想定外のことも「想定内」にできるように、先回りの感覚を身につけるためには、どうしても必要なプロセスなのです。
このように「逆算思考」が身についていない状態で「想定外」の作業があらわれたときは、「想定外」の作業時間を確保するのは仕方がないことです。
したがって何がなんでも「ノー残業」という姿勢は、時と場合によって、組織の空気を悪くする要因になりかねません。これはホワイトカラーに集中して起こる問題です。
「残業はしてほしくないけど、今日やるべきことが残っているなら残業してでも今日じゅうにやれよ!」
このような心の叫びを上司がしないよう、「EDNZ部下」には空気を読んでもらいたいですね。