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羽生結弦さんの妻は中国人!?中国でデマが拡散される

中島恵ジャーナリスト
羽生結弦さん(写真:YUTAKA/アフロスポーツ)

9月20日、プロフィギュアスケーターで五輪2連覇を達成した羽生結弦さんの話題が中国のSNS、微博(ウェイボー)で一時検索ランキングの4位に躍り出た。理由は同日、ネットで公開された日本の雑誌メディアの記事がきっかけだった。

誤解を生んだ「中国地方」という言葉

同記事では羽生さんの結婚について、「新妻の地元新聞社が名前を出して報道した」とあり、そこに「A子さんの故郷である中国地方の地元新聞社が、大々的に結婚を報じた」、「A子さんの亡くなった父親が中国地方の有力建設会社の社長であった」などと書かれていたのだが、この「中国地方」という言葉が中国で誤解を呼ぶことになったのだ。

中国のSNSでは「日本メディアが羽生結弦の妻は中国人と報道」というデマが拡散され、ウェイボーでこの話題が急上昇した。

すぐさま日本をよく知る複数の中国人が「あれは日本の中国地方のことだよ。広島、岡山、山口、鳥取、島根のことで、日本ではこう呼ぶ。中国とは関係ない」と訂正したが、デマは次々と拡散されてしまった。

中には悪乗りして「結婚相手は、実は私なの」「中国人と結婚?うれしい」などとコメントして、さらにデマを拡散する動きもあり、ウェイボーの同記事関連の閲覧数は約4億回に上った。

中国での羽生さんの人気は絶大だ。とくに人気が爆発したのは2022年、北京冬季オリンピックのとき。五輪開催前から大きな話題となり、ウェイボーのファンによるアカウントのフォロワー数は開催前の200万人から270万人にまで増加(現在は約280万人)。練習風景までも大きな話題になった。

とくに10代、20代の若い女性の人気が高く、「スケーティング技術やルックスだけでなく、柚子(中国語の愛称)の礼儀正しさ、謙虚さ、人柄がすばらしい」と言われ、8月の結婚発表の際も、日本とほぼ時差なく報道され、ウェイボーで1位になった。デマが広がった20日はちょうど「ANA×羽生結弦」という一問一答のインタビュー映像が公開された日でもあったが、その動画をシェアする人も多かった。

デマは日常茶飯事

また、羽生さんのデマが広がった20日は、中国で人気のインフルエンサー、「口紅王子」こと李佳琦さんのライブコマース上での視聴者に対する「傲慢発言」による影響で、中国の有名化粧品ブランド「花西子」が公式に声明を発表したことが大きく報道された日でもあった。

声明文には、「花西子」は中国・杭州で創業した中国企業で、化粧品の開発、製造ともに中国国内で行っていると書かれていたが、これは「日本ブランドではないのか」とのデマが流れたことに対する対応だった。李氏の発言による炎上で、李氏の過去の動画を掘り返す人がいたが、その中に、李氏が日本にある「花西子」の研究センターについてレポートする場面があったからだ。

中国のSNS上では、意図的に、あるいは誤解が原因で、デマが日常的に流れており、社会問題にまで発展するケースも少なくない。

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ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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