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邦人女性がスパイ罪で中国で実刑、服役が判明 一方、日本政府は中国人富裕層に10年の観光ビザ発給

中島恵ジャーナリスト
(写真:アフロ)

12月30日、共同通信は「中国当局が2015年に邦人女性を拘束した際、日本国内での行動についてスパイ罪を適用していたことがわかった」と報道した。

同報道によると、この女性は60代で、2012~2013年に在日中国大使館の関係者と複数回にわたり面会。沖縄県・尖閣諸島を巡る件について意見を聞き取り、それを日本政府関係者2人に伝えたという。その後、上海出張中に逮捕された。上海の高級人民法院は2019年2月の判決でスパイ罪が成立すると認定。女性は懲役6年の実刑判決を受け、服役した。

邦人の日本での行動に対するスパイ罪の適用が判明したのは初めて。日本政府は事態を把握していたが、公表していなかったという。

これに対し、日本のSNSでは「中国から日本に帰化した中国人女性なのではないか?」「この報道だけでは不十分。詳細をもっと知りたい」「10年前の話がなぜこれまで公表されてこなかったのか」などの怒りや不安の声が上がっている。

同報道を受けて調べてみると、2015年10月11日の中国メディア「環球網」に「50代の民間人の女性が今年6月に上海市内でスパイ容疑により身柄を拘束された。この女性は元中国籍でのちに帰化して日本国籍を取得しており、女性の親族は今も中国で生活している」との記事があった。この記事の女性が今回判明した女性かどうかは不明だが、時期は合致している。

日本政府は訪日中国人向けビザを緩和

一方、12月25日、日本の岩屋毅外務大臣は、「人的・文化交流は日中両国の協力と連携を具体化する重要な要素」と述べ、中国人観光客向けのビザの発給要件の緩和を発表した。日本人の短期訪中ビザが免除となったことに対応してのものだ。

具体的には、富裕層への数次ビザを現在の5年から10年に延長するほか、団体観光客の滞在日数も現在の15日から30日に延長する。ほかに65歳以上の人には在職証明書の提出を不要にするなどの項目がある。

日本外務省は準備ができた項目から順次実施していくとしているが、日本では今年、靖国神社の石柱に中国人が「トイレ」と落書きした事件や、中国人インフルエンサーが日本の市町村の議会に無断侵入したり、小学生の登下校の様子を写真や動画に撮ってSNSに投稿したりする事件が相次いでおり、中国人の来日のハードルを下げることに対して不安が広がっている。

ジャーナリスト

なかじま・けい ジャーナリスト。著書は最新刊から順に「日本のなかの中国」「中国人が日本を買う理由」「いま中国人は中国をこう見る」(日経プレミア)、「中国人のお金の使い道」(PHP新書)、「中国人は見ている。」「日本の『中国人』社会」「なぜ中国人は財布を持たないのか」「中国人の誤解 日本人の誤解」「中国人エリートは日本人をこう見る」(以上、日経プレミア)、「なぜ中国人は日本のトイレの虜になるのか?」「中国人エリートは日本をめざす」(以上、中央公論新社)、「『爆買い』後、彼らはどこに向かうのか」「中国人富裕層はなぜ『日本の老舗』が好きなのか」(以上、プレジデント社)など多数。主に中国を取材。

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