同時流行時の「常備薬」服用に注意を 解熱鎮痛薬で起こる喘息発作・じんま疹
世の中の薬には、人によって合う・合わないがあります。これらは、なかなか事前に予測することが困難です。さて、現在政府は新型コロナとインフルエンザの同時流行に備えて、解熱鎮痛薬の常備を呼びかけていますが、服用時に注意が必要な人がいます。
解熱鎮痛薬の種類
解熱鎮痛薬は読んで字のごとく、解熱作用と鎮痛作用のある薬剤です。いずれの薬も両方の作用を持っています。代表的な解熱鎮痛薬は、アセトアミノフェンと非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs:エヌセイズ)です(表1)。
どちらも薬局で市販されていますが、作用メカニズムや効果に差があります。一般的にアセトアミノフェンのほうが副作用の観点から使いやすいとされています。
最近は、バファリンプレミアムDXやバファリンルナiのようなアセトアミノフェンとNSAIDsの合剤が誕生しています。
歯磨き粉で喘息発作を起こす人は注意
ロキソプロフェンやイブプロフェンといったNSAIDsを服用してから、1時間以内に、鼻汁・鼻閉、咳、息苦しさなどの過敏症状が出現することがあります。
これを「アスピリン喘息」または「NSAIDs過敏喘息」などと呼び、成人喘息の7~10%が該当すると言われています(1,2)。そのため、喘息発作を起こした患者さんを診る場合、必ず解熱鎮痛薬を飲んでいないか問診します。
一方、じんま疹型の過敏症状もあります。慢性じんま疹がベースにあり、じんま疹や血管浮腫(まぶたや唇が腫れる)が服用によって誘発されます。
コロナ禍で、ワクチン接種後の発熱を抑えるため、市販のNSAIDsを服用した患者さんが喘息発作を起こして受診したことがあります。小児喘息の経験がある40代の女性で、初めて解熱鎮痛薬を飲んだそうです。
話を聞いてみると、歯磨き粉や一部香辛料で咳が頻繁に出るということでした。実は、歯磨き粉・ミント・アルコール・香辛料などで発作を起こす患者さんは、高い確率でNSAIDsに対して過敏症状を持つことがわかっています(表2)。
解熱鎮痛薬を常備する場合の注意点
市販されている解熱鎮痛薬を常備するのであれば、できれば過去に服用したことがある、安全なものを購入するようにしましょう。
若くて元気な人では、体が大きな人だと、市販のアセトアミノフェンでは量が少ないため、なかなか解熱できません。ロキソプロフェンやイブプロフェンといった薬剤を、アレルギーや過敏症状に注意しながら使用するのもありかと思います。
また、基本的にNSAIDsは、小さな子ども・妊婦には使用されません(イブプロフェンは医療機関で子どもに使用することがあります)。副作用の観点から、投与しづらい高齢者もいます。薬を半分に割って服用する、といった誤用は控えてください。
NSAIDsに過敏症がある人は、アセトアミノフェンをたくさん飲んでも過敏症状が出ることがあるので、服用量を低く抑える必要があります(3)。副作用が強い経験がある人や不安がある人は、自己判断で解熱鎮痛薬を選ばないようにしましょう。
まとめ
解熱鎮痛薬を常備する場合、自分に合った薬剤を選択する必要があります。過敏症は、NSAIDsが含まれている点眼薬や湿布でも起こることがあるので、注意してください。
また、歯磨き粉やミントなどで喘息の悪化を起こしたことがある人がNSAIDsを内服すると、過敏喘息にいたることもあります。
(参考資料)
(1) Rajan JP, et al. J Allergy Clin Immunol. 2015; 135(3): 676-81.
(2) 福冨友馬, 他. アレルギー. 2010; 59(1): 37-46.
(3) Settipane RA, et al. J Allergy Clin Immunol. 1995 Oct;96(4): 480-5.